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第8章 〝幸せ〟の選択 ─さよならの決意─
113時間目 永遠を求めて
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小春と付き合ってから、今日で一年。
きっと、去年の今頃は聖なる夜にふさわしい雪空のもとで、クリスマスツリーの下で告白しているんだろう。
ちょうど、今みたいに雪が降り始めて、ちらちらと舞いだした頃に俺は告白したから。
今でも、あのときのことは覚えている。俺が言った言葉の一字一句。頬を赤らめ告白の言葉を待ち望んでいた小春の笑顔にまじった涙を。
『私も、好き』
この言葉を聞きたくて、俺はこの日に勇気をだしたんだ。
ここまで色々なことがあった。でも、それらは全て将来への投資に過ぎない。
俺が今、一番恐れているもの。それは必ずくると言っていい別れのことだ。
もちろん、ここの別れは、卒業について。分かっていた。中学校でも別れを経験したから。でも、悲しむことはなかった。
正直、会わなくなっても会えてもどっちでもよかった。でも、裕太は。遼太郎は。小春は。
……違う。
これから来る別れがあるとしても、別れたくない。ずっと友達でいたい。
俺は今、どれだけ子供っぽくて哀れなことを思っているのか自分でも分かっている。
卒業すれば、疎遠になるやつがいる。
きっと、裕太たちとは、違う道に進むから、集まる時間が短くなる。
小春とだって、もしかしたら、更に遠距離恋愛になるかもしれない。
でもそれでも──
「敦志君! 写真撮ろ!」
「お、おう……」
「敦志どうした?」
「もしかして、疲れちゃった?」
裕太と小春が心配そうな目で見てくる。
今まで考えていた暗い考えは一度心のなかで捨て、つとめて笑顔を作るようにした。
「いや、大丈夫だ。それにしても……。このツリー、去年のよりもでかいな」
「うん、そうだね。去年と言えばなんだけど……」
小春がなにかを言いかけた瞬間、俺は今までの感謝を伝えることにした。
「俺と」「私と」
「「付き合ってくれてありがとう‼」」
「「え??」」
重なった言葉に俺たちは二人そろって目を見開いた。
「あっ、いやその……。小春も同じこと思っていたんだな」
俺は恥ずかしくなっておもむろにツリーの方を見た。
闇夜に光る黄金のひとつ星の輝きが優しく俺の目に反射した。
「敦志君と同じことを思っていて嬉しいな。私、ここまで誰かを好きになったことなかったから」
俺はその言葉に小春に向き合うと、見つめあう形になった。
「私、敦志君と出会えてよかった。あの日、私を助けてくれてありがとう。私とまた出会ってくれてありがとう。私をカノジョにしてくれてありがとう。敦志君の特別にしてくれてありがとう」
「これからも、私は敦志君とずっと一緒にいたいです」
出会った頃と、友人だった頃と変わらない小春の柔らかな笑顔と嘘のない本音に俺は全身が熱くなった。
どうしようもないくらい、小春が好きだ。
これからの不安もこの笑顔を見れば消え去る。全てが上手くいくんじゃないかと思える。
「……俺も、小春とこれからもずっとらいたい。卒業をすれば、お互い忙しくなるけど、距離ができると思うけど。小春と幸せになりたいです」
「卒業って……。まだ一年もあるよ?」
「まぁ、そうだけどさ。最近すごく将来が不安で」
「敦志君なら大丈夫だよ。こうやって考えてくれていることがもう、ちゃんと将来のことを考えてくれているってことだから」
「そう、かな。そう……なのか。俺、推薦で大学に行くよ。まだ、間に合うから」
「うん、敦志君なら大丈夫」
小春の声は本当に反則だ。聞けば不安も吹き飛び、根拠のない励ましの言葉よりもちゃんと説得力があるように思えるから。
「敦志、好きだよ」
「俺も。ずっと愛してる」
「ふふっ……」
「ははっ」
二人そろってこの甘い空気に笑ってしまう。
小春との時間がずっと続けていけるように頑張ろうと俺は、この日、誓った。
きっと、去年の今頃は聖なる夜にふさわしい雪空のもとで、クリスマスツリーの下で告白しているんだろう。
ちょうど、今みたいに雪が降り始めて、ちらちらと舞いだした頃に俺は告白したから。
今でも、あのときのことは覚えている。俺が言った言葉の一字一句。頬を赤らめ告白の言葉を待ち望んでいた小春の笑顔にまじった涙を。
『私も、好き』
この言葉を聞きたくて、俺はこの日に勇気をだしたんだ。
ここまで色々なことがあった。でも、それらは全て将来への投資に過ぎない。
俺が今、一番恐れているもの。それは必ずくると言っていい別れのことだ。
もちろん、ここの別れは、卒業について。分かっていた。中学校でも別れを経験したから。でも、悲しむことはなかった。
正直、会わなくなっても会えてもどっちでもよかった。でも、裕太は。遼太郎は。小春は。
……違う。
これから来る別れがあるとしても、別れたくない。ずっと友達でいたい。
俺は今、どれだけ子供っぽくて哀れなことを思っているのか自分でも分かっている。
卒業すれば、疎遠になるやつがいる。
きっと、裕太たちとは、違う道に進むから、集まる時間が短くなる。
小春とだって、もしかしたら、更に遠距離恋愛になるかもしれない。
でもそれでも──
「敦志君! 写真撮ろ!」
「お、おう……」
「敦志どうした?」
「もしかして、疲れちゃった?」
裕太と小春が心配そうな目で見てくる。
今まで考えていた暗い考えは一度心のなかで捨て、つとめて笑顔を作るようにした。
「いや、大丈夫だ。それにしても……。このツリー、去年のよりもでかいな」
「うん、そうだね。去年と言えばなんだけど……」
小春がなにかを言いかけた瞬間、俺は今までの感謝を伝えることにした。
「俺と」「私と」
「「付き合ってくれてありがとう‼」」
「「え??」」
重なった言葉に俺たちは二人そろって目を見開いた。
「あっ、いやその……。小春も同じこと思っていたんだな」
俺は恥ずかしくなっておもむろにツリーの方を見た。
闇夜に光る黄金のひとつ星の輝きが優しく俺の目に反射した。
「敦志君と同じことを思っていて嬉しいな。私、ここまで誰かを好きになったことなかったから」
俺はその言葉に小春に向き合うと、見つめあう形になった。
「私、敦志君と出会えてよかった。あの日、私を助けてくれてありがとう。私とまた出会ってくれてありがとう。私をカノジョにしてくれてありがとう。敦志君の特別にしてくれてありがとう」
「これからも、私は敦志君とずっと一緒にいたいです」
出会った頃と、友人だった頃と変わらない小春の柔らかな笑顔と嘘のない本音に俺は全身が熱くなった。
どうしようもないくらい、小春が好きだ。
これからの不安もこの笑顔を見れば消え去る。全てが上手くいくんじゃないかと思える。
「……俺も、小春とこれからもずっとらいたい。卒業をすれば、お互い忙しくなるけど、距離ができると思うけど。小春と幸せになりたいです」
「卒業って……。まだ一年もあるよ?」
「まぁ、そうだけどさ。最近すごく将来が不安で」
「敦志君なら大丈夫だよ。こうやって考えてくれていることがもう、ちゃんと将来のことを考えてくれているってことだから」
「そう、かな。そう……なのか。俺、推薦で大学に行くよ。まだ、間に合うから」
「うん、敦志君なら大丈夫」
小春の声は本当に反則だ。聞けば不安も吹き飛び、根拠のない励ましの言葉よりもちゃんと説得力があるように思えるから。
「敦志、好きだよ」
「俺も。ずっと愛してる」
「ふふっ……」
「ははっ」
二人そろってこの甘い空気に笑ってしまう。
小春との時間がずっと続けていけるように頑張ろうと俺は、この日、誓った。
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