キミという花びらを僕は摘む

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第3章 激動の

3-15 二人きりの時間 ◆レイン視点◆

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◆レイン視点◆

 家に帰ると、婆さんがおしゃれしていた。
 ひっじょーに珍しいこともあるもんだ。

「、、、ただいま」

「おかえりー、レイン」

「機嫌いいけど、何かあった?」

「お迎えが来たんだよ」

 何のお迎え?
 怪訝な表情をしていたら。

「あの世からのお迎えじゃないよっ。トワイト魔法王国からの」

 婆さんが言い終わる前に駆け出す。
 俺の部屋に明かりが点いている。

「ズィーっ」

「ああ、ちょうど良かった。レインの荷物ってこの鞄だけって婆さんに聞いたんだが、他に荷物はないのか?家具は用意してあるからいらないが、思い出の品とか処分されたら嫌な物は持ってきた方が良い」

「うん」

 久々のズィーをマントごしに抱きしめる。
 ぎゅむむー。
 ようやくズィー本人を抱きしめることができた。

「レイン、迎えに来たぞ」

「うん」

「私もいるんだが」

 ルアンがイスに座って俺たちを見ているが、何も気にしない。

「少しは気にしろ」

「レイン、夕食は向こうの屋敷で準備している。歓迎会というほど大袈裟なものではないが、普段よりは多少豪華な食事だ」

「私は薬屋で一人寂しく食事をするっていうのにー」

 ルアンがブーブー文句言っている。

「ルアンは一度引き受けた仕事を放り投げるような子供なのかな?街の役所の重要な仕事を任されているのだから、責任は持とうね」

「感染症がおさまる春になったら、だろ。私もギットと同じ扱いなのかー」

 不満そうな顔でズィーに文句言っている。

「ギットはヴィッターのいるところに連れて行くから、同じ扱いというわけではないよ」

「春まではまだまだ長いよ。定期的に会いに来てくれないと、禁断症状が出る」

「それはヤバいな。ルアンは浮気しちゃう?」

「しないけど、頻繁に会いに来て。毎日のように抱き潰したい」

 ルアンの言葉に嬉しそうな顔のズィー。
 ルアンはズィーの弟だが、弟というだけの絆ではない。
 そもそもルアンは兄弟が他にいると認識してなかった。
 血のつながりがあろうとなかろうと、ルアンはズィーを求めるだろう。
 ルアンはジルノア王国から自由になった。

 黒い枷である首輪は逃げられない者の証。
 第二王子エリオットは半年後には王太子となり、婚約者アーガリーも王太子妃となる予定が決まった。
 彼らは結婚し、逃げる術がなくなる。

 それに、トワイト魔法王国がきちんとジルノア王国を監視している。
 彼らの負債は返済が終わるまで果てしなく続く。

「レインも少しは私に感謝してくれてもいいのになー。今日、詰所にいる騎士のシフトを変更するように掛け合ったのは私なのに」

「感謝する、ルアン。二人きりの時間をくれて」

 そこでルアンは意地悪そうな笑顔になった。

「あっちに行っても二人きりじゃないぞー」

「もちろん婆さんたちもいるが」

「そういうことじゃない」

 ニヤニヤ笑うルアンに嫌な予感がする。
 ズィーが俺の鞄を適当に投げると消えた。。。

「他にも荷物があれば送るけど」

「そういうことなら、この箱も送れたり?」

 誰かがもらってくれると思って仕訳けた物だが、容易に運べるのなら。
 即座に闇に消える。
 信頼してない者には使ってほしくない魔法だろうな。

「婆さんの方も引っ越しと同じだから、荷物が多かった。さすがに家具は使い慣れていると言っても向こうにもあるから説得したが」

 婆さんは荷造りしていたときに少なくしたわよと言っていたが、婆さんといえども女性の言葉は信じてはいけない。総量ぐらいチェックしておけば良かった。

「玄関に行くか」

 もうこの家ともお別れだと思うと、名残惜しい気もする。
 けれど、ズィーとともに行けるのなら後悔はない。

 玄関にはテインとその旦那グレテル、そしてバーの店員ノルルがいた。
 どうやらこの家を待ち合わせ場所にしていたようだ。
 見送りではない証拠に、ズィーが彼らの荷物の鞄をポイポイと投げて消えている。

「、、、ズィー?」

「テインとグレテルは世話をしながら婆さんと一緒に住んでくれるそうだ。婆さんも見知らぬ他人の使用人よりは身内の方が良いということで連れて行くことになった」

 使用人がいると家の居心地が悪いと言う超庶民だから。
 慣れていくとは思うのだが。

「ノルルは?」

「ハーレムに加わりたいと言ってくれて。俺で満足するのかはわからないが、一緒に行ってくれることになった」

 ものすごく嬉しそうに報告してくれるね。。。
 ティフィと肉体関係のある人物だ。強調するが、ティフィとだ。

「ルアンとギットは春に迎えに行くからしばらくは静かだが、料理人のギルバートも住み込みでいてくれるし、シークやグフタ国王も頻繁に我が家に来たいと言ってくれているんだ。今晩の歓迎会にも来るよ」

 ズィーが笑顔で、俺が一人占めできない状況を教えてくれた。
 確かにハーレム。
 どう考えても騒がしい日々が続きそうだ。






 ティフィがイケメン大好きだと言っていたわりには、ズィーも同類なのだが。
 全員が全員、女性が羨む限りのイケメン勢ぞろいである。
 義姉テインが眩しいものを見るかのように目をパチパチさせていた。グレジルも顔だけは負けないのだから、免疫はありそうなのだが。
 今日の夕食の席には我々の他にシークもグフタ国王もきちんといた。婆さんやテインは恐縮しまくりだったが、非公式な場なので敬語は必要ないと言われても、滅茶苦茶な敬語を乱用していた。

 もしギルバートやグフタ国王が早々に勇気を出していたら、シークの愛情表現がガキでなかったのなら、おそらくこのハーレムは形成されなかったのではないだろうか。
 誰か二人で仲良く恋人同士になれていたに違いない。

 特にギルバートはズィーの胃袋をしっかりと握ってやがる。
 詳しく聞いたらどうも食堂で出していたズィーの食事は、ギルバートの休日以外はすべてギルバートが料理したものだったらしい。同じメニューでも特別に。
 ズィーがギルバートギルバート言うわけだ。
 ギルバートがほんの一歩踏み出していたら、ズィーの返事はギルバートにとって快いものだっただろう。
 ありがたいことに、そんな世界はなくなってしまったが。
 ああ、良かった。

 ギルバートは住み込みだが、週一の休日があるので、その日は作りたい者が適当に作るか、ケータリング等を頼むことに決まった。確かにたまにはズィーの手料理も食べたいし、俺が作った料理もズィーに食べてもらいたい。

「この屋敷の風呂は湯船があるんだよ」

 歓迎会がてらの皆での夕食後、ズィーに屋敷内を案内してもらっている。

「ああ、薬屋ではシャワーしかなかったから」

「これでお風呂でもイチャつける」

「、、、うん」

 イチャついて良いということだよね、コレ。
 嬉しいからズィーにキスしてしまおう。

 夢にまで見たズィーなのが嬉しい。

「俺、男は初めてで満足させられるか不安だが、、、まあ、シークやグフタ国王がティフィが中に入っているときに散々慣らしてくれたようだが、俺が俺に戻って最初にレインに抱いてほしい」

「ズィー、嬉しい」

 他の誰でもなく、俺を指名してくれるなんて。

「レイン、俺はお前が考えている以上にお前に惚れているからな。捨てたら化けて出てやる」

「ものすごく嬉しい」

 化けて出てきても、ずっと一緒にいてほしい。
 捨てるわけもないが。
 感想が嬉しいしか口に出来ず、気の利いたことが言えないほど俺は幸せだ。

「レイン、まずはお風呂にする?それとも」

「ズィーの部屋に行こう」

 これからズィーを一人占めすることができなくとも。
 二人きりで愛し合うことができなくとも。
 ここに来た男連中は全員ズィーに惚れているのだから。
 誰か一人に独占されるのを邪魔するはずだ。

 それでも、俺はズィーに恋い焦がれ続ける。

「ズィー、愛してる」

「レイン、俺も愛してる」

 ズィーの姿で。
 あの日見た黒目黒髪の、あのときと変わらない姿だ。

 彼の部屋でベッドに転がり、彼と貪るように愛し合う。
 貴方が俺を忘れないように。
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