【完結】夫の暴力に耐えられなくなったので、私は今日家を出ます。

永倉伊織

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第18話 誓い

純奈は決意を固めユミに向き直る。タケシの言葉は重く確かに無視できない。

しかし、ユミは純奈の過去を知る数少ない友人だ。隠し続けるよりも打ち明けるべきかもしれない。

「ユミ、ちょっと話があるの。実はね、、、」


タケシは心配そうな顔で純奈を見ている。純奈はタケシに軽く頷き感謝の気持ちを伝えると、過去の出来事、夫からの暴力、そして逃亡生活について語り始めた。

ユミは驚きと悲しみ、そして怒りが入り混じった表情で純奈の話を聞いている。時折、言葉を詰まらせながらも純奈は全てを打ち明けた。探偵が現れたこと、盗聴器騒動、そして今も続く恐怖。

「ごめんね、ユミ。急にこんな話をして」

ユミはしばらく黙っていた後、静かに口を開く。


「そんなことがあったなんて、全く知らなかった。辛かったでしょう」


彼女の言葉に、純奈の心は少し軽くなる。理解してくれる人がいるという事実は大きな支えとなる。


「それで、純奈はこれからどうするの?」


ユミは心配そうに尋ねて来る。

純奈はまだ明確な答えを持っていない。しかしユミに打ち明けたことで少しだけ未来が見えた気がする。


「まだ分からない。でも、何とかするしかない」

「僕にもお手伝いできることがあれば、何でも言ってください!」

「タケシ君、、、」


食い逃げ犯として純奈に捕まり怯えていた頃とは違い、今のタケシの目は力強く輝いていた。


「純奈、私も何かできることがあれば言って。一人で抱え込んじゃ駄目!」


二人の言葉に純奈は勇気づけられる。一人ではない、支えてくれる人がいる。その事実に純奈は再び立ち上がる力を得る。

しかし、ユミに真実を打ち明けたことで新たな問題も生じるかもしれない。

彼女がこの秘密をどう扱うか、そしてこの情報が純奈の夫克樹に漏れる可能性も考慮しなければならない。

純奈は新たな不安と希望が入り混じった感情を抱えながら、明日への一歩を踏み出すことを決意する。


◇ ◇ ◇


ユミが店を後にし店内に静寂が訪れる。タケシが洗い物を再開し、太郎はカウンターの中で何か考え込んでいるようだ。

純奈はユミとの再会を喜びつつも、彼女に打ち明けた過去の出来事が新たな不安の種になるかもしれないと不安になる。


「花子ちゃん、、、じゃなくて純奈さん、ユミさんと話しているのを聞いたというか狭い店やし聞こえてしもて、色々と聞きたい事があるんやけど、梅田花子いう名前は偽名でいいんやな?」

「すみません。本名を名乗ると夫に見付かるかもしれないと、太郎さんと出会った時にとっさに梅田花子と名乗ってしまったんです。本当に申し訳ありませんでした。」

「まぁ名前の事はええんや、純奈さんの事は訳アリっちゅうのを知ってて働いて貰ってたんやから。それよりもや、旦那の名前は葉山克樹やったか?」

「はい。葉山純奈、それが私の本名です。」

「そうか、もうちょい早く相談してくれれば、、、って言うのは酷な話やな。相談出来る相手がおらんかったから、純奈さんは全てを捨てて逃げて来たんやから」

「いえ、太郎さんの仰る通りもっと早く相談するべきでした。でも怖かったんです。克樹に見つかるのが。それに、皆さんに迷惑をかけたくなかった。」


太郎は深いため息をつきカウンターに肘をつく。


「迷惑やなんて思っとったら赤の他人の純奈さんをわざわざ住まわせるかいな」

「そうですよ、花子さ、、、純奈さん、相談してくれていれば僕にも何かできることがあったかもしれません」


二人の言葉に純奈は胸が締め付けられる思いだ。信頼してくれていたのに、嘘をついていた罪悪感が重くのしかかる。

「本当にごめんなさい、これからはちゃんと話します。皆さんを信じて、頼ります。」


偽名がバレたことで、事態は新たな局面を迎えるかもしれない。

おそらく克樹は既に動き出しているだろう。

純奈は新たな不安と、それでも支えてくれる人達の存在に応える為にも、逃げずに向き合う事を誓うのだった。





つづく。

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