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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
106時間目 変化
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「わぁ! 敦志君きれいだね……!」
「あぁ……。綺麗だな……」
ここまで登った甲斐があったと思えるよ。これは。
ぴかぴかと光るビルや住宅が黒の背景に点在し、まるでミニチュアの建物を見ているよう。
ここまでの道のりは運動不足の体には応えたけど、よい運動だったと思う。
「……また、この景色を見たいね」
「あぁ……」
でも、これで満足してほしくない。俺は密かに考えているんだよ。
小春から貰った赤いマフラーを俺は優しく握り、愛しの人の横顔を見る。
普段から光に満ち溢れている大きな瞳は、一段と輝いていた。
これはクリスマスと俺たちが付き合って一年の記念日までの大切な思い出の物語だ。
***
文化祭が終わってから、一気に残暑が薄れてきた。普段は半袖のシャツに身を包んでいた俺たちも長袖のシャツを着用し始めた。
女子のなかにはもうブレザーを着用しているやつもいて、さすがに暑いだろと心のなかで思った。まぁ、人それぞれか。
いつも通りの通学路。俺は裕太や遼太郎たちといつもの待ち合わせ場所に向かう。この待ち合わせも文化祭が終わってから変わったことがある。それは、一人増えたことだ。
「おはようございます。高橋先輩」
「おはよう。祐麻。あれからどうよ?」
後輩である祐麻が俺たちと共に行動をするようになってから、約一ヶ月。
彼は文化祭を通して心情の変化があったのか、心なしか顔つきが明るくなった。
「これまであまり話さなかった人たちと話すようになって何かと大変です。でも、人付き合いがちゃんと出来て僕は嬉しいです」
行動が人付き合いを呼んだ。祐麻の普段の姿からは想像できないような明るさを秘めた演奏がクラスメイトとの壁を薄くしたのだろう。
「おぉそっか。よかったな」
「えぇ。本当によかったです」
祐麻との会話がひと段落ついた頃、裕太と遼太郎がやってきた。
裕太と遼太郎は俺たちを見つけると爽やかな笑顔と明るい笑顔を振り撒いた。
二人とも色違いのカーディガンを着ていて、なんだかカッコよくみえる。
「おはよう! 敦志! 鷹乃君!」
「おはよー! 二人とも!」
「おはようございます」
「おはようさん」
いつも通り、軽い挨拶を交わしたあと、四人で歩き始めた。雑談をしながら、歩いているとすぐに校門まで着いてしまい、学年の違う祐麻とは別れた。
俺たちが到着した頃、教室はざわめきに包まれていた。文化祭の余韻が残っているのか、ここ一ヶ月はずっとこんな感じだ。
祐麻が変わったように俺たちも変化があった。
まず、裕太がクラスメイトのみならず、学年の壁を越えてモテまくっていること。
ある日の帰り道には、出待ちしていた数人の先輩女子に囲まれて放課後の遊びを誘われていた。優しく断っていたみたいだが。
遼太郎は、男女関わらず、和ませ要員として更に人気を集めていた。時々、女装のためクラスメイトから「三石君借りていくね」と謎の言葉を貰う。
本人は女装はあんまり好きじゃないが祐麻同様、関わりが増えるのは嫌じゃないそうだ。
そして、一番変わったのは俺かも知れない。
「よぉ! 高橋!」
「おはよう。拓也」
俺の名前を呼んだのは、文化祭で劇を共にした拓也というクラスのバカップルだった。
「あぁ……。綺麗だな……」
ここまで登った甲斐があったと思えるよ。これは。
ぴかぴかと光るビルや住宅が黒の背景に点在し、まるでミニチュアの建物を見ているよう。
ここまでの道のりは運動不足の体には応えたけど、よい運動だったと思う。
「……また、この景色を見たいね」
「あぁ……」
でも、これで満足してほしくない。俺は密かに考えているんだよ。
小春から貰った赤いマフラーを俺は優しく握り、愛しの人の横顔を見る。
普段から光に満ち溢れている大きな瞳は、一段と輝いていた。
これはクリスマスと俺たちが付き合って一年の記念日までの大切な思い出の物語だ。
***
文化祭が終わってから、一気に残暑が薄れてきた。普段は半袖のシャツに身を包んでいた俺たちも長袖のシャツを着用し始めた。
女子のなかにはもうブレザーを着用しているやつもいて、さすがに暑いだろと心のなかで思った。まぁ、人それぞれか。
いつも通りの通学路。俺は裕太や遼太郎たちといつもの待ち合わせ場所に向かう。この待ち合わせも文化祭が終わってから変わったことがある。それは、一人増えたことだ。
「おはようございます。高橋先輩」
「おはよう。祐麻。あれからどうよ?」
後輩である祐麻が俺たちと共に行動をするようになってから、約一ヶ月。
彼は文化祭を通して心情の変化があったのか、心なしか顔つきが明るくなった。
「これまであまり話さなかった人たちと話すようになって何かと大変です。でも、人付き合いがちゃんと出来て僕は嬉しいです」
行動が人付き合いを呼んだ。祐麻の普段の姿からは想像できないような明るさを秘めた演奏がクラスメイトとの壁を薄くしたのだろう。
「おぉそっか。よかったな」
「えぇ。本当によかったです」
祐麻との会話がひと段落ついた頃、裕太と遼太郎がやってきた。
裕太と遼太郎は俺たちを見つけると爽やかな笑顔と明るい笑顔を振り撒いた。
二人とも色違いのカーディガンを着ていて、なんだかカッコよくみえる。
「おはよう! 敦志! 鷹乃君!」
「おはよー! 二人とも!」
「おはようございます」
「おはようさん」
いつも通り、軽い挨拶を交わしたあと、四人で歩き始めた。雑談をしながら、歩いているとすぐに校門まで着いてしまい、学年の違う祐麻とは別れた。
俺たちが到着した頃、教室はざわめきに包まれていた。文化祭の余韻が残っているのか、ここ一ヶ月はずっとこんな感じだ。
祐麻が変わったように俺たちも変化があった。
まず、裕太がクラスメイトのみならず、学年の壁を越えてモテまくっていること。
ある日の帰り道には、出待ちしていた数人の先輩女子に囲まれて放課後の遊びを誘われていた。優しく断っていたみたいだが。
遼太郎は、男女関わらず、和ませ要員として更に人気を集めていた。時々、女装のためクラスメイトから「三石君借りていくね」と謎の言葉を貰う。
本人は女装はあんまり好きじゃないが祐麻同様、関わりが増えるのは嫌じゃないそうだ。
そして、一番変わったのは俺かも知れない。
「よぉ! 高橋!」
「おはよう。拓也」
俺の名前を呼んだのは、文化祭で劇を共にした拓也というクラスのバカップルだった。
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