キミという花びらを僕は摘む

さいはて旅行社

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第1章 突然の

1-2 だから、告白は本人に

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「恋人でなければ、友人か?」

 俺はギットに問う。
 超悲しそうなギットの顔。
 この人、冒険者らしい強面だがイケメンだ。
 栗色の髪、栗色の瞳、少し日に焼けた肌、格好良いなかにも可愛らしさが垣間見える表情や態度。
 こういうヤツ、冒険者だけでなく街の女性にもモテると思うんだけどな。

 なぜ、俺?
 ああ、俺、今、俺じゃないのか。
 ちょっとこの顔を鏡で見たくなる。
 ティフィってどんな顔しているんだ?
 手が綺麗だし、体格もスラッとしているし、顔はどうなんだ?
 いきなり男性から恋人宣言されるのだから、イケメンなのだろうか。
 中性的か女性的な顔立ちなのか?性格も良いのか?

「ティフィ、恋人にしてくれ」

 俺はギットに両手を握られる。

 告白を受けたのが、中身が空気読めないオッサンでゴメンね。
 反応が半目になってしまって。
 ここは告白に頬を赤らめて恥じらうところだったのかな。

 告白は肉体の中身が戻って来たときにしてくれないかなあ。
 記憶がないフリをしている俺に言わないでくれ。
 中身が違っているのに気づかなかったの?とティフィ本人に言われてしまうぞ。
 記憶喪失だと思っていたから気づかなかったと、是非とも言い訳してほしい。

 俺のせいでケンカしないでね。
 くれぐれも。
 ティフィがギットを好きなのかわからない。わからないのだから告白を無下にもできないのも事実。

「また、お前は、、、」

「クソ冒険者」

 ギットは他の二人にズルズルとカウンターの外に出されてしまう。

「俺はレイン、この街の常駐騎士だ。この店も巡回の経路に入っている。ティフィ、もしまだ体調が優れないのなら二階のベッドまで運ぶよ」

 レイン?

 この人物には違う名前が浮かびかけた。
 俺自身が会ったことあっただろうか?
 魔法が使えれば簡単に調べられるのに。
 ものすごく不便。

 この体内には魔力があるのだから、魔法も使えそうなのに。何で使えないのか。使えないものはどうしようもないが。

 レインは白髪で銀色の瞳をしている。
 優しそうで甘い顔面は、ギットとは違うタイプのイケメンである。
 ただ中性的とまではいかずに男性の体格であるため、騎士として舐められることはないだろう。

 ここまで特徴的な外見を忘れるか、普通。
 ま、仕事上の付き合いで一回か二回ぐらいしか会ったことのない人間の顔なんて忘れるよなー。
 どんなにイケメンだろうとも、珍しい髪色、目の色だとしても。

 言い訳がましいな。
 魔法がないとこんなにポンコツなのか、俺。
 悲しい。
 昔はどんな状況でも生き抜いてやるぜ、っていうたくましいお子ちゃまだったのに。

「親切に見せかけて、押し倒す気じゃないだろうな」

 ギットがカウンターからレインを制す。
 いや、誰も彼もがこのティフィに恋心を抱いているわけじゃ。

「押し倒したい気はあるが、さすがに体調が悪いティフィにそういう行為を強いるほど鬼畜ではない」

 あー、押し倒したい気持ちがあるんですかー。
 レインさんもー。
 顔だけ見ていると性欲なんてないような気がするのにー。
 彼も男なのだな。

 ティフィ、モテるな。
 一人ぐらい寄越せ。
 俺も大切にされたい。。。
 魔法研究一筋だったから、自業自得と言えば仕方ない。

「ベッドに寝るほどではないから、大丈夫だ」

 俺は手で制した。
 店まで連れて来てもらってなんだが、、、疲れる。
 何でこんなことになっているのか、一人になって考えたいのに。

 情報過多だ。
 変な情報の。
 役立つ情報をくれ。

「あ、俺はミアだ。近所に住んでいる。たまに薬の配達とか頼まれている」

 帽子をかぶった少年が笑った。
 この子までこのティフィに惚れてないだろうな、、、まさかね。

「そうなのか。この店に薬を頼む人って多いのか?」

「わりと小さい街だから医師はいないし、薬屋もここ一軒だからね。一年くらい前にこの街にきてもらってから皆、重宝しているよ」

 うん、こういう情報が欲しかった。
 話を聞くならレインか?
 常駐騎士ならこの街に詳しいだろう。

「俺に薬の配達を頼むのは、この店が忙しいからじゃないけど」

「うん?」

 忙しくないのなら、自分で薬を持って行けばいいのでは?
 いや、ティフィは緊急性の高い患者が来たときのために、できるだけ店にいておきたいという責任感のある人物だという可能性もある。

「「「ティフィは方向音痴だから」」」

 声がハモったぞ。
 気が合うな、お前ら。

「ティフィ、これだけは約束してくれ。記憶が曖昧だからといって、適当に外を歩こうとしないでほしい。必要なときは巡回時に付き合うから」

「多少入り組んでいる路地もあるから、心赴くままに散歩しようと考えるな」

「そうだよ、大人なのに迷子になる回数が尋常じゃないんだから」

 ティフィってここまで言われる超ド級の方向音痴なのかーーーーーっ。
 子供にまで心配されている。
 そういう人物って地図見て歩けばいいんじゃないか。
 目印を見つけながら歩くとか、基本的なことをしていけば迷わないと思うのだが。
 一年も同じ街にいて迷うか、普通?

 俺は迷子になったこともないし、迷子になったとしても捜してくれる人もいない。。。
 人生の迷子と言われれば迷子だけど。
 寂しいからこの件は忘れることにしよう。

「心配してくれてありがとう。けれど、今日は買い物に出ていたようだから、近所なら大丈夫なんじゃ」

「ティフィ、ようやくあの広場の周辺の店まではなんとかなってきたけど、、、気を抜いたらあの辺だって怪しい」

 食い気味にギットに否定された。
 どんだけだよ、ティフィ。

「これ、ティフィが買っていたの拾って来たけど、他に何か買うのある?もしあるなら、俺が買って来てやるよ」

 親切にもミアが言ってくれた。
 カウンターに置いてくれた紙袋の中身を見る。
 食材やら調味料やらが入っている。
 これだけあれば、数日は持つのではないだろうか。

 仕方ない。

「久々に料理するか」

「「「は?」」」

 三人の声がまたハモった。
 何かいけないことを言ったかな、俺。

「え、」

「久々って、今まで料理していただろ」

「巡回のときにたまに食べさせてもらったことがある。自炊していたのは確かだ」

「あっ、レイン、お前っ、そんな羨ましいことをっ。職権乱用だ」

「俺も手伝いの後に食べさせてもらったことあるよ。美味しかった」

「ずるいっ、俺も食べたいっ」

 ギットの希望はどこかに置いておこう。
 俺が作る手料理を希望しているわけじゃないのだから。
 ティフィ本人に作ってもらってください。

「あー、記憶が曖昧だから?」

 ごまかしごまかし。

 俺自身は久々に料理するからなあ。
 城勤めになってから、自分で料理することはなかった。
 だって、城の食堂に行けば、三食無料で食べられたから。
 それなら、わざわざ自分で料理することないよね。

 でも、料理してくれる人がいないのなら自分でするしかない。
 城勤めになって十数年は経過しているが、昔は俺も料理していた。

 空腹を満たせればいいのだから、問題はあるまい。
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