バリタチ人狼ゲーム

泥人形

文字の大きさ
87 / 181
二日目

二日目:夜(~22:00)⑬

しおりを挟む
 食堂にいるのは、僕、宇佐霧、鳥頭の三人。

「じゃあ、ビールでも飲みながら、さっきの話のつづきをするっす」
「僕以外な」
 宇佐霧は口を一文字にして黙った。

「うちの百万が入ったアルフォートを盗みやがった奴は、いったい誰なんだにぇ! 絶対に絶対に許さんにゃ、ぶっ殺してやるぜあっひゃっひゃひゃっひゃ」
 鳥頭はすでに出来上がっていた。人生楽しそう。

「俺は、運営だと思うっすけどねぇ……だって、ここにいる俺らが金なんか盗んでもどうします? 使い道がないっす」
 そう言って、宇佐霧はビールの缶に口をつけた。

「犯人が欲しかったのは、お金じゃなくてカード類なんじゃないかな?」
「悪用でもするんかにぇ~?」
 鳥頭はテーブルに突っ伏して、足をパタパタさせる。






「昨日、僕が目を覚ましたとき、全員がすでに起きていた。その直後にゲームがはじまったんだけど、二人が起きたときは、どうだった?」

 宇佐霧と鳥頭は、互いに顔を見合わせる。

「そんなこと言われても、覚えてないにゃ」

「俺が起きたときは……、数人起きてて数人寝てたっす。すでに起きている人と、寝ている人を起こそうって話になって。それで、金髪の人が、眼鏡の……あっ! 二階堂の腹に蹴りを入れて起こしてたんだった!」

 りんちゃん……。二階堂くん、可愛そうに。






「とにかく、みんなが起きた時間はバラバラだったってわけだね。先に起きた人ほど、自由に動き回れる時間があった」
「一番最初に目覚めた奴が怪しいにぇ! うちの財布を奪ったんだにぇ!」
 怒り出す鳥頭。

 僕は、
「これは僕の憶測にすぎないんだけど、一番最初に目が覚めた人は、この建物の中を探索したんじゃないかな? そして、床に転がっている僕らを見て、気づいた。自分が、デスゲーム的な何かに巻き込まれているってことを」

 だから、と話をつづける。

「彼は、自分が他の参加者よりも先に目が覚めたというアドバンテージを生かそうとした。参加者の、素性を探ろうとした」

「でも、運転免許証とか通学定期とか見ても名前くらいしか分からないっすよ」
 と宇佐霧。

「そうだね。でも、財布って情報の宝庫だ。例えば健康保険証、病院の診察券、ポイントカード、レシート。財布に精神科の診察券が入っている人は、長期間の心理的な駆け引きでは不利だろう。ポイントカードがたくさん入っている人は、めんどくさがりで断れない性格。レシート一つとってもそうだ。綺麗に折りたたんで入れる人、ぐちゃぐちゃに入れる人、それぞれ性格が出る」

 宇佐霧は、目を丸くしていた。

「へぇ~。なんだか、心理カウンセラーみたいっす」
「中学校の先生だよ」
 と僕は返す。

「で、ちなみにYOUはどうなんだにぇ」
 鳥頭が、飲み終わったビールの缶をこちらに向けてきた。

「僕は、電子マネー派かな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...