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第1話

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side:ロレイン・リンドゥヴェール




『カツン!カツン!カツン!カツン!』


真っ赤なハイヒールのかかとを、廊下に敷き詰められた大理石に嫌味を込めて思いきり打ち付けるように歩くと

周囲の視線は一気に私に集まった

真っ黒なドレスに真っ赤なハイヒールを履いて颯爽と歩く私の姿は、いったいどういう風に見えているのだろう?


自分で選んだ物とはいえ、非常識な人と思われているのは確かだと思う

何故なら私が今向かっているのは、婚礼の儀が行われる会場だからだ

黒は喪にふくすという意味があるから婚礼の儀に着るなんてありえない色なのに、更に赤は情熱を意味する

こんな組み合わせの服装をして来るなんて非常識以外の何物でも無い!


普通なら婚礼の儀が行われる会場に入れては貰えない、というかもっと手前で止められて衛兵に事情聴取をされるレベルでも

ここにはリンドゥヴェール公爵令嬢である私に気安く声をかけられる者など居やしない

何故ならば

ココは私の元婚約者で今日の婚礼の儀の主役

ジュゼム・イェンハイム侯爵の屋敷だからだ

当然使用人達は私の事を知っているし、私も使用人達を知っている

だからこそ、ジュゼムに一方的に婚約破棄をされた私に場違いな服装だからと声をかけられる者など居やしない。



婚約破棄の理由も原因だろう、まあ簡単な話でジュゼムが他の女とヤッてる所に私が遭遇してしまっただけ

そして相手の女はノニル・ガイアス男爵令嬢、分かりやすく男に媚びる女だ

ジュゼムより爵位が上の公爵家の者である私より

男に媚びて笑顔を絶やさないノニルがとても可愛らしく見えて、ジュゼムが惹かれたとしても仕方無い事だとは思う

ノニルのそういう生き方を否定する気は無いけれど

公爵令嬢である私の婚約者を寝取るという事がどういう事なのかを理解しているのかしら?


そして、私と婚約中にも関わらず不貞行為をしたジュゼムにも同じ事が言えるわね

リンドゥヴェール公爵家に泥を塗ったのだから本来なら、おバカさん2人を一族もろとも潰すところだけど

流石にそこまでやると逆恨みをする者が出て来て危険だから

私がこうやって出たくも無いジュゼムとノニルの婚礼の儀にやって来たという訳


さてと

2人の為に婚礼の儀を生涯忘れられないくらいに最高の物にしてあげなくっちゃ♪


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