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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
107・5時間目 闇のなかを切り裂いて
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小春の手を握りながら、俺は先導することにした。
遼太郎は暗い場所が苦手らしく裕太にしがみついている。困ったようにたはは……と笑いながら裕太は遼太郎を連れてついてきている。
時おり、ちらりと小春の方を見てあげると彼女は嬉しいのかクスリと笑った。
足元を照らすものはスマホのライトのみ。それ以外の視界は真っ暗で小春と握っている手だけが人肌を感じられる。
「遼太郎、裕太、大丈夫か?」
地面がアスファルトから土に変わった頃、俺は一度、後ろを振り向いて裕太たちの安否を確認した。
「あぁ、大丈夫だよ。僕も三石も一緒にいるよ」
「この先結構ごつごつした岩あるから気を付けろよ」
「了解。……あっ、三石、足元気を付けて」
「さて、俺たちも行くか。小春、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。敦志君、リードしてくれてありがとう」
暗闇のなかでの小春の笑顔が眩しい。「それくらい彼氏だからとうぜん」なんて言えるはずがないので、少し強く手を握るのに留めておいた。
先ほど、裕太たちに話したところまでは、神社の道のりを歩いていたが、ここからはもう道なき道を歩いている。
手入れされていないから、ごつごつした岩があるし、土砂崩れでも起きた跡なのだろうか、削られた地面があって、とにかく足場が悪い。
小春がこけたりしないように慎重に歩いていく。
そうして、道なき道を裕太たちの安否も確認しながら歩くこと大体二十分くらいか。やっと、山の中腹あたりであろう場所に着いた。
「はー、疲れた。ちょっと休憩するか。裕太と遼太郎を待つついでに」
「う、うん。あ、みてみて! 敦志君! ここからでも夜景すごいよ!」
はしゃぐ小春に肩を叩かれて振り返ってみると、夜の闇に点在する無数のきらめきがそこにはあった。
「おぉ……。すっげぇ綺麗だな」
「うん……! きれいだね!」
俺の肩にもたれるように抱きつく小春。俺はその細くしなやかな腰に自らの腕をよせた。
そこには、暗闇を怖がっていた小春はもういなかった。
無数のネオンを見る小春の瞳は今までで一番輝きを放っているような気がした。
「はぁ、み、三石、疲れたね」
「う、ん。まだ慣れたほうだけど……。あー、夜出歩くのとかあんまり好きじゃないんだよなー! というか暗すぎる……!」
「おっ、お疲れ二人とも。水、いるか?」
「うん、貰う。ありがとー、敦志。あー、生き返る」
大げさなと思いながら、裕太にもお疲れと遼太郎とここまで来てくれたことに感謝を伝える。
「おぉ、すごい景色だね」
裕太が少し興奮したような声で言った。
「まだ中腹あたりでこれだからな。頂上とかすごいだろうな」
「あっ! 敦志君これ……」
小春の声に振り返り、俺はそれを見たとたん、思わず「はっ……?」と言ってしまった。
「『中腹の展望スポットまであと一・五キロ』だって……?」
中腹だと思っていた場所は全く違っていた。
遼太郎は暗い場所が苦手らしく裕太にしがみついている。困ったようにたはは……と笑いながら裕太は遼太郎を連れてついてきている。
時おり、ちらりと小春の方を見てあげると彼女は嬉しいのかクスリと笑った。
足元を照らすものはスマホのライトのみ。それ以外の視界は真っ暗で小春と握っている手だけが人肌を感じられる。
「遼太郎、裕太、大丈夫か?」
地面がアスファルトから土に変わった頃、俺は一度、後ろを振り向いて裕太たちの安否を確認した。
「あぁ、大丈夫だよ。僕も三石も一緒にいるよ」
「この先結構ごつごつした岩あるから気を付けろよ」
「了解。……あっ、三石、足元気を付けて」
「さて、俺たちも行くか。小春、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。敦志君、リードしてくれてありがとう」
暗闇のなかでの小春の笑顔が眩しい。「それくらい彼氏だからとうぜん」なんて言えるはずがないので、少し強く手を握るのに留めておいた。
先ほど、裕太たちに話したところまでは、神社の道のりを歩いていたが、ここからはもう道なき道を歩いている。
手入れされていないから、ごつごつした岩があるし、土砂崩れでも起きた跡なのだろうか、削られた地面があって、とにかく足場が悪い。
小春がこけたりしないように慎重に歩いていく。
そうして、道なき道を裕太たちの安否も確認しながら歩くこと大体二十分くらいか。やっと、山の中腹あたりであろう場所に着いた。
「はー、疲れた。ちょっと休憩するか。裕太と遼太郎を待つついでに」
「う、うん。あ、みてみて! 敦志君! ここからでも夜景すごいよ!」
はしゃぐ小春に肩を叩かれて振り返ってみると、夜の闇に点在する無数のきらめきがそこにはあった。
「おぉ……。すっげぇ綺麗だな」
「うん……! きれいだね!」
俺の肩にもたれるように抱きつく小春。俺はその細くしなやかな腰に自らの腕をよせた。
そこには、暗闇を怖がっていた小春はもういなかった。
無数のネオンを見る小春の瞳は今までで一番輝きを放っているような気がした。
「はぁ、み、三石、疲れたね」
「う、ん。まだ慣れたほうだけど……。あー、夜出歩くのとかあんまり好きじゃないんだよなー! というか暗すぎる……!」
「おっ、お疲れ二人とも。水、いるか?」
「うん、貰う。ありがとー、敦志。あー、生き返る」
大げさなと思いながら、裕太にもお疲れと遼太郎とここまで来てくれたことに感謝を伝える。
「おぉ、すごい景色だね」
裕太が少し興奮したような声で言った。
「まだ中腹あたりでこれだからな。頂上とかすごいだろうな」
「あっ! 敦志君これ……」
小春の声に振り返り、俺はそれを見たとたん、思わず「はっ……?」と言ってしまった。
「『中腹の展望スポットまであと一・五キロ』だって……?」
中腹だと思っていた場所は全く違っていた。
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