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イーストランドへ
出発
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あの後、セブンスをやり過ごした僕たちは、そのまま寝室へと行き、夜を明かした。
「おはようございます。フォースさん、アスィールさん。」
クリートさんは目をこすりながら、僕たちに挨拶をした。
どうやら朝は弱いようである。
アスピが彼女の頭を撫でながら、こちらに振り向く。
「昨日は随分と静かだったみたいだけど、なにしてたの? 」
その問いにフォースが答える。
「私も少年も山登りで身体が堪えていたからな。」
「アスィールはまだしも、フォースさんはそう言うふうには見えなかったけど。」
「お嬢様。行きますよ。早くバロア城に帰らなくては。」
低血圧でも意思だけはしっかりしているらしい。いつものクリートさんだった。
「じゃあ。世話になった。行ってくる。」
フォースが僧侶たちに一礼する。
「いえいえ、いってらっしゃいませ。どうか、世界を…… 」
その二対の眼には、確固たる意志とメッセージがこもっていた。
「ありがとう!! 」
僕もフォースに習って一礼する。
「ホラー、そこの二人。モタモタしていると置いていくわよ。」
「彼女のことも。」
「アレは……アンタらが思っているほど弱い人間ではないさ。」
フォースがヘブンズのマントをなびかせて、振り返り、二人を追う。
僕も彼の後を追いかけた。
「ちょっと待ってくださいよぉ~ 」
「私もバロア王の謁見にお供するって言ったでしょう? 」
「ああ、ファーストの命令だったな。すっかり忘れていたすまん。」
「困りますよぉ。」
クリートさんがこちらに振り返る。
「と、言っても、ここには魔物も出ませんし、結界がありますし、大した脅威なんてありませんよ。」
「賊が出るかもしれないでしょ? 」
アスピは腕を組んでしばらく考えたから。
「ま、アスィールよりは役に立つでしょ。」
「ありがとうございます。」
(手をモミモミ)
「じゃあ、とりあえず、コイツの荷物全部持って? 」
「ええっ? 」
「コイツ、山登りに慣れてないみたいだから。」
「アスピィ!! 」
思わず僕は彼女に抱きつきそうになる。
彼女はそれを自身の杖で受け止める。
「やっぱり却下。こうやって甘やかすと…… アンタも勇者だってんなら、もう少し自覚持った方が良いわよ。」
「そんなぁー 」
そんな感じで、セブンスさんが、僕たちの旅に加わってくれた。
旅は賊が出ることもなく、もちろん魔物が出ることも無かった。
害獣のクマは僕たちのことを見つけるや否や小熊を連れて逃げていってしまったし。
数キロほど登ったところで、辺りの木々に変化が見られた。
「葉っぱが真っ赤だ。」
「みんな病気にかかっちゃったの? 」
クリートさんがこちらに振り返る。
「バロア王の趣味ですよ。病気ではありません、魔術でクロロフィルに別の色彩を与ているだけですよ。ここらの木々は一年中この色です。」
セブンスさんが辺りを見渡した。
「なるほど、いや、すみません。ウェストランドでは珍しいもので。」
地面に埋め込まれた石を頼りに、色彩豊かな並木道を進んでいくと、不意に石垣が現れた。
「もうすぐですよ。皆さん頑張って。」
心持ちか、身体が昨日より楽だ。
「どうやらアスィールさんも慣れてきたようですね。一日寺院に滞在した甲斐がありました。」
「うん。クリートさん。昨日より身体が楽になったよ。」
「少年。山登りをする時は、身体を気圧に慣らせることが重要だ。よく覚えておけ。」
なるほど、イーストサイドの本拠地があそこにあるのは、そういった意味があるのかもしれない。
「さぁ、皆さん。ようやくバロア城が見えてきましたよ。」
「セブンスさん。ご苦労様。」
僕の荷物の代わりにアスピの荷物を持っていたセブンスさんは、息切れしながら、みんなの先陣を切っていた。
「勘弁してくださいよ。私はこう言うのは専門外なんです。高山病に罹ったらどうするんですか? 」
「安心しろ。私が直してやる。」
フォースが腕を振るう。
「そういや、フォースさんは回復魔術だけでなく、病気の治療も出来るのよね。」
「そうだ。解毒だけでなく、体の痺れ、あと身体の呪いを祓うことも。」
「そっか。私はそっち系は苦手だなぁ。」
どうやら魔術のスペシャリストであるアスピでも苦手なモノがあるらしい。
アスピは僕の顔を見るや否やムスッとした。
「なーによ。回復魔術も使え無いくせに。」
「治癒魔術は使えるよ。」
「次やったらマジで殺すから。私やクリートがシワシワのおばーちゃんになったらどうしてくれるのよ。」
そこにフォースが割って入る。
「だがな。私は少年やアスピのように攻撃魔術は使えない。」
「攻撃魔術が必要になったら、お前らを頼らせてもらう。」
「「まかせてよ。」」
アスピが僕を睨む。
「私の真似をしないで!! 」
「ごめんねアスピ。そういった意味は無かったんだ。」
そうこう雑談をしているうちに、僕たちは城門の前に来ていた。
「おいそこのモノ。何をしている。」
どうやら衛兵たちは仕事熱心らしい。
「私はアスピよ。今帰ってきたんだけど、開けてくれないかしら。汗をかいたからシャワーを浴びたいの。」
「おはようございます。フォースさん、アスィールさん。」
クリートさんは目をこすりながら、僕たちに挨拶をした。
どうやら朝は弱いようである。
アスピが彼女の頭を撫でながら、こちらに振り向く。
「昨日は随分と静かだったみたいだけど、なにしてたの? 」
その問いにフォースが答える。
「私も少年も山登りで身体が堪えていたからな。」
「アスィールはまだしも、フォースさんはそう言うふうには見えなかったけど。」
「お嬢様。行きますよ。早くバロア城に帰らなくては。」
低血圧でも意思だけはしっかりしているらしい。いつものクリートさんだった。
「じゃあ。世話になった。行ってくる。」
フォースが僧侶たちに一礼する。
「いえいえ、いってらっしゃいませ。どうか、世界を…… 」
その二対の眼には、確固たる意志とメッセージがこもっていた。
「ありがとう!! 」
僕もフォースに習って一礼する。
「ホラー、そこの二人。モタモタしていると置いていくわよ。」
「彼女のことも。」
「アレは……アンタらが思っているほど弱い人間ではないさ。」
フォースがヘブンズのマントをなびかせて、振り返り、二人を追う。
僕も彼の後を追いかけた。
「ちょっと待ってくださいよぉ~ 」
「私もバロア王の謁見にお供するって言ったでしょう? 」
「ああ、ファーストの命令だったな。すっかり忘れていたすまん。」
「困りますよぉ。」
クリートさんがこちらに振り返る。
「と、言っても、ここには魔物も出ませんし、結界がありますし、大した脅威なんてありませんよ。」
「賊が出るかもしれないでしょ? 」
アスピは腕を組んでしばらく考えたから。
「ま、アスィールよりは役に立つでしょ。」
「ありがとうございます。」
(手をモミモミ)
「じゃあ、とりあえず、コイツの荷物全部持って? 」
「ええっ? 」
「コイツ、山登りに慣れてないみたいだから。」
「アスピィ!! 」
思わず僕は彼女に抱きつきそうになる。
彼女はそれを自身の杖で受け止める。
「やっぱり却下。こうやって甘やかすと…… アンタも勇者だってんなら、もう少し自覚持った方が良いわよ。」
「そんなぁー 」
そんな感じで、セブンスさんが、僕たちの旅に加わってくれた。
旅は賊が出ることもなく、もちろん魔物が出ることも無かった。
害獣のクマは僕たちのことを見つけるや否や小熊を連れて逃げていってしまったし。
数キロほど登ったところで、辺りの木々に変化が見られた。
「葉っぱが真っ赤だ。」
「みんな病気にかかっちゃったの? 」
クリートさんがこちらに振り返る。
「バロア王の趣味ですよ。病気ではありません、魔術でクロロフィルに別の色彩を与ているだけですよ。ここらの木々は一年中この色です。」
セブンスさんが辺りを見渡した。
「なるほど、いや、すみません。ウェストランドでは珍しいもので。」
地面に埋め込まれた石を頼りに、色彩豊かな並木道を進んでいくと、不意に石垣が現れた。
「もうすぐですよ。皆さん頑張って。」
心持ちか、身体が昨日より楽だ。
「どうやらアスィールさんも慣れてきたようですね。一日寺院に滞在した甲斐がありました。」
「うん。クリートさん。昨日より身体が楽になったよ。」
「少年。山登りをする時は、身体を気圧に慣らせることが重要だ。よく覚えておけ。」
なるほど、イーストサイドの本拠地があそこにあるのは、そういった意味があるのかもしれない。
「さぁ、皆さん。ようやくバロア城が見えてきましたよ。」
「セブンスさん。ご苦労様。」
僕の荷物の代わりにアスピの荷物を持っていたセブンスさんは、息切れしながら、みんなの先陣を切っていた。
「勘弁してくださいよ。私はこう言うのは専門外なんです。高山病に罹ったらどうするんですか? 」
「安心しろ。私が直してやる。」
フォースが腕を振るう。
「そういや、フォースさんは回復魔術だけでなく、病気の治療も出来るのよね。」
「そうだ。解毒だけでなく、体の痺れ、あと身体の呪いを祓うことも。」
「そっか。私はそっち系は苦手だなぁ。」
どうやら魔術のスペシャリストであるアスピでも苦手なモノがあるらしい。
アスピは僕の顔を見るや否やムスッとした。
「なーによ。回復魔術も使え無いくせに。」
「治癒魔術は使えるよ。」
「次やったらマジで殺すから。私やクリートがシワシワのおばーちゃんになったらどうしてくれるのよ。」
そこにフォースが割って入る。
「だがな。私は少年やアスピのように攻撃魔術は使えない。」
「攻撃魔術が必要になったら、お前らを頼らせてもらう。」
「「まかせてよ。」」
アスピが僕を睨む。
「私の真似をしないで!! 」
「ごめんねアスピ。そういった意味は無かったんだ。」
そうこう雑談をしているうちに、僕たちは城門の前に来ていた。
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