バリタチ人狼ゲーム

三日目

三日目：朝⑯

「僕は、」
　ズボンの両ポケットを引っ張り出して見せた。何も入っていないことを証明するには、これが一番わかりやすいだろ。

「俺は、ハンカチとポケットティッシュ」
　二階堂も、ポケットの中身を取り出して僕らに見せた。


「あとは、佐藤と屑山だけだね」
　僕は、二人を睨みつける。みんなの視線が彼らに集中する。佐藤の口元が引きつった。どうやら、林のスマホを所持しているのは彼のようだ。

「待って」
　往生際の悪い屑山が、佐藤をかばった。





「スマホなんかよりも、みんな、バリタチが誰かのほうが気にならない？」
「それは、自分が林のスマホを持っているという自白か？」

　僕と屑山、両者睨みあう。二人とも、一歩も譲らない。屑山が口を開いた。極めて平静を装って。むしろ、佐藤が動揺していた。目が泳いでいる。

「いいや、違う。でも、プライバシーだから、なるべく自分の持ち物は人に見せたくないんだ。君も……そうだなぁ、Spotifyのプレイリストは他人に見られたくないだろ？」
「いや、別に」
「そうかい。でも俺は、なんだか自分の内臓を覗き見られているような気がして嫌なんだ」


　そんな詭弁で乗り切るつもりか、屑山。


「みんな見せたんだから、お前も見せるべきだ」
　僕の発言に
「そうっすよ！　お前だけ見せないのはずるいっす！　不公平っす！」
　宇佐霧も賛同した。


「分かった。でもその前に全員、靴の裏を見せてほしい」