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二日目
二日目:夜(~22:00)⑬
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食堂にいるのは、僕、宇佐霧、鳥頭の三人。
「じゃあ、ビールでも飲みながら、さっきの話のつづきをするっす」
「僕以外な」
宇佐霧は口を一文字にして黙った。
「うちの百万が入ったアルフォートを盗みやがった奴は、いったい誰なんだにぇ! 絶対に絶対に許さんにゃ、ぶっ殺してやるぜあっひゃっひゃひゃっひゃ」
鳥頭はすでに出来上がっていた。人生楽しそう。
「俺は、運営だと思うっすけどねぇ……だって、ここにいる俺らが金なんか盗んでもどうします? 使い道がないっす」
そう言って、宇佐霧はビールの缶に口をつけた。
「犯人が欲しかったのは、お金じゃなくてカード類なんじゃないかな?」
「悪用でもするんかにぇ~?」
鳥頭はテーブルに突っ伏して、足をパタパタさせる。
「昨日、僕が目を覚ましたとき、全員がすでに起きていた。その直後にゲームがはじまったんだけど、二人が起きたときは、どうだった?」
宇佐霧と鳥頭は、互いに顔を見合わせる。
「そんなこと言われても、覚えてないにゃ」
「俺が起きたときは……、数人起きてて数人寝てたっす。すでに起きている人と、寝ている人を起こそうって話になって。それで、金髪の人が、眼鏡の……あっ! 二階堂の腹に蹴りを入れて起こしてたんだった!」
りんちゃん……。二階堂くん、可愛そうに。
「とにかく、みんなが起きた時間はバラバラだったってわけだね。先に起きた人ほど、自由に動き回れる時間があった」
「一番最初に目覚めた奴が怪しいにぇ! うちの財布を奪ったんだにぇ!」
怒り出す鳥頭。
僕は、
「これは僕の憶測にすぎないんだけど、一番最初に目が覚めた人は、この建物の中を探索したんじゃないかな? そして、床に転がっている僕らを見て、気づいた。自分が、デスゲーム的な何かに巻き込まれているってことを」
だから、と話をつづける。
「彼は、自分が他の参加者よりも先に目が覚めたというアドバンテージを生かそうとした。参加者の、素性を探ろうとした」
「でも、運転免許証とか通学定期とか見ても名前くらいしか分からないっすよ」
と宇佐霧。
「そうだね。でも、財布って情報の宝庫だ。例えば健康保険証、病院の診察券、ポイントカード、レシート。財布に精神科の診察券が入っている人は、長期間の心理的な駆け引きでは不利だろう。ポイントカードがたくさん入っている人は、めんどくさがりで断れない性格。レシート一つとってもそうだ。綺麗に折りたたんで入れる人、ぐちゃぐちゃに入れる人、それぞれ性格が出る」
宇佐霧は、目を丸くしていた。
「へぇ~。なんだか、心理カウンセラーみたいっす」
「中学校の先生だよ」
と僕は返す。
「で、ちなみにYOUはどうなんだにぇ」
鳥頭が、飲み終わったビールの缶をこちらに向けてきた。
「僕は、電子マネー派かな」
「じゃあ、ビールでも飲みながら、さっきの話のつづきをするっす」
「僕以外な」
宇佐霧は口を一文字にして黙った。
「うちの百万が入ったアルフォートを盗みやがった奴は、いったい誰なんだにぇ! 絶対に絶対に許さんにゃ、ぶっ殺してやるぜあっひゃっひゃひゃっひゃ」
鳥頭はすでに出来上がっていた。人生楽しそう。
「俺は、運営だと思うっすけどねぇ……だって、ここにいる俺らが金なんか盗んでもどうします? 使い道がないっす」
そう言って、宇佐霧はビールの缶に口をつけた。
「犯人が欲しかったのは、お金じゃなくてカード類なんじゃないかな?」
「悪用でもするんかにぇ~?」
鳥頭はテーブルに突っ伏して、足をパタパタさせる。
「昨日、僕が目を覚ましたとき、全員がすでに起きていた。その直後にゲームがはじまったんだけど、二人が起きたときは、どうだった?」
宇佐霧と鳥頭は、互いに顔を見合わせる。
「そんなこと言われても、覚えてないにゃ」
「俺が起きたときは……、数人起きてて数人寝てたっす。すでに起きている人と、寝ている人を起こそうって話になって。それで、金髪の人が、眼鏡の……あっ! 二階堂の腹に蹴りを入れて起こしてたんだった!」
りんちゃん……。二階堂くん、可愛そうに。
「とにかく、みんなが起きた時間はバラバラだったってわけだね。先に起きた人ほど、自由に動き回れる時間があった」
「一番最初に目覚めた奴が怪しいにぇ! うちの財布を奪ったんだにぇ!」
怒り出す鳥頭。
僕は、
「これは僕の憶測にすぎないんだけど、一番最初に目が覚めた人は、この建物の中を探索したんじゃないかな? そして、床に転がっている僕らを見て、気づいた。自分が、デスゲーム的な何かに巻き込まれているってことを」
だから、と話をつづける。
「彼は、自分が他の参加者よりも先に目が覚めたというアドバンテージを生かそうとした。参加者の、素性を探ろうとした」
「でも、運転免許証とか通学定期とか見ても名前くらいしか分からないっすよ」
と宇佐霧。
「そうだね。でも、財布って情報の宝庫だ。例えば健康保険証、病院の診察券、ポイントカード、レシート。財布に精神科の診察券が入っている人は、長期間の心理的な駆け引きでは不利だろう。ポイントカードがたくさん入っている人は、めんどくさがりで断れない性格。レシート一つとってもそうだ。綺麗に折りたたんで入れる人、ぐちゃぐちゃに入れる人、それぞれ性格が出る」
宇佐霧は、目を丸くしていた。
「へぇ~。なんだか、心理カウンセラーみたいっす」
「中学校の先生だよ」
と僕は返す。
「で、ちなみにYOUはどうなんだにぇ」
鳥頭が、飲み終わったビールの缶をこちらに向けてきた。
「僕は、電子マネー派かな」
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