闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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イーストランドへ

夜襲

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 あのあと、僕たちは兵士たちに連れられて、それぞれ別々の個室へと入れられた。
 僕は旅の疲れを個室のシャワーで洗い流すと、布切れで水滴を綺麗に拭き取ってから、先の件の礼を、伝説の盾様に伝えることにした。
「ありがとう。君が居なければ、僕は死んでた。」
[フォースも、アスピちゃんも、君を守るために、それぞれ動こうとしていたゲドね。それより、王様の言う通りなんじゃないのかな? 僕たちが居なかったら、ボクちゃんは本当に死んでたけど。]
「ごめん、あの時から全然変わってなくてさ。自分でも分かっているよ。早く君と釣り合う勇者にならなきゃって。アレぐらいの火の玉は一人で捌き切らなきゃって。」
[全然違うね。バロア王がアイツをくれなければ、君は剣なして魔王を倒すことが出来ない。]
「ふーん。」
[なんだよその顔は。]
「ドゥルガって竜宮の剣のことが嫌いなんでしょ。」
[そうだよ。傷つけることで快楽を得るような存在、人間でも嫌われるでしょ。僕は特に、対局の存在だからね。護る事に存在意義を見出されている僕と、人を傷つけることで快楽を得る乙姫、僕と相性は最悪だろ? ]
[でもね。彼女は正真正銘、誰もが認める業物だよ。]
[前の魔王と勇者との戦いで、流石に僕たちも魔力を消耗して、人格を保ってられるのもやっとだった。]
[だけど、彼女だけは、最後まで勇者の声に従い、魔王のディスペルに務めた。]
「ディスペル? 竜宮の剣の能力が? 」
[あと、斬った時に爆発が起こる。いちいちうるさいやつだよ。斬るたびに絶頂しているんだ。ホント気持ちの悪いやつ。]
「ここの結界も。」
[そう、竜宮の剣を元にして作られている。まぁ、そんな結界の知識がそこらに転がっているって言うのなら、人間たちはみんなそうするでしょ。ここの城は特別なんだよ。乙姫がいるからさ。]
 ドゥルガは一息ついた。
[話を戻すよ。つまりだね。君に足りないモノ。何か分かっただろう? 君は伝説の武具を揃えようが揃えなかろうが、魔王を倒す宿命にある。そのために何が必要か、分かるかい? ]
「能力でしょ? 火の玉を防ぐ。」
[だから違うって。ああもう。]
 彼女は一息ついた。
 そして息を大きく吸い込み、叫ぶ。
[精神力、だよ。勇者とは、強い人間のことを言うんじゃない。現に、数千年前の勇者は、当時の人間から見ても、そんなに強い人間では無かった。]
[でもね。彼は人格者だった。弱者であることを自覚していた。そして、弱者の気持ちを痛みを理解していた。そしてメキメキと強くなり、魔王を倒し、最強になった後も、その心を忘れることは無かった。]
[山登り程度で根を上げているのなら、この先が思いやられるなぁ。コレからノースランド、サウスランドと僕たちの仲間を集める。これ以上の困難が君を襲うだろうね。君はどうするんだい? ]
「どうにもならないよ。僕は偽物だからさ。」
 彼女は低く唸るような音を立てる。
「でも、君に相応しい相棒にはなろうと思う。ごめん、昨日のアレだろ。つい勢いだと言うか、でもコレも僕自身が弱い所以なんだろうな。」
「まずは体力をつける。精神力も必要だけど、倒れてしまったらそこでおしまいだから。」
 ふと記憶を過った、本当の僕であった人の師匠の記憶。
 一度倒れてしまった時、立ち上がるのには、想像以上の気力が必要であること。
[……分かれば良いんだよ。僕も、君が意思を示し続けるのなら、君に手を貸してあげるよ。]
[もう二度と僕を捨てるなんて言っちゃいけないよ。たとえそれが人間同士のジョークだったとしても。僕が最初の君の契約者なんだからさ。]
「よろしくドゥルガ。」

<<<<<敵襲>>>>>>
<<<<<敵襲>>>>>>

城に張り巡らされたスクロールが、魔物の侵入を感知して、喧しくて耳に響く嫌な音の波が、僕の本能を揺さぶる。
魔物が?
どこから?
魔術も空も封じられたこの鉄壁の要塞で、どうやって?
「行こう、ドゥルガ。」
 僕は彼女を背中に担ぐと、十字の剣を腰にかける。
[気をつけろよアスィール。ここじゃ魔術は使えない。]
「やっと僕の名前を呼んでくれたね。」


      * * *


 魔族を移動用の地下水道から招き入れる。
 最初は雲を掴むような話だと思ったが、実際やってみれば案外簡単だった。
 イーストサイドの人間は、意外にも私のことを信用してくれたし、バロア王に至っては、私を脅威とすら見ていなかった。
「さて。」
 私は竜宮の剣のある、剣の間へと向かう。
 そこで、ディスペルを解除するためだ。
「やっぱりお前の仕業だったかセブンス。
 チッ、感だけは良いやつ。アイツだけは、そう。私を信用してはいなかった。
 と言うか、彼は誰も信用していないのかもしれない。
「ひどいなぁフォースさん。僕を異常者見たいに言ってさ。」
「お前は異常者だ。」
 やれやれ面倒だ。
 彼は臨戦体制に入っている。
 彼のお気に入りの十字架の銃口が、私へと向けられる。

 十二使徒最強の男、No.4、フォース。
 外務担当の私が彼に敵うはずがない
 と言うのは、まだ私が教皇に忠誠を誓っていた頃。
 まぁこのまま逃げ切れるとも私は思っちゃいない。
 ここで私の本当の能力を見せつけてやるか。
 



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