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佐藤 鈴木
零日目:佐藤 鈴木⑨
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どんな理由があったにせよ、人を殺したのだから罰は受けるべきだ。今の自分に与えられたこの環境は、その報いなのだ。そう考えられるようになったのは、出所してからちょうど一年半後だった。
そのくらいの時期になると心に余裕もできてきて、家賃と生活費に使ったあとの浮いたお金で週一でラーメンを食べるくらいはできるようになった。
ワサシはその日、うきうきで行きつけのラーメン屋さんにいくと、いつものようにテレビがついていた。お昼のニュースが流れていた。
『埼京線で痴漢をしたとみられる男が線路に飛び込み電車に轢かれた事件。SNS上では冤罪だという発言が溢れ、被害者女性や取り押さえた男性に対する誹謗中傷や殺害予告が相次ぎ、個人情報をネットに書き込まれるなどの被害もあったが、実際に男は痴漢をしていて、さらに、痴漢の常習犯だったという』
ワサシは、箸を落とした。
「あ、すみませーん。箸落としちゃったんで、下げてくださーい」
そう店員さんに言って、新しい箸をケースから出した。
不意に、視界が歪んで自分が涙を流していることを知る。ああ、そうか。ワサシは自分があの男を殺したことを、よかったと思っているのだ。本当は、殺人は絶対にしてはいけないことだけれど。女子学生を助けることができたのなら、それでよかった。
間違いはやり直せる。ワサシもまた、お笑い芸人を目指して頑張ってみようと思った。ツイッター上でワサシを叩いていた人たちも、きっと今頃は悔い改めてくれているのだろう。
そう思ってスマホを取り出し、当時自分を叩いていたインフルエンサーのツイートを見た。
フェミ竹速報 『【当然の報復】NPO法人代表の女さん、日本文化である萌えアニメを叩いてネットリンチされてしまう』
大山 昇晃 『弱者男性、ババアと結婚させられた挙句パイプカットさせられてしまう(画像)』
金玉主 『あの、それ俺なんですけど、なんで引用じゃなくてスクショなんですか? それと、パイプカットは嫁との話し合いで決めたことです。そういういい方やめてください。嫁は乳がんで、ミレーナやピルが使えないんです』
ワサシの淡い期待は粉々に打ち砕かれた。彼らは、また次のターゲットを見つけて叩いていたのだ。きっと一生そうして生きていくのだろう。ワサシはもはや、彼らに対して怒りすらわかなかった。
そのくらいの時期になると心に余裕もできてきて、家賃と生活費に使ったあとの浮いたお金で週一でラーメンを食べるくらいはできるようになった。
ワサシはその日、うきうきで行きつけのラーメン屋さんにいくと、いつものようにテレビがついていた。お昼のニュースが流れていた。
『埼京線で痴漢をしたとみられる男が線路に飛び込み電車に轢かれた事件。SNS上では冤罪だという発言が溢れ、被害者女性や取り押さえた男性に対する誹謗中傷や殺害予告が相次ぎ、個人情報をネットに書き込まれるなどの被害もあったが、実際に男は痴漢をしていて、さらに、痴漢の常習犯だったという』
ワサシは、箸を落とした。
「あ、すみませーん。箸落としちゃったんで、下げてくださーい」
そう店員さんに言って、新しい箸をケースから出した。
不意に、視界が歪んで自分が涙を流していることを知る。ああ、そうか。ワサシは自分があの男を殺したことを、よかったと思っているのだ。本当は、殺人は絶対にしてはいけないことだけれど。女子学生を助けることができたのなら、それでよかった。
間違いはやり直せる。ワサシもまた、お笑い芸人を目指して頑張ってみようと思った。ツイッター上でワサシを叩いていた人たちも、きっと今頃は悔い改めてくれているのだろう。
そう思ってスマホを取り出し、当時自分を叩いていたインフルエンサーのツイートを見た。
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