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外の世界【エミル視点】
しおりを挟むギルド職員になれる。
ルシアは嬉しそうにそう言っていた。ギルド職員は戦う力が無くても冒険者を支える事が出来る職種。
もし僕がこの仕事を出来たら彼女を支えられる。それは僕の中でとても魅力的に思えた。
・・・
だけど希望が見えてきた所で、僕はあっさり高価なアイテムとお金を持たされて里に返されてしまって・・・。約束の1ヶ月が経っても門番からルシアが訪れたという話は無かった。
きっと彼女にとって只の慈善行為だったんだと思い門の影で途方に暮れる。
ルシアとの結婚。
短い夢だったな・・・。
「良いんかな、これで。S級冒険者なら信頼できる人間だとオレは思うんだけどよ。」
「仕方ないんじゃねーか?他の屈強なドワーフならまだしも、あのエミルを金で買う様に里から連れだそうなんざ親心としては心配だろうさ。」
「でもよ、遠くからあんな別嬪なねーちゃんがエミルを迎えに来たのによ。良い話だったらエミルが可哀想じゃねーか。」
「まあな。」
そう話す門番がチラリと物陰にいる僕を見た。多分彼は雑談と見せかけて教えてくれたんだ。ルシアが迎えに来たけれど両親の頼みで僕に伝えられなかったと。
高価なポーションで両親の病が治り家族で喜び合った時、その喜びのままに僕は結婚するかもしれない事、その人がこのポーションとお金をくれたと話した。その時の父親はとても怖い顔をしていたと思う。口数の少ない父はその場で何も言わなかったけれど僕の言葉に誤解したのかも知れない。
ルシアが来ていたと知ったその夜。両親が寝たのを確認して置き手紙を残して里を出た。両親は病が治っているしルシアから貰ったお金も残している。二人とも仕事に復帰した今は困らないだろう。
里を出る際、門番には見つかってしまったけれどルシアに会いに行くと事情を話すと「心は立派なドワーフの男だな!行ってこい。」と激励してくれた。
里の外にはS級冒険者を雇うほど危険な魔物も居る。夜は活動も活発になるから細心の注意を払い闇の中を進んだ。
本の中でしか知らなかった魔物の気配に震え上がった瞬間もあったけれど僕の中にあった魔物を避ける知識は確かに役に立った。
ルシアに今度は自分から会いに行きたい。
その一心で歩き続け、小さな町の灯りを見つけた時には安堵で足が震え僕にも出来たという達成感で喜びが込み上げていた。
その小さな町からは王都を目指し荷馬車の荷物と一緒に乗り継いでたどり着く事が出来た。
里の外は怖い、だけれど僕でも生きられる。そんな自信が付いた。
目指すのはルシアの拠点とするギルド。そこで彼女をサポートする存在になりたい。自分なんかが本当にギルド職員になれるのかと不安しか無かったけれど、思っていたより簡単にギルド職員の試験に受かった。僕でも誰かの役に立てる場所がある・・・それがとても嬉しかった。そして里という狭い世界で生きていた事を思い知らされる。
早くルシアに連絡を取りたかったけれど既に彼女は魔物の討伐依頼を沢山受けていてタイミングが掴めずにいた。そしてその量や内容を見て絶句する。こんな仕事の引き受け方をしたらどんな人間でも壊れてしまう。
ギルド本部で研修をしている間もどうか怪我をしないようにと祈る事しか出来ず早く彼女のサポートをしたくて勉強に励んでいたと思う。
研修中も僕の事を「子供かと思った。」と言う言葉をよく耳にしたけど、みすぼらしいと言う者は居なくて案外居心地が良く話せる人も増える。
そう言えば、ルシアさんは僕を子供だとも言わないで丁寧に対応してくれていたな・・・。
それに気がつくと余計に彼女に会いたくなってしまう。
「ねぇ、23歳って事は彼女とか居たりするの?」
「結婚を約束した人なら。」
他の研修生からそんな質問があり素直に答えるとギョッとして驚いた顔をされる。里の外に出て、みすぼらしいとは思われないまでも恋愛の対象としては遠い存在らしい。
「それ絶対ショタコンじゃん、大丈夫!?」
「ショタコン?」
「幼い男の子が好きな人の事。」
ショタコン・・・幼い男の子が好きな人。ショタは確か異世界から来た聖女様が執筆された本のジャンルの1つ?だっただろうか。
聖女様の執筆されるあらゆるジャンルの創作物はこの世界の者には受け入れがたい物が多いそうだけど、どれもコアな隠れファンが居るとか・・・ルシアがもしそうなら、結婚したら僕に対して愛情が芽生えてくれるかも知れない。
ただの男除けじゃなく、ホントの意味で共に居られる。
もしルシアに会えたら書籍をプレゼントしてみようか・・・いや、俺から渡せば下心が透けて見えてしまう。変な誤解を招く可能性もあるし良くない。
◆◆◆◆
念願のギルドへ配属されて少し経った時の事。ルシアさんが訪れたと聞いて、依頼書を抱いたまま急いで駆け付けた。
「失恋・・・そうね。初めて本気になった人に振られたわ。だからありったけの仕事をちょうだい。」
ゴンッと痛そうな音を立てて受付に頭を乗せる彼女。失恋・・・。
そうだ、彼女は僕が結婚を受け入れなければ他を当たると言っていた。もしかすると、僕を迎えに来ても会う事が出来なかったから他の人へ行ったのかも知れない。そこで本当の恋をしたんだ・・・。
心臓がギュッと締め付けられる様に切ない悲鳴を上げる。
これではただ彼女に助けられた子供じゃないか。
「へぇ、ルシアを振るなんてどこのどいつだよ?俺が優しく慰めてやろうか?」
床を見ていた視線を上げると体格が良く筋肉の付いたカッコいい冒険者に手を握られていた。
話しぶりから彼は失恋の相手ではない。ルシアを守らなければ。
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