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第7章 光ある文化祭 ─優しさと後悔の罪─

96時間目 阿鼻叫喚と猪突猛進の試験結果

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 テスト明けの週の初め、朝のホームルームの時間帯にひとつ、またひとつと、教室から阿鼻叫喚あびきょうかんのようなざわめきが聞こえてきた。

 上の階──一年生のクラス──からドンドンと床に地団駄じだんだを踏む音が聞こえてきた。

 結構デカイ音だ。

「……一年生は今年も、元気だなぁ……! さて、次は、お前らの番だー」

 担任である藤木ふじきが、ニヤリと邪悪に笑いながら、教卓からだしたのは、テストの答案用紙。

 もちろん、それらは採点されており、赤で描かれた数字が今後の命運を物語っている。

「んじゃ、さっそくやっていくぞー」

 藤木は、一人ずつ名前を呼んで、答案用紙を返していく。

 ヤバイヤバイと笑いながら話し合うやつもいれば、小さくガッツポーズをし、よい点数なのだろうとひとめで分かるやつもいれば、すべてを諦めて、机に突っ伏しているやつもいる。

「高橋ー! おー……、頑張ったじゃねぇか」

 いちいちコメント付けるんじゃねぇよ!

 好評的なコメントだから、高得点なのは間違いないけど、クラスメイトに点数がバレるのは嫌だった。

 面倒くさいしな。

 ちなみに、俺の点数は、国語が86点、数学が89点、英語が91点、化学が81点、現代社会が79点だった。ちなみに、順位は500人以上いるこの学年の中の34位だった。これより上のやつがいるのかよ。バケモンじゃねぇか。

 しかし、かなりの高得点だったのは間違いない。俺は、自分の目を疑い、二回、解答用紙を見返した。

 努力は結ばれたのだと証明された。

 裕太が呼ばれ、遼太郎も呼ばれたが、裕太はニコニコと、遼太郎は焦った顔で俺の机の前に来た。

「おう、裕太はその調子だと学年一位か」

「そうだね。敦志はもしかして、結構取れた感じ?」

「あぁ、久しぶりにこんな点数を取ったかもな」

 ちなみに、俺がこんな高得点をとったのは、中学一年の頃の一学期の中間テストのときだけだった。

 それ以外?

 言わせんな、ヤバイ点数ばっかりだよ。

 ……それはさておき。

 遼太郎の不安そうな表情は、分かる。

 テストが終わったとき、英語の点数がヤバイと言っていたからな。

「遼太郎、ちなみにいくらだったんだ?」

 俺が聞くと、遼太郎は「はい……」と力なく答案用紙を渡した。

 数学、国語共に俺より点数が高く、化学や現代社会もそれなりの点数をだしていたが、いかんせん、英語だけが、極端な点数だった。

「……ギリギリ赤点じゃなくてよかったな」

「……うん……、ヤバイねぇ……」

 遼太郎は、笑い事じゃないと言わんばかりの顔をしていた。

 ちなみに、俺たちの学校は30点以下を取ると赤点になる。

 長期休暇の際に、補習という恐ろしい時間が待っているのだ。

 うん、ふざけんな。

 まぁ、そんなことはさておき、藤木は、俺たちをなだめて、学級委員長である裕太に会話のバトンを渡した。

 教卓の前に立った裕太は、ニッコリと笑顔で言う。

「さて、みんな、もうすぐ文化祭だね! 今年の催し物を決めたいと思います!」

 とうとう文化祭か。

 俺たちにとって、二年目の文化祭。

 いったいどうなるんだろうか。

 今から、楽しみだな。
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