天使のいる場所

永倉伊織

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天使のいる場所

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side:純太


「うぉー!スゲェな、 真奈美も見てみろよ甲子園球場が豆粒みたいに小さいぞ。ついでに高速道路を走る車のライトがイルミネーションみたいだ♪」

「ちょっと純太静かにしなさいよ、ここは田舎の安ホテルとは違うんだから!」

「そんな怒るなよ、でもまさか甲子園球場の近くにこんな高級ホテルがあったなんてなぁ」

「お父さんもお母さんもそれなりの歳だから、佐賀県から皆でバスに乗って応援に来るのは流石にね。そのお陰で団体割り引きチケットじゃなくて、個人的にチケットを買って球場に入らなきゃいけないんだよ。早朝からチケット売り場に並ばないと駄目かなぁ?」

「大丈夫だろ。俺らの試合は月曜日の第1試合だし。相手の高校も選抜初出場で注目度は低いから、客席なんてガラガラだよ」

「おやおやぁ~?我が『唐津高校』期待の星がなんだか卑屈を発言してますなぁ(笑)」

「別に卑屈になってる訳じゃ無いけど、今年の選抜は100回目の記念大会だから、それに合わせて創立100周年の『唐津高校』が21世紀枠で選ばれただけだからな。
甲子園で野球出来るのはスゲェ嬉しいけど、ちょっと複雑な気持ちにはなるだろ」

「何言ってんのよ、ホームラン打って私に告白してくれるんでしょ?」

「あのな真奈美、俺2番打者なんだわ。普通2番打者ってホームラン狙わないのな。チームの方針も長打より確実に塁に出て繋いでいく感じだから、ヒットで充分だろ?」

「んー、、、よく分かんないけど、勝利の女神の前で活躍出来るチャンスなんだから、男ならガツンと1発大きいの打ちなさいよ!」

「そりゃあ状況次第で長打を狙った方が良い時もあるけど、それより俺は神頼みはしない主義だ!」

「何それ?まっ、神頼みする暇があるなら素振りしろって感じだよね。じゃあ女神じゃなくて天使の微笑みで応援してあげるから、ありがたく思いなよ」

「おう!」


◇    ◇    ◇


ふぅー

ついにずっと憧れていた甲子園で野球が出来るんだ。


ウゥーーーーーーーーーー!


試合開始を告げるサイレンの音も、グラウンドで聞くと案外遠くから鳴ってるように聞こえるんだな。

俺は2番打者だから直ぐに打順が回って来る。

目をとじて集中しよう。

ユニホームの内側に縫い付けた真奈美から貰ったお守りを手で触る。

「、、、純太」


へへっ

集中力の成果なのか真奈美の声が聞こえやがる。

「、、、純太、、純太無視すんな!」


えっ?!

やけに近くで真奈美の声が

まさかな、、、っていうか居た!

一塁側ベンチの上、最前列に真奈美と真奈美の親父さんとお袋さんが座ってめっちゃ応援してくれてる♪

いや、応援してくれるのは嬉しいけど、アルプススタンドで皆と一緒に応援するんじゃないのかよ

それに全国中継されてんだから声かけて来んなよぉー、しかも真奈美の親父さんがさっきから俺の事睨んでるっぽいし(汗)


でもこれってヒット打って活躍したら、真奈美の笑顔が近くで見れるって事だよな?

ついでに親父さんにもアピール出来るし。これはやる気出て来たぁー!


カキーン!

ワァーーーーー!!

あ゛っ

先頭打者の鈴木がヒット打って出塁しちゃったよ

ベンチを見て指示を確認するけど、、、当然送りバントですよねー。

見てろよ真奈美!

これが俺のホームランだぁー!

コンッ

よし、2塁は余裕でセーフだ!

送りバント成功♪

1塁、アウトォー!


「純太ぁー、ナイスバントォー♪」


へへっ

2番打者なんてスゲェ地味な打順で好きじゃないけど、真奈美の喜んでくれる顔が見れるなら

俺はこれからも2番打者で良いや♪





完。
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