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永遠の少女たち
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おばあちゃんになったあたしとフジは、丘の上の家の前に椅子を並べて眼下に広がる街を眺めていた。
赤、青、黄色、緑、橙… 街にはさまざまな色の屋根が並んでいる。
その向こうには、毎日気まぐれに表情を変える海。
この景色が気に入って、あたしたちはここを終の住処に選んだのだった。
「ねぇフジ。あんた昔、呪いの話をしてくれたじゃない?」
あたしは傍らのフジに言った。出会った頃は黒く艶やかだった彼女の髪は、今では見る影もなく白くなってしまった。
だけど、煌々と輝く両の瞳は健在だった。
どんなに綺麗な景色を見ても、あたしにとって世界で一番綺麗なものは、やっぱりフジの瞳なのだった。
その冷たく柔らかな色に照らされるたびに、あたしは何度だって少女に戻れるのだ。
「あんたが誰かを愛し、その誰かもあんたを愛して、それでその誰かが死んだときにあんたも死ぬ… ってやつ」
「ああ… そんな話、したわねぇ」
「あれね… 」
あたしは得意げに語る。
「あたし、思ったの。あんたはあのとき、死ぬのが怖かったって言ってたけど… 本当は、たださみしかっただけなんじゃないかって。本当は、誰かを愛して、誰かに愛されて、それで、ちゃんと死んでいきたかったんじゃないかって… 」
人間と同じように生きて、人間と同じように死んでいきたかったんじゃないかって。
フジはふふっと笑う。
あたしと同じ速度で歳をとっていった少女の目尻に、消えないシワが刻まれる。
「… さあね。昔のことだから、忘れちゃったわ」
「ねぇ… その呪い、あたしが解いてあげようか?」
フジはあたしのシワだらけの手に自分の手を重ねる。
そして、世界一綺麗な瞳にあたしを映し、
「… もう解けてるわよ。そんなのとっくに」
そのまま悠久のときが流れ
やがて二人の少女は、寄り添ったまま永遠に動かなくなった。
赤、青、黄色、緑、橙… 街にはさまざまな色の屋根が並んでいる。
その向こうには、毎日気まぐれに表情を変える海。
この景色が気に入って、あたしたちはここを終の住処に選んだのだった。
「ねぇフジ。あんた昔、呪いの話をしてくれたじゃない?」
あたしは傍らのフジに言った。出会った頃は黒く艶やかだった彼女の髪は、今では見る影もなく白くなってしまった。
だけど、煌々と輝く両の瞳は健在だった。
どんなに綺麗な景色を見ても、あたしにとって世界で一番綺麗なものは、やっぱりフジの瞳なのだった。
その冷たく柔らかな色に照らされるたびに、あたしは何度だって少女に戻れるのだ。
「あんたが誰かを愛し、その誰かもあんたを愛して、それでその誰かが死んだときにあんたも死ぬ… ってやつ」
「ああ… そんな話、したわねぇ」
「あれね… 」
あたしは得意げに語る。
「あたし、思ったの。あんたはあのとき、死ぬのが怖かったって言ってたけど… 本当は、たださみしかっただけなんじゃないかって。本当は、誰かを愛して、誰かに愛されて、それで、ちゃんと死んでいきたかったんじゃないかって… 」
人間と同じように生きて、人間と同じように死んでいきたかったんじゃないかって。
フジはふふっと笑う。
あたしと同じ速度で歳をとっていった少女の目尻に、消えないシワが刻まれる。
「… さあね。昔のことだから、忘れちゃったわ」
「ねぇ… その呪い、あたしが解いてあげようか?」
フジはあたしのシワだらけの手に自分の手を重ねる。
そして、世界一綺麗な瞳にあたしを映し、
「… もう解けてるわよ。そんなのとっくに」
そのまま悠久のときが流れ
やがて二人の少女は、寄り添ったまま永遠に動かなくなった。
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