9 / 44
精霊祭に行きたい。【ルナス視点→アーシェリア視点。】
「私はルナス様が大好きですから。嫌なんてこれっぽっちも思わないんです。」
ある日、自分の不始末を謝罪すると思わぬ言葉を言われた。
僕は起きたと思ったのだけど、まだ寝てるのかもしれない。
だけど彼女の温かさと柔らかさは確かにあって。現実だと理解させてくれる。
大好き。
父以外に言われたのは初めてだ。
ずっとこのままでいたい。
どれ程そうしていたか分からないが、彼女は長い時間僕に寄り添ってくれた。
彼女の言う好きとはどういう好きなんだろう。
恋とかの好きではないとわかってる。父が好きだから醜くても息子の僕を受け入れようとしてる。だけど夢を見てしまいそうになる。夢を見ることも烏滸がましいのに。
生活を支えて貰えている今のままでも幸せだと思っていた、顔を見て、笑顔を向けられるだけで甘く辛い気持ちになる。
辛い、だけど彼女には会いたい。笑顔を見たい。体を駆け巡るクラクラする感覚にどうしたら良いか分からなくなる。
幸せなはずだと夢見ていた環境がこんなにも辛さを伴うなんて。こんなにも甘く手放せないのに胸が痛くて仕方ない。
好きという言葉の毒を受け、欲が増した自分は呆れていたはずのメメに何も言えないと感じる。
◆◆◆◆
夜、眠れず父の研究室に訪れた。
「父さん、少し良いですか?」
「なんだい?ルナスから来るなんて珍しい。」
息子が自分を頼ってくれるのは結構嬉しいものだね、と言いながら聴いていた音楽の音量を少し下げてから座っていたソファーのスペースを空けてポンポン叩く。
「どうしたんだい?」
父はいつも優しい。
「僕は今とても卑怯な気持ちでいっぱいになってます。自分は見た目だけでなく心も酷く醜くなったのかと失望しています。」
「それはどんな気持ちなんだ?」
「今の環境は手放したくない。
でも期待して壊してしまいそうになる。今の環境のままリスク無く欲しいものを手に入れたい。って。」
「ぷっ!あははははは。」
父が笑いだした。それだけ可笑しい事を言っている自覚はある。
「ルナス、そんなの誰でも思う事だろう。ははは!!」
「・・・」
誰でも?こんなに自分勝手な思想をか。
「父さんは彼女をどう思っていますか?」
「ん?アーシェリアさんの事かい?何で私に聞くんだ。そうだな、今の生活を支えてくれる頼もしい存在って感じかな。あと努力家だな。日に日に仕事の質が良くなっていってる。」
父はあくまで仕事仲間という感覚なのだろうかホッとした。だけど彼女にとっては嬉しく無い状況だろう。
「ははは」
何だか全てを見透かす様に笑う父が憎らしい。
「ルナスは昔から自分には手に入らないと諦めるばかりだった。お前が貪欲になって嬉しいんだよ。私は。」
「そうですか。」
「久々に酒を飲んでみないか?」
「ほどほどになら。」
どんなに醜くなっても、父は僕に優しい。
◆◆◆◆
次の日。
朝食時に父から提案があった。
「そういえば、来週は精霊祭だね。お使いを頼んでもいいかい?ついでに二人で楽しんで来ると良い。」
父は僕の気持ちを察したのかあからさまなアシストが入る。
「勿論良いですよ。ルナス様のご予定はいかがですか?」
「僕は大丈夫です。」
「本当ですか!!ふふ、楽しみです。」
そんな顔で見られたら違うと分かってるのに勘違いしてしまう。違う。違うと思う度に胸が痛いのに魅力的な誘いを断るなんて出来ない。
パッと花が開いたような笑顔。いや太陽かもしれない。眩しくて可憐な彼女に胸がズキリと痛む。
◆◆◆◆
【アーシェリア視点】
やったああああああーーーーー!!
デートですよ!!デートの約束ですよ!!
〈お使いじゃん?〉
(それをデートにするんですよネムさん!)
最近の私は押せ押せで好意を伝え始めている。
きっとストレートに言ったって信じて貰えない。だから態度と言葉で攻めなくては。
ラグラ様も私の気持ちを察しているのか協力的です。来週の精霊祭、ここで一気に攻めましょう!
私はテーブルの片付けを終え、さぁ食器を洗おうと席を立とうとした時。ラグラ様から話があると言われ席に戻る。
「魔憑きについての話だ。本来、自分の意思で人に憑く魔物は魔力を根こそぎ吸収したいが為に人に憑依する。だけど憑依した体が死なないと出れないんだ。
それを利用して憑依させて体に閉じ込め、魔術で言うことを聞かせようという実験が過去にあった。成功すれば魔物を従えさせられる。
20年前にメメは私の意思で憑依させた。だけど失敗して、目が悪くなっただけだった。」
まさか、ラグラ様の意思でメメを取り憑かせたとは。
「当時の私は貪欲で過信していた。失敗しても祓えば良いと思っていた。
だけど魔憑きの証が探せなくてね、私と同じようにどんなに記録を残していても祓えない魔術師が多く成功する者も居なかった、後にその方法は禁止される様になったんだ。
だけど数ヶ月、アーシェリアさんの様子を観察していて思ったんだよ。アーシェリアさんは魔物の使役に成功している。」
「私がですか?」
「そうだ、ネムさんは君の言うことを聞き従う魔物だからね。それにアーシェリアさんは健康そのものだ。最初に魔憑きなのに元気な君を見つけた時にもしかしてと思ったよ。
だから君に提案だ。今後はお手伝いさんではなく、魔物の使役者として私とルナスの元で働くのはどうだい?」
「それは・・・その、雇用形態はもしかして。」
「あぁ。国からの雇用となると面倒事が増えてしまうから、雇用主は私とルナスでどうだろう、私達でもそれなりに良いお給料を支払えるよ。正規の雇用契約でどうだろう。」
わあぁぁぁぁぁ!!
ついに来た!!正規雇用!!
さよなら随時延長に怯える日々!!!!
「や、やったああああああーーーーー!!嬉しいです!!喜んでお受けします!!」
「喜んでくれて嬉しいね、ルナス」
その場で喜び立ち上がるとルナス様の手を両手で握りしめ、上下に勢い良く振った。
「これからもよろしくお願いいたします!!」
「あ、えぇ。頼もしいです。よろしくお願いいたします。」
にこりと穏やかに微笑むラグラ様。
私は晴れてラグラ様・ルナス様の元で魔物の使役者として正規雇用を手に入れた。
これで更に自信を持ってルナス様に好きだと言えます!!
あなたにおすすめの小説
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?