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強い意志
処刑
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「大丈夫。誰にもつけられていない。バロア王は私たちに魔導船を貸してくれたことをビギニア王に黙ってくれていたみたい。」
「今頃、追手は北の厳しい荒波に飲まれているでしょうね。」
バロア王は、教皇とファーストさんの処刑については、ダンマリだった。
そう、教皇と十二使徒のファーストさんは処刑される。
そのことを知って僕たちは魔導船でウェストランドまで飛んでくると、処刑を止めるべく、ビギニアまで戻ってきたのであるが……
僕たちは再びフードを被り直すと、裏路地に貼られている、フィフスさんの手配書を破り捨てた。
風で僕に一枚のニューススクロールが飛んでくる。
『勇者を名乗る裏切り者、教会と手を組みクーデターか? 』
そこには、先日、凱旋の時に撮られた僕の顔がキッチリ映っている。
僕もめでたくお尋ね者デビューか。
後ろから、何者かとぶつかって、振り向いた。
フォースは何も言わずにその女と裏路地へ向かう。
「すまない、シクス。こんな時にも仕事を頼んでしまって。」
「良いのよ。それに影は私の領分だしね。」
それから僕の方を見た。
「安心して、リワン・スペースと孤児たちは保護したから。今はキュリオスさんとセカンドが面倒を見ている。」
「しばらく見ない間に、いい顔になったじゃない。」
「すみません、シクスさん。」
「なんでボウヤが謝るの? 」
シクスさんは僕の頭を撫でてから、フォースに二枚の封書を渡した。
「じゃあ、また会える日を楽しみにしてるわ、三人とも。」
シクスさんはまた闇の中へと消えていく。
フォースは二枚の封書の封を切ると、手紙を読み始め、それからポロポロと涙を流し始めた。
「すまない。私は……教皇様たちを助けようとしていた。」
「そのためなら、この旅が終わっても厭わないと思っていた。」
「でも……でも…… 」
僕はフォースの肩を叩く。
「フォースさん、アジトに行きましょう。アナタの私物を取りに。」
フォースは首を振る。
「我ら十二使徒にそんなものは存在しないさ。教皇様が私にくださった、この棺桶とナイフだけだ。」
「……行こう。彼らの最後を見届けるために。」
* * *
僕たちは影から、彼らが斬首刑にかけられるのを見ていた。
周りの人間の喧騒がうるさい。
中にはモノを投げるモノもいた。
皮肉なことだ。
セブンスがやったことが、人間の醜さを露見させるなんて。
ここで、処刑を止めれば、彼らを助けられるかもしれない。
だけど、それじゃ僕らはお尋ね者ではいられなくなるだろう。
僕は一瞬教皇と目が合った。
それから彼は、僕に向けて首を振った? かもしれない。
彼は民衆に石を投げられようと、靴が飛んでこようと、消してその目に宿る意思を捨てることは無かった。
こちらに気がついたファーストさんは、安堵の表情を見せると、僕に向けて笑って見せた。
感情を逆撫された民衆たちの喧騒と罵倒がさらに酷くなる。
___そして桜が散り、命が散る。一瞬の間、その後、民衆から歓声が上がった。
自分たちは魔族に勝ったのだと。
コレが人類の進撃の第一歩だと。
魔族への会心の一撃だと。
皆は手を取り合ってその勝利を噛み締めた。
僕たちは彼らを置いて、その場を後にする。
「行こう。彼らの思いを無駄にするわけにはいかない。」
「ああ、私は、私たちは教皇様たちに託された。この使命を。」
「行きましょう。最後の武具を揃えに。」
アスピの魔術で僕たちの気配が消える。
跳躍し、民家の屋根に登ると、外壁向けて走り出した。
僕たちは再び跳躍し、城壁の屋根へと飛び乗る。
そこで松明をかざしながら見回りをしている兵士をやり過ごし、ビギニアの外へと出た。
街道は人が多いので、別のルートから魔導船を目指す。
草原をかき分け、森へと入り、そこで湖のホトリへと辿り着くと、僕たち三人は、薪を焚き、魚を釣ると、塩焼きにして食べた。
「アスィール。」
フォースは僕たちが思っているよりも、ずっと落ち着いていた。
「ずっと魚と塩の生活が続くかもしれないね。」
「一応、壊血病対策に、柑橘系の果汁は多めに買い込んでおいたけど…… 」
とアスピ。
「コレからどうするの? ノースランドはあんなんだし、イーストランドには……バロア王にはこれ以上厄介になるわけには行かない。」
「南に行こう。サウスランドへ。」
「そこで新たな協力者を探すんだ。」
「それと、日銭稼ぎをね。」
フォースが気難しい顔をする。
「フォースも手伝ってよ。孤児院の子供達の面倒を見なくちゃもそうだけどさ。逃げた十二使徒のみんなも、大変でしょ。」
「ああ。」
「それより不思議なことだ。コレだけのことがあったのに、私たちはまだ神に見放されてはいないということを。」
「トゥエルブスさんたちが言っていた神の声のこと? 」
「それどころか、私たちは互いに意思疎通ができるようになったらしい。」
「ええっ!! 」
「みんな無事なようだ。物資の運搬と資金繰りを皆手伝ってくれるみたいだぞ。」
「創造主アプスー様は一体何を考えておられるのか。どうやら我々の味方をしてくれるらしい。」
アスピがため息をついた。
「それなら、そうと先に言って欲しかったんだけど。コレばかりはバロア王に頼もうと思っていたし。」
「最初は疑心暗鬼だったよ。ストレスで頭がおかしくなったのだと思っていた。」
「だけどシクスは今日、約束通り私に接触してきた。」
「あーあ、一生懸命考えていた私が馬鹿みたいじゃない。」
そう言って、アスピは寝袋へ潜り込む。
「でも良かったフォースさん。元気そうで。」
「ああ、アプスー様は我々を見ている。それだけも私はまだ歩いていける。」
「教皇さまと、ファーストの分まで。」
「今頃、追手は北の厳しい荒波に飲まれているでしょうね。」
バロア王は、教皇とファーストさんの処刑については、ダンマリだった。
そう、教皇と十二使徒のファーストさんは処刑される。
そのことを知って僕たちは魔導船でウェストランドまで飛んでくると、処刑を止めるべく、ビギニアまで戻ってきたのであるが……
僕たちは再びフードを被り直すと、裏路地に貼られている、フィフスさんの手配書を破り捨てた。
風で僕に一枚のニューススクロールが飛んでくる。
『勇者を名乗る裏切り者、教会と手を組みクーデターか? 』
そこには、先日、凱旋の時に撮られた僕の顔がキッチリ映っている。
僕もめでたくお尋ね者デビューか。
後ろから、何者かとぶつかって、振り向いた。
フォースは何も言わずにその女と裏路地へ向かう。
「すまない、シクス。こんな時にも仕事を頼んでしまって。」
「良いのよ。それに影は私の領分だしね。」
それから僕の方を見た。
「安心して、リワン・スペースと孤児たちは保護したから。今はキュリオスさんとセカンドが面倒を見ている。」
「しばらく見ない間に、いい顔になったじゃない。」
「すみません、シクスさん。」
「なんでボウヤが謝るの? 」
シクスさんは僕の頭を撫でてから、フォースに二枚の封書を渡した。
「じゃあ、また会える日を楽しみにしてるわ、三人とも。」
シクスさんはまた闇の中へと消えていく。
フォースは二枚の封書の封を切ると、手紙を読み始め、それからポロポロと涙を流し始めた。
「すまない。私は……教皇様たちを助けようとしていた。」
「そのためなら、この旅が終わっても厭わないと思っていた。」
「でも……でも…… 」
僕はフォースの肩を叩く。
「フォースさん、アジトに行きましょう。アナタの私物を取りに。」
フォースは首を振る。
「我ら十二使徒にそんなものは存在しないさ。教皇様が私にくださった、この棺桶とナイフだけだ。」
「……行こう。彼らの最後を見届けるために。」
* * *
僕たちは影から、彼らが斬首刑にかけられるのを見ていた。
周りの人間の喧騒がうるさい。
中にはモノを投げるモノもいた。
皮肉なことだ。
セブンスがやったことが、人間の醜さを露見させるなんて。
ここで、処刑を止めれば、彼らを助けられるかもしれない。
だけど、それじゃ僕らはお尋ね者ではいられなくなるだろう。
僕は一瞬教皇と目が合った。
それから彼は、僕に向けて首を振った? かもしれない。
彼は民衆に石を投げられようと、靴が飛んでこようと、消してその目に宿る意思を捨てることは無かった。
こちらに気がついたファーストさんは、安堵の表情を見せると、僕に向けて笑って見せた。
感情を逆撫された民衆たちの喧騒と罵倒がさらに酷くなる。
___そして桜が散り、命が散る。一瞬の間、その後、民衆から歓声が上がった。
自分たちは魔族に勝ったのだと。
コレが人類の進撃の第一歩だと。
魔族への会心の一撃だと。
皆は手を取り合ってその勝利を噛み締めた。
僕たちは彼らを置いて、その場を後にする。
「行こう。彼らの思いを無駄にするわけにはいかない。」
「ああ、私は、私たちは教皇様たちに託された。この使命を。」
「行きましょう。最後の武具を揃えに。」
アスピの魔術で僕たちの気配が消える。
跳躍し、民家の屋根に登ると、外壁向けて走り出した。
僕たちは再び跳躍し、城壁の屋根へと飛び乗る。
そこで松明をかざしながら見回りをしている兵士をやり過ごし、ビギニアの外へと出た。
街道は人が多いので、別のルートから魔導船を目指す。
草原をかき分け、森へと入り、そこで湖のホトリへと辿り着くと、僕たち三人は、薪を焚き、魚を釣ると、塩焼きにして食べた。
「アスィール。」
フォースは僕たちが思っているよりも、ずっと落ち着いていた。
「ずっと魚と塩の生活が続くかもしれないね。」
「一応、壊血病対策に、柑橘系の果汁は多めに買い込んでおいたけど…… 」
とアスピ。
「コレからどうするの? ノースランドはあんなんだし、イーストランドには……バロア王にはこれ以上厄介になるわけには行かない。」
「南に行こう。サウスランドへ。」
「そこで新たな協力者を探すんだ。」
「それと、日銭稼ぎをね。」
フォースが気難しい顔をする。
「フォースも手伝ってよ。孤児院の子供達の面倒を見なくちゃもそうだけどさ。逃げた十二使徒のみんなも、大変でしょ。」
「ああ。」
「それより不思議なことだ。コレだけのことがあったのに、私たちはまだ神に見放されてはいないということを。」
「トゥエルブスさんたちが言っていた神の声のこと? 」
「それどころか、私たちは互いに意思疎通ができるようになったらしい。」
「ええっ!! 」
「みんな無事なようだ。物資の運搬と資金繰りを皆手伝ってくれるみたいだぞ。」
「創造主アプスー様は一体何を考えておられるのか。どうやら我々の味方をしてくれるらしい。」
アスピがため息をついた。
「それなら、そうと先に言って欲しかったんだけど。コレばかりはバロア王に頼もうと思っていたし。」
「最初は疑心暗鬼だったよ。ストレスで頭がおかしくなったのだと思っていた。」
「だけどシクスは今日、約束通り私に接触してきた。」
「あーあ、一生懸命考えていた私が馬鹿みたいじゃない。」
そう言って、アスピは寝袋へ潜り込む。
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