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45話 転戦
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8月19日1123 善通寺駐屯地
私は妻と娘と別れ
車両へと向かう。
「いってくるよ」
そう告げて。
娘は必死に
涙をこらえているのが
わかった。
きっと私を困らせる事が
ないようにだ。
私はわざと目を背ける事しか
出来なかった。
胸がズキンと痛んで
仕方がなかった。
車両前に行くと
紀伊3尉や霞2曹
小隊の皆が揃っていた。
私は一分程遅れたが
咎める者はいなかった。
集まったのを確認すると
紀伊3尉が説明を始める。
「偵察隊から連絡が
入りました。
敵、約8000名こちらに向かって
前進中との事です」
周りがざわつく。
今、駐屯地を取り戻したばかりだ。
であれば、敵はどうやら
占領した駐屯地を守る為
救援を送っていたらしい。
しかし、その援軍は間に合わず
我々が先に駐屯地を開放した
という事だ。
「宿毛に上陸した
水陸機動団及び
西部方面普通科連隊は
高知駐屯地を奪還し敵を殲滅
一部を残し北上、機動展開しています」
「簡単に言えば九州の部隊は敵の後ろを
追いかけている状態です」
陸士達の為に紀伊3尉が補足した。
「我々は敵の前方を塞ぐ形で
機動防御して挟み撃ちにする形で
九州の部隊と共同で敵を包囲
殲滅します」
すごい。
この作戦が成功すれば当初の
目的である分断殲滅が
成功したという事だ。
問題であった数の上での
不利が解消されるのだ。
「この作戦が成功すれば
九州の部隊と合流し
恐らく主力であろう鳴門の
約1万5000に対して攻撃を
行います」
「紀伊3尉、それは……」
「そうです、鳴門の奪還、
敵の殲滅まで果たせば
我々の勝利です!!」
紀伊3尉の言葉に
我々に希望が広がる。
敵を包囲し殲滅する——
ようやく、戦争が一つの形を結ぼうとしている。
終わりのない戦闘に
ようやく終わりが見えてきた
瞬間だった。
士気が上がっていくのを
感じていた。
「それから、司令部の
私達の小隊の評価は非常に
高いものです」
紀伊3尉の言葉は
思いもよらぬことだった。
司令部はそんな事を気にも
とめていないと思っていたからだ。
「我々は岡山での敵施設の制圧
四国の橋頭保の確保。
駐屯地の制圧いずれにも関わり
成功させています」
「いずれも参加し生き延びた部隊は
そうはいないのですよ」
「今回、出発時間を遅らせる事が
できたのは小隊の皆の頑張りも
ありました」
「ありがとうございます」
紀伊3尉が頭を下げる。
そうだ、私たちは
やってきた。
命懸けで戦い続けてきた。
いずれの戦場も我々の小隊が
敵に対して決定打を与えたわけでは
なかった。
誰もそんな事は気にも留めないと
思っていた。
それでも知らぬ間に
評価はされていたのだ。
だが、紀伊3尉は自分の功績だと
言わない。
「こちらこそ、ありがとうございます!
紀伊3尉のおかげで私達も生き延びて
これました!」
お互いに頭を下げ、笑い合う。
それは絆ともいえるものだった。
希望を胸に我々は
高機動車に乗り込み
敵の殲滅へ向けて
駐屯地を出発した。
さっき別れたばかりの妻と娘の顔が、
ふと脳裏に浮かんだ。
必ず日本を守り切ると
心に強く誓っていた。
私は妻と娘と別れ
車両へと向かう。
「いってくるよ」
そう告げて。
娘は必死に
涙をこらえているのが
わかった。
きっと私を困らせる事が
ないようにだ。
私はわざと目を背ける事しか
出来なかった。
胸がズキンと痛んで
仕方がなかった。
車両前に行くと
紀伊3尉や霞2曹
小隊の皆が揃っていた。
私は一分程遅れたが
咎める者はいなかった。
集まったのを確認すると
紀伊3尉が説明を始める。
「偵察隊から連絡が
入りました。
敵、約8000名こちらに向かって
前進中との事です」
周りがざわつく。
今、駐屯地を取り戻したばかりだ。
であれば、敵はどうやら
占領した駐屯地を守る為
救援を送っていたらしい。
しかし、その援軍は間に合わず
我々が先に駐屯地を開放した
という事だ。
「宿毛に上陸した
水陸機動団及び
西部方面普通科連隊は
高知駐屯地を奪還し敵を殲滅
一部を残し北上、機動展開しています」
「簡単に言えば九州の部隊は敵の後ろを
追いかけている状態です」
陸士達の為に紀伊3尉が補足した。
「我々は敵の前方を塞ぐ形で
機動防御して挟み撃ちにする形で
九州の部隊と共同で敵を包囲
殲滅します」
すごい。
この作戦が成功すれば当初の
目的である分断殲滅が
成功したという事だ。
問題であった数の上での
不利が解消されるのだ。
「この作戦が成功すれば
九州の部隊と合流し
恐らく主力であろう鳴門の
約1万5000に対して攻撃を
行います」
「紀伊3尉、それは……」
「そうです、鳴門の奪還、
敵の殲滅まで果たせば
我々の勝利です!!」
紀伊3尉の言葉に
我々に希望が広がる。
敵を包囲し殲滅する——
ようやく、戦争が一つの形を結ぼうとしている。
終わりのない戦闘に
ようやく終わりが見えてきた
瞬間だった。
士気が上がっていくのを
感じていた。
「それから、司令部の
私達の小隊の評価は非常に
高いものです」
紀伊3尉の言葉は
思いもよらぬことだった。
司令部はそんな事を気にも
とめていないと思っていたからだ。
「我々は岡山での敵施設の制圧
四国の橋頭保の確保。
駐屯地の制圧いずれにも関わり
成功させています」
「いずれも参加し生き延びた部隊は
そうはいないのですよ」
「今回、出発時間を遅らせる事が
できたのは小隊の皆の頑張りも
ありました」
「ありがとうございます」
紀伊3尉が頭を下げる。
そうだ、私たちは
やってきた。
命懸けで戦い続けてきた。
いずれの戦場も我々の小隊が
敵に対して決定打を与えたわけでは
なかった。
誰もそんな事は気にも留めないと
思っていた。
それでも知らぬ間に
評価はされていたのだ。
だが、紀伊3尉は自分の功績だと
言わない。
「こちらこそ、ありがとうございます!
紀伊3尉のおかげで私達も生き延びて
これました!」
お互いに頭を下げ、笑い合う。
それは絆ともいえるものだった。
希望を胸に我々は
高機動車に乗り込み
敵の殲滅へ向けて
駐屯地を出発した。
さっき別れたばかりの妻と娘の顔が、
ふと脳裏に浮かんだ。
必ず日本を守り切ると
心に強く誓っていた。
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