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第2章 失った物と取り戻した物。

帰着

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なんだかんだでやっぱり戻ってこれたんだね。ボクが一番好きなところと、一番好きな雰囲気。廃墟であったような嫌なことはない。好きな場所に好きなだけ行ける。すごく幸せだね。辛いという感情も、好きな物を一個足すだけで幸せになれるんだね。やっぱり一番ここが落ち着いて、一番ここが馴染むんだね。明日もまた学校。何もないこの一日一日が一番幸せだね。

いつも通りの学校。昔暮らしていた学校とは同じところはもうほとんどないけど、優しい雰囲気は変わってないね。廃墟の中にいた時はいじめが毎日あって、クラスから除け者扱いにされて、先生も加担するほどだったけど、今はずっとずっと優しい友達が自分の周りにいて、みんなかわいい色とりどりの動物を肩に乗っけて、毎日を楽しんでいることが、当たり前になってる。それに自分みたいに廃墟に連れていかれることもない。自分はやっぱり世界を幸せにしている存在なんだね。ケンカしている人たちもたまに見かけるけど、肩に乗ってるかわいい動物さんたちをなだめてあげればすぐに仲直りできるからここはずっと平和...

でも自分にはやらないといけないことがある。楽しんでいるのは3つ目だけでいい。自分はこことこの場所の住人の影の守護者である使命がある。陽動行動は蒼に任せて自分はここから幸せを見失わないように、見た目だけは美しく仕上がっているあの廃墟を調べようとする者をあるべき姿に戻す執行官の役割がある。この二つの役割を果たす為に3つ目の才能を使わないといけない。この首都圏にも一部の狂った研究者がいて、そいつらがあの廃墟の過去を研究しようとしている。自分はここの研究者を絶対にあの廃墟の惨状に触れさせてはならない、あの廃墟は中途半端な対策や無知を餌食にして新たな怨霊を生み出す。そうなると蒼の劣化が早くなる。自分たちは人間の構造を多少捨てているので力が強いが劣化しやすい。時折メンテナンスを入れればどうと言うことはないが、2日の期間を要するためかなり大がかりな作業になってしまう。3つ目は意志や感情が具現化できる能力を持つ、そのおかげで感情を力に変える装置を開発できた。お分かりではあろうが怨霊の力だ。敵とみなした怨霊同士は引き付けあう力があるため、簡単に怨霊が集まる。それもその力だが、3つ目には装置に入れられた怨霊や、自分の感情はどう見えているのだろうか。1つ目や2つ目の事を知っているのだろうか。平和を守るためには大きな犠牲が伴う。平和は悪を消さなければ始まらない。一方から見た平和は他方から見た地獄だ。民主と共産が最たる例であるが、ここも同じだ。ここの平和を守るために国土の中で最も大きい島を滅ぼしたのだ。被害は甚大だ。そこから出た怨霊を消すためだが未だに生き残りの1つや2つはいる。そして自分は今蒼の力の半分を借り受けている。全てを元に戻すために。2世紀半前からあの惨劇と洗脳と怠惰と欲望と怨霊に支配された廃墟と言うまでもない牢獄をなかったことにするために。力が溜まって全てをなかったことにする。それで終わりなのだ。それが一番ふさわしい。ここに実行を定めておこう。
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