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第2章 夏休みと青春 ~バイト尽くしの常夏!職は違えど楽しさは同じ!~

25時間目 パーティーと映画

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三石はあれからずっとあんな態度をとっている。
まるで何かに取りつかれたようなドス黒いオーラを放ち、まん丸の目を凄く細くして山内を睨み付けた。
「その・・すまんって、三石。 一応罰ゲームだしよぉ・・・」
と、俺が慰めようと試みるも、三石はそっぽを向いたままである。
「なぁ・・・ 山内は脅威に恐れて逃げてるしよぉ・・・ あ、そうだ!」
「なに?」
と不機嫌な三石の声が飛んできた。
「今度は映画観ねぇか?」
「映画?」
と三石がオウム返しに聞いてきたのと山内がドアから覗き込んだのは同時だった。
「最近借りてきた映画があってさ。 観ようぜ!」
「まぁ、いいか」
三石は大人しく座り込み、山内はソッと俺の横に来て、座った。
俺は合ったはずのレンタルビデオの箱を本棚から取りだした。
「2、3年前に流行ったやつだけど、いいよな?」
「ジャンルとか気にしないよ」
「大丈夫」
三石は少しずつ元のテンションに戻ってきた。
「よし、観ようか」
俺はレコーダーにDVDを入れた。
映画の広告が何度か流れている間に部屋の電気を消す。
そして、本編が再生された。
友情と青春をテーマにした物語だ。
超有名な小説家が書いたものがアニメーション化され、それは一時期は大ブームとなった。
『あの日、僕らは友情というものの意味を取り違えていた』
そんな主人公の言葉から始まった映画。
画質は凄くよく、まるで映画館に実際に行っているような感覚になる。
ポップコーンの代わりにポテトチップスをつまみ、ドリンクはコーラを飲んだ。
バスケットボール部の主人公は、同じ高校で出会ったミキという少女を助けたことによって、左足を骨折してしまう。
バスケットボール部は退部を余儀無くされ、悲しみにくれる日々を送っていた主人公はラジオに流れていた曲に心を動かされる。
『俺は、音楽をやりたい』
主人公はそう言った。
始めにメンバーとなったのが怪我をさせたミキだった。
彼女は彼を怪我をさせた事に負い目を感じており、彼女自身も悲しみにくれていた。
ミキがボーカル、主人公はベース。
彼の噂は瞬く間に広がり、彼らとバンドをしたいと希望者がゾクゾクと現れた。
それに、主人公は困り、親友のシンヤに相談した。
彼は元々ギターをやっており、ベースを主人公に教えたのも彼だったのだ。
彼は落ち着いた言動で放課後に見極める事を提案した。
放課後、集まったメンバーで音楽室を借り、楽器の演奏をしてもらった。
結局目当てのパートが居なかったので全員脚下となった。
ボーカル、ギター、ベースが揃った一行にはひとまず、演奏をするために楽器屋に向かったのであった。
というのが、序盤の流れだった。
俺はこの映画を観て少し感動した。
まず、足を怪我してしまった主人公。
バスケを辞めるときの心情がよく染みる。
俺は別に怪我して野球を辞めたわけではない。
普通に引退だった。
山内と三石は、なんと寝ていた。
嘘だろ。
俺は映画を一時停止して、彼らに毛布を被せた。
俺はそれからベットに転がった。
そして、たぶん寝たのだろう。
なにか夢を見たという記憶があるのだが、どんな夢かは覚えていない。
「ん~? 毛布なんてあったっけ? 映画は?」
三石が呑気な声であくびをしながら言った。
「映画、終わったぞ」
嘘をつく。
「あれ? 寝ちゃってたのか。 なんか変な夢見たよ・・・」
「え? 山内も夢を見たの?!」
「俺も見たけど」
三石が一層声を高める。
「え?! 敦志も?!」
「でも、どんな夢だったか忘れたよ・・・」
「俺も」
「マジでー! どんな夢だったんだろう」
3人で考え込むも、一向に出てくる気配はなかった。
まぁ、いいや。
「映画、もういいよな?」
コクリと二人とも頷く。
「まだ、2時間しかたってないのか」
「時間ってすごいね!」
「まだまだ大丈夫だし、楽しもうか」
山内の声に皆で反応する。
「「「おー!!!」」」
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