6 / 8
第5話
しおりを挟むどのくらいそうしていただろう、不意にドアが開き君が姿を現した。
赤く泣き腫らした目、足元もおぼつかないようだ。
鍵が開けられ、僕は慌てて飛んでいって君を支える。
どうしたんだ?やっぱりいじめられたのか?
そんな奴は許さない、僕が···
と、不意に君が僕を抱きしめた。
その瞬間僕の心臓は爆発し、早鐘を打つ、なんて表現では足りないほどに鼓動を早める。
最近とんとご無沙汰だったスキンシップ。
僕がいくら望もうと君が応えてくれることはなかった。
頭の中が真っ白になってしまった僕はそのまま君の部屋に導かれ、君のベッドに腰を下ろした。
久しぶりの君のベッド。
僕が粗相をして以来、君は僕がベッドに乗ることを許してくれなかった。
柔らかなベッドの感触に先程までの怒りも心配も吹き飛んで、恥ずかしながら僕の中は浅ましい欲と熱に支配されてしまう。
君の白く細い指が僕の体を優しくまさぐる、久しくなかった感触だ。
やっぱり僕は君が好きだ、もっと触れてくれ。
すると不意に体中を快感が駆け巡り、僕は君の手を汚してしまった。
あぁ、それは···、僕はバツが悪くてたまらなかった。
君は驚いたようだったが、怒ることもなくそれをティッシュで拭いて片付けてくれた。
そうして2人でくっついて過ごすうち僕は君が愛おしくて堪らなくなり、君に穏やかな愛の歌を贈る。
君は未だ赤みの残る瞼を閉じてその歌にじっと聞き入ってくれる。
君が僕の歌を聞いてくれている事実が、先程までの欲望とは違った胸の高鳴りを生む。
君と出会った瞬間から、僕の歌は君だけのものだ。
僕と君は愛と歌を交わしながら、朧月夜の光のように穏やかで優しい、素晴らしい夜を過ごしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる