【完結】婚約から逃げた魔付き令嬢はエッチな人形作りを手伝う。※R18

かたたな

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精霊祭に行きたい。【ルナス視点→アーシェリア視点。】



 「私はルナス様が大好きですから。嫌なんてこれっぽっちも思わないんです。」

 ある日、自分の不始末を謝罪すると思わぬ言葉を言われた。
 僕は起きたと思ったのだけど、まだ寝てるのかもしれない。
 だけど彼女の温かさと柔らかさは確かにあって。現実だと理解させてくれる。

 大好き。

 父以外に言われたのは初めてだ。

 ずっとこのままでいたい。

 どれ程そうしていたか分からないが、彼女は長い時間僕に寄り添ってくれた。
 彼女の言う好きとはどういう好きなんだろう。
 恋とかの好きではないとわかってる。父が好きだから醜くても息子の僕を受け入れようとしてる。だけど夢を見てしまいそうになる。夢を見ることも烏滸がましいのに。

 生活を支えて貰えている今のままでも幸せだと思っていた、顔を見て、笑顔を向けられるだけで甘く辛い気持ちになる。
 辛い、だけど彼女には会いたい。笑顔を見たい。体を駆け巡るクラクラする感覚にどうしたら良いか分からなくなる。

 幸せなはずだと夢見ていた環境がこんなにも辛さを伴うなんて。こんなにも甘く手放せないのに胸が痛くて仕方ない。
 好きという言葉の毒を受け、欲が増した自分は呆れていたはずのメメに何も言えないと感じる。


 ◆◆◆◆


 夜、眠れず父の研究室に訪れた。

 「父さん、少し良いですか?」
 「なんだい?ルナスから来るなんて珍しい。」

 息子が自分を頼ってくれるのは結構嬉しいものだね、と言いながら聴いていた音楽の音量を少し下げてから座っていたソファーのスペースを空けてポンポン叩く。

 「どうしたんだい?」

 父はいつも優しい。

 「僕は今とても卑怯な気持ちでいっぱいになってます。自分は見た目だけでなく心も酷く醜くなったのかと失望しています。」
 「それはどんな気持ちなんだ?」
 「今の環境は手放したくない。
 でも期待して壊してしまいそうになる。今の環境のままリスク無く欲しいものを手に入れたい。って。」
 「ぷっ!あははははは。」

 父が笑いだした。それだけ可笑しい事を言っている自覚はある。

 「ルナス、そんなの誰でも思う事だろう。ははは!!」
 「・・・」

 誰でも?こんなに自分勝手な思想をか。

 「父さんは彼女をどう思っていますか?」
 「ん?アーシェリアさんの事かい?何で私に聞くんだ。そうだな、今の生活を支えてくれる頼もしい存在って感じかな。あと努力家だな。日に日に仕事の質が良くなっていってる。」

 父はあくまで仕事仲間という感覚なのだろうかホッとした。だけど彼女にとっては嬉しく無い状況だろう。

 「ははは」

 何だか全てを見透かす様に笑う父が憎らしい。

 「ルナスは昔から自分には手に入らないと諦めるばかりだった。お前が貪欲になって嬉しいんだよ。私は。」

 「そうですか。」

 「久々に酒を飲んでみないか?」
 「ほどほどになら。」
 

 どんなに醜くなっても、父は僕に優しい。


 ◆◆◆◆

 次の日。
 朝食時に父から提案があった。

 「そういえば、来週は精霊祭だね。お使いを頼んでもいいかい?ついでに二人で楽しんで来ると良い。」

 父は僕の気持ちを察したのかあからさまなアシストが入る。

 「勿論良いですよ。ルナス様のご予定はいかがですか?」
 「僕は大丈夫です。」
 「本当ですか!!ふふ、楽しみです。」

 そんな顔で見られたら違うと分かってるのに勘違いしてしまう。違う。違うと思う度に胸が痛いのに魅力的な誘いを断るなんて出来ない。
 
 パッと花が開いたような笑顔。いや太陽かもしれない。眩しくて可憐な彼女に胸がズキリと痛む。


 ◆◆◆◆


【アーシェリア視点】

 やったああああああーーーーー!!
 デートですよ!!デートの約束ですよ!!

 〈お使いじゃん?〉
 (それをデートにするんですよネムさん!)

 最近の私は押せ押せで好意を伝え始めている。
 きっとストレートに言ったって信じて貰えない。だから態度と言葉で攻めなくては。

 ラグラ様も私の気持ちを察しているのか協力的です。来週の精霊祭、ここで一気に攻めましょう!

 私はテーブルの片付けを終え、さぁ食器を洗おうと席を立とうとした時。ラグラ様から話があると言われ席に戻る。

 「魔憑きについての話だ。本来、自分の意思で人に憑く魔物は魔力を根こそぎ吸収したいが為に人に憑依する。だけど憑依した体が死なないと出れないんだ。
 それを利用して憑依させて体に閉じ込め、魔術で言うことを聞かせようという実験が過去にあった。成功すれば魔物を従えさせられる。
 20年前にメメは私の意思で憑依させた。だけど失敗して、目が悪くなっただけだった。」

 まさか、ラグラ様の意思でメメを取り憑かせたとは。

 「当時の私は貪欲で過信していた。失敗しても祓えば良いと思っていた。
 だけど魔憑きの証が探せなくてね、私と同じようにどんなに記録を残していても祓えない魔術師が多く成功する者も居なかった、後にその方法は禁止される様になったんだ。
 だけど数ヶ月、アーシェリアさんの様子を観察していて思ったんだよ。アーシェリアさんは魔物の使役に成功している。」

 「私がですか?」

 「そうだ、ネムさんは君の言うことを聞き従う魔物だからね。それにアーシェリアさんは健康そのものだ。最初に魔憑きなのに元気な君を見つけた時にもしかしてと思ったよ。

 だから君に提案だ。今後はお手伝いさんではなく、魔物の使役者として私とルナスの元で働くのはどうだい?」

 「それは・・・その、雇用形態はもしかして。」

 「あぁ。国からの雇用となると面倒事が増えてしまうから、雇用主は私とルナスでどうだろう、私達でもそれなりに良いお給料を支払えるよ。正規の雇用契約でどうだろう。」



 わあぁぁぁぁぁ!!


 
 ついに来た!!正規雇用!!



 さよなら随時延長に怯える日々!!!!

 「や、やったああああああーーーーー!!嬉しいです!!喜んでお受けします!!」

 「喜んでくれて嬉しいね、ルナス」

 その場で喜び立ち上がるとルナス様の手を両手で握りしめ、上下に勢い良く振った。

 「これからもよろしくお願いいたします!!」
 「あ、えぇ。頼もしいです。よろしくお願いいたします。」

 にこりと穏やかに微笑むラグラ様。

 私は晴れてラグラ様・ルナス様の元で魔物の使役者として正規雇用を手に入れた。
 これで更に自信を持ってルナス様に好きだと言えます!!
 

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