闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

文字の大きさ
30 / 104
イーストランドへ

夕食

しおりを挟む
 僧侶たちに連れられて、僕は、教会内の長い長い廊下を歩いて行く。
 アスピや、クリートさんの写真もあって、本当にここが彼女たちの生まれたところなんだと言うことが分かった。
「アスピはここで生まれたんだね? 」
「あの…… 私は…… 」
「お嬢様は孤児です。ディアスト様たちは……その。」
 僕は何か悪いことに触れてしまったのかもしれない。
「良いのよクリート。私も貴方と同じ。教会に捨てられていたらしいの。クリートはね。それを聞きつけて王宮からやってきて、私の世話をしてくれたの。」
「アスピは生まれた頃から凄かったんだね。」
「はい。乳幼児の頃からお二人方は並ならぬ力を有しており、私がシスターとして派遣されることになったのです。ですが、コレがあんなことになるなんて。」
 クリートが下を向く。
「フォース。勇者とはなんなんだい? 英雄って。」
「丁度いい。ここにはその文献が沢山ある。」
「フォース様!! 」
 人は誰しも隠したい部分がある。
 ここの教会でも。
「今更、こうなってしまっては遅い。少年は全てを知る権利がある。」
 フォースは続ける。
「なーに、ウチの大陸で発生していれば、我々が処刑するハメになっていたさ。コレもディアストリーナ共通の掟だろう。」
 「ちょっと。お取り込み中のところ悪いんだけど、僕もうクタクタで。」
「早くお風呂に入りたい。」
「「「グテン」」」
 全員が崩れ落ちる。

     ♨️♨️♨️

「久しぶりの湯でしたねお嬢様。」
「ホント、船にせめて浴場でも作って貰えないかしら。不潔ったらないわ。」
 スカプリオ姿の二人が、食堂に入ってくる。
「全く、女というものは…… 」
 フォースがため息をつく。
「なーに? 神父様。身だしなみよ身だしなみ。一緒に冒険している女の子が髭生やして、髪ボサボサだったら嫌でしょ。」
「アスピも髭が生えるの? 」
「ちょっとッ黙ってろよ!! 」
「アスピ様、夕食をお持ちしました。ささ、お座りください。」
「はい。クリート夕食にしましょうか。」
 牛のステーキにライ麦パン、それからキノコサラダだ。
 アスピがいつもの癖か、祈りの手振りを始めたので、給仕係の修道女がそれを止める。
「アスピ様、そんなに畏まらなくても。ここはアスピ様の帰る場所。それにウェストの方もいらっしゃいますから。」
 クリートは手のひらを合わせると、一人で黙々と食事を始める。
「ちょっとクリート!! 」
「お嬢様の髪の手入れが面倒でしゅて、もう我慢しきれにぁかったので。先にいただきましゅね。」
 それからクリートは、食べ物を飲み込み、フォークをアスピの方へ向けると、話を続けた。
「それに私は敬虔けいけんな教徒ではありません。アスピ様のお世話をするために派遣されたですよ。だから神に信仰があつくなくてもバチが当たらないんです。」
 フォースが不機嫌になり、手を軽く合わせると、ステーキを切り取り、黙々と口に運び始めた。
「こにょアマめっ!! 誰にょまっていたと思ってりゅんだ。」
「フォースさん。口にモノを入れたまま喋らないでください。汚いです。」
 フォースは肉を胃に運んでから、反論する。
「クリートだけには言われたくない。」
「モラハラやめて下さい。」
 予想外の事態に、アスピがアタフタし始めた。
「食うか? 」
 フォースが、一切れをフォークに突き刺して、アスピの方を向ける。
「食うかぁ!!ぁ。」
「やっといつものアスピ様になって下さいましたね。」
「あっ、えっとコレは…… 」
「お嬢様、この際なので言っておきますが……ここのモノは、お嬢様かここのモノに、無理をして慇懃インギンな態度を取っていることを知っておられます。」
「中には何かの病ではないかと心配しているモノまでおりますので。」
 相変わらずクリートさんは刺々しい。
 彼女は感情が希薄で、不器用ではあるが、彼女のしていることは、全てアスピのためにしているということは分かる。
「ああ、もう!! 最っ低。みんな知ってて黙ってたの? もうどうでも良いわよ。」
 彼女はガサツに夕食をかきこみ始める。
「んぐっ!! 」
「はい。お水。」
 青くなった彼女は慌てて水をかっさらい、それを飲み干すと、自分の今の状況を客観視できる余裕が出来たのか、今度は赤くなり始めた。
「なーに? なんか文句ある? 」
「いいや、やっぱりアスピはアスピだなって思ってさ。」
「作用でございますアスィール様。」
 僕もみんなに続いて、皿の上のステーキを動かし始めた。
「どうした少年? 肉は珍しいか? 」
「フォースってもしかして教会にいる時以外は、こんな感じなの? 」
「あんな、食ったか食わなかったか分からん料理で、動ける訳ないだろう? 」
「そうです。ここじゃ精進料理や断食は禁止ですよアスィールさん。断食明けに街に出ようとして、遭難したバカがいたので、そうなりました。」
「ちょっとクリート!! 」
 彼女は舌が乗ったようで続ける。
「実は洞窟の向こうに畜産場があるんです。街の人々の見えないところでこっそり牛を飼ってるんですよ。魚を捕まえて、殺生をしても、私のような日頃の行いの良い教徒であれば、神が許してくださるんですよ。」
「ホラ、この皿には肉なんて乗ってなかった。初めから。」
 クリートさんは、綺麗さっぱり肉が消えた皿をこちらに見せつけてくる。
「もう!! クリート!! 」
「お嬢様。今日はお嬢様の大好きな桃が出るらしいですよ。」
「やったぁ!! 」
 子供のようにはしゃぐアスピを見て、僕たち4人は笑った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

ボンクラ王子の側近を任されました

里見知美
ファンタジー
「任されてくれるな?」  王宮にある宰相の執務室で、俺は頭を下げたまま脂汗を流していた。  人の良い弟である現国王を煽てあげ国の頂点へと導き出し、王国騎士団も魔術師団も視線一つで操ると噂の恐ろしい影の実力者。  そんな人に呼び出され開口一番、シンファエル殿下の側近になれと言われた。  義妹が婚約破棄を叩きつけた相手である。  王子16歳、俺26歳。側近てのは、年の近い家格のしっかりしたヤツがなるんじゃねえの?

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

婚約破棄は構いませんが、私が管理していたものは全て引き上げます 〜成金伯爵家令嬢は、もう都合のいい婚約者ではありません〜

藤原遊
ファンタジー
成金と揶揄される伯爵家の令嬢である私は、 名門だが実情はジリ貧な公爵家の令息と婚約していた。 公爵家の財政管理、契約、商会との折衝―― そのすべてを私が担っていたにもかかわらず、 彼は隣国の王女と結ばれることになったと言い出す。 「まあ素敵。では、私たちは円満に婚約解消ですね」 そう思っていたのに、返ってきたのは 「婚約破棄だ。君の不出来が原因だ」という言葉だった。 ……はぁ? 有責で婚約破棄されるのなら、 私が“善意で管理していたもの”を引き上げるのは当然でしょう。 資金も、契約も、人脈も――すべて。 成金伯爵家令嬢は、 もう都合のいい婚約者ではありません。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...