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魔王討伐
エシール
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「ここだな。」
リリスを倒した後、僕たちはついに浮遊城の真下へと辿り着いた。
この上に魔王がいる。
そして……
「迎えに来たよ。兄さん。」
アスピはそう呟いた。
「迎えに来たぜ弟クゥーん。」
その嗜虐的な、かろうじて人の言葉と分かる獣の咆哮にも似たソレを僕たちは聞いた。
聞いてから皆んながみんな、空を見上げた。
奴は僕を、僕だけを狙っている。
いつしかの火傷男。
いや、火傷の後はもう綺麗さっぱり無くなっている。
エシール。
そうだエシール。
僕の兄弟子。
だったらしい。
そうだ。
兄弟子のことは、バロア城で、彼自身から聞いた。
僕はフォースを突き飛ばそうとした。
が、その前に、アスピが、自身の杖で、エシールの刃を受け止めた。
「邪魔すんじゃねえアマぁ。」
彼女は、杖を振りながら、衝撃を地面に受け流し、地面を滑るように後退する。
「待ちきれなくてよ。お前をいつ殺そうかと、ウズウズしてたわけよ。」
「エスカリーナに、『島から出るな』って言われてるから、直接お前んところに行けなかったのが残念だぜ。」
彼は右手の裏斬(僕はこの魔術剣の名前を知っている。)をオモチャのように振り回してながら、獲物を見定めるように、僕たち四人に鋒を向ける。
「ほう、裏斬が気になるか? こりゃ前のお前に戻る予兆かもしれねえな。ますます楽しみだぜ。」
_____刹那の風圧。
そして僕の喉笛には裏斬が突き立てられている。
「この武器はなぁ。」
「お前が、俺を殺すために使った血濡れた刀なんだぜぇ。」
咄嗟に乙姫で弾き返す。
「おっと、外野の皆さんは、手を出さないで頂きたいねぇ。コレは、俺とコイツの戦いだ。」
そして、エシールは、天に向けて怒鳴った。
「お前も邪魔すんじゃねえぞエスカリーナ。ソレがお前との契約だ。お前の計画に乗ってやる。その代わり、俺の私怨には手ェ出すなってなぁ!! 」
「殺してやる。殺してやる。殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス______」
「殺すぅぅぅ。」
---時空壊---
---[神威]---
中段からの水平斬り、だけど、ただの水平斬りじゃない。
疾走した時の運動エネルギーを上乗せした、ド級の水平斬りだ。
アレを受け切ることは正直、難しい。
背筋を使い、限界まで身体を逸らす。
僕の目の前を、裏斬りが、左から右へと大きく弧を描く。
「甘いぞ、弟弟子!! 」
--- 妄劔ー紅---
彼の左手から、もう一振りの刃が。
赤黒く、禍々しいデザインの魔術剣が、緋色の雷と共にこの世界へと顕現する。
[すまない、アスィール。間に合わない。]
上を向いていたことで、エシールの口元が見えていなかった。
僕の右胸に、彼の獲物が突き刺さる。
すぐに引き抜かれて、僕は咄嗟に、乙姫を振るった。
彼女は、妄劔に触れるや否や、僕の血を触媒に爆発する。
が、
エシールは後退することも、裏斬で防ぐこともせず、ただ、妄劔で、僕の肺を抉って、不気味な笑い声を上げるばかりだ。
「引き抜いて、多量出血で苦しめるのもいいけどよぉ。」
「こうやって、苦痛で、憎き相手を苦しめるのも悪くねえよなぁ。」
「思い出すぜぇ。昔、王宮魔導師の宿舎で出た、でっけえゴキブリの胸を刺して抉ったのをよぉ~。」
「アスィール!! 」
「来るな!! 」
ここはヤツの独壇場。
こちらの仲間が動けば、エスカリーナも、エシールとの契りを破りかねない。
ただでさえ高速で動くゴキブリが、時空間魔術まで使い始めることは考えたくも無い。
僕は胸に突き刺さった赤黒い 尾棘を引き抜くと、肺を聖炎で焼いた。
燃えるような痛み共に、どくどくと流れる熱いものが固まる。
---全快---
肺に溜まった血を勢いよく吐き出す。
酸欠と失血で視界がぐらりと揺れる。
その隙を、目の前の狂人が見逃すはずが無かった。
[気をつけろよアスィール。]
「うん。」
バロア城で戦った時とはまるで戦闘スタイルが違う。
この前は、いくら人間離れした戦い方をしていようと、魔族の手に堕ちようと、人間の形を保っていた。
だが今は……
「へへへへへ。跡形もなく綺麗に再生しやがった。そうか、お前もそっち側に。」
コレではまるで……
「アスィール、お前は勇者だ。魔王などではない。」
フォースの言葉で、何かに引き戻される。
再び、乙姫を握り直し、背中からドゥルガを手に取った。
僕が戦闘で盾をあまり構えない理由。
左手が使えないということもあるが、視野が狭まるという点で、僕はドゥルガを持たなかった。
相手が、エシールや、セブンスのような素早い相手なら尚更だ。
僕は盾を構えた。
見たくないものを見ないために。
[見なくていいものは、見なくていい。僕もそうだった。]
[だから、見なきゃ行けないモノだけ視ようぜ。]
僕の慧眼が、ハッと見開く。
そうだ。生前勇者は、ドゥルガを構えながら、エシールような厄介な相手とも戦っていたはずだ。
盾のデメリットを克服する方法。
「慧眼か。なるほど。クソ野郎の見込みは正しかった訳だ。」
「なぁアスィール。なんでお前の師匠は俺と戦ったか分かるか? 」
「キミが暴走したからだろ? リワン姉さんから聞いた。 次元の腕は使えば使うほど、人格が混濁していくって。そして、運悪く、気が触れた自分と同化した時…… 」
「そうだ。俺は、あの日、魔族のチカラを手に入れた。ここではない、どこかの世界の自分。」
「あのクソ野郎は俺に言った。『お前のような失敗作は生かしてはおけない。』とな。」
「後々、奴の研究レポートを見て分かったことだが…… 俺に、勇者の素質が無いことは明確だったらしい。」
「それでも奴は俺にこの術を使わせ続けた。」
「俺はずっと自分のことを、マスターキーだと思っていた。」
「だが実際は違った。お前がマスターキーで、スペアは俺の方だったんだ。お前が失敗した時にやり直せるようにな。」
「俺は、この代償のことよりも、自分が、お前のスペアだということを知って腹が立った。」
「そのような資料は、王宮のどこにも…… 」
「燃やしたよ。俺がな。神父さんよ。」
「元々、国家機密の研究だ。こんな危険な実験、国民に知れ渡れば、バッシングじゃ済まない、最悪革命が起きる。なんだって、いつ爆発するか分からない時限爆弾に、火薬を詰め続けている訳だ。ソレは、アンタなら身に染みて分かってるんじゃないか? 」
僕が暴走した時に止めてくれたのがフォースだったらしい。
そうだ、そうだった気がする。
「ちっちえ男やなオノレ。」
ドレイクが茶々を入れる。
「女には分からん。男の苦悩はな。」
「兄より優秀な弟など、この世に存在してはいけない。」
「もし、そんなモノが存在するのなら。」
「俺がこの手でぶっ潰す。」
---燠見---
エシールの目が怪しく光る。
僕はこの目を知っている。
全てを見通すような赫く光る目。
魔王が、人間にチカラを貸した証。
フォースを襲った厄災。
フォースの大切なモノを全て奪った存在。
魔眼!!
僕は咄嗟に魔術を放った。
その瞳には際限が無く、吸い込まれるように、瞳孔へと落ちていく。
その感覚がとてつもなく不気味だったからだ。
---雷神砲---
彼は、風のように舞い、雷の一つ一つを、軽快に避けた。
「見えるぜ。全てが。やっと追いついたぞ。お前の極地へと。」
ドゥルガの裏側に仕込んでおいた短剣を引き抜くと、左手の縦でソレを隠しながら、エシールに投げる。
教会で貰った、フォースと同じ短剣。
フォースみたいに術式は発動できないが、対魔族としては十二分に効果がある。
彼は、瞬時に姿を消すと、僕の前に現れた。
「遊びは終わりだ。」
「ここからは、ずっと俺のターン❤️ 」
水平斬りを、背中を逸らして避ける。
かろうじて見えた、エシールの手元。
「何度同じことしてんだよぉぉぉぉ。」
だが、今度は違う。
オキュペティーの靴。
勇者は自分の敏捷性を補完するために使っていた武具らしい。
僕には必要ないと思っていた。
けど。
「オキュペティー!! 頼む!! 」
[任せて!! アーちゃん。]
アーちゃん?
空中で僕の右足が加速し、エシールの顎へと直撃する。
意識外からの攻撃。
流石にコレは、奴も耐えられまい。
白目を向いている。
両手の二対の剣は、効力を無くして消滅し、彼はヨダレを撒き散らしながら、ふらついている。
コレは決まったな。
いくら魔眼と言えども、脳とのアクセスを遮断してしまえば、無いのも同然。
勇者に魔眼持ちの対策を聞いておいて良かった。
「~んてな!! 」
彼のアッパーを左に避ける。
脳との接続を切られて困るのはこちらも同じ。
--- लुमा---
エシールの魔術剣が、空を斬る。
「後ろぉ!! 見通しなんだよぉ!! 」
僕は彼の後ろ側に、自分の魔力を流した人形を投げ捨てると、再び彼の前へと姿を現す。
斬った!!
「ガシッ!! 」
「しょーだよなやっぱぁ。」
「ぺっ!! 」
エシールは乙姫に噛み付くと、そのまま 咬合力で剣を押し返す。
「バカ正直なところは、リセットされても変わんねえみたいだなぁあー!! 」
弾き返された、威力を殺さずに、そのまま一回転。
エシールへ向けて水平斬りをぶちこむ。
【虚気平心】
--- 黒龍斬---
彼の虚無が、僕の乙姫と衝突する。
剣と剣がぶつかり合い、火花を散らす。
衝撃で僕たちは同時に吹き飛ばされた。
再び地に足を付けると、同時に地面を蹴る。
【紫電一閃】
---黒一角---
再びエシールと衝突し、二度目の衝撃で、辺りの木々が吹き飛ぶ。
鼓膜が潰れ、意識が飛びそうだ。
だけど、僕は負けられない。
エシール兄さんを必ず連れて帰ると。
そうリワン姉ちゃんと約束したから。
--- 大蛇滅殺斬---
--- Knights of The Round---
Knights of The Round、僕はこの武術を知っている。
剣を十二の残像に分けて、敵を切り刻む御伽話のようなワザ。
対して僕の大蛇滅殺斬は、別世界の豪傑が、八又の大蛇を倒す時に使ったとされている剣技。
彼と対峙するには、後四手……いや、五手足りない。
一撃目を鍔迫り合いで相殺し、二撃を水平斬りで押し返す。
三撃目は、斬り上げと斬り下ろし。
上に大きく弾き返された反動を使い、一回転し、脇下から斬りあげる。
右、左、飛び上がって乙姫を振り回して回転する。
いよいよ後が無くなった。
最後の一突きで決める。
大蛇の主頭の脳天向けて、剣の鋒が突きつけられる。
「いっけぇぇぇぇぇ。」
「しねぇぇぇぇぇぇ。」
リリスを倒した後、僕たちはついに浮遊城の真下へと辿り着いた。
この上に魔王がいる。
そして……
「迎えに来たよ。兄さん。」
アスピはそう呟いた。
「迎えに来たぜ弟クゥーん。」
その嗜虐的な、かろうじて人の言葉と分かる獣の咆哮にも似たソレを僕たちは聞いた。
聞いてから皆んながみんな、空を見上げた。
奴は僕を、僕だけを狙っている。
いつしかの火傷男。
いや、火傷の後はもう綺麗さっぱり無くなっている。
エシール。
そうだエシール。
僕の兄弟子。
だったらしい。
そうだ。
兄弟子のことは、バロア城で、彼自身から聞いた。
僕はフォースを突き飛ばそうとした。
が、その前に、アスピが、自身の杖で、エシールの刃を受け止めた。
「邪魔すんじゃねえアマぁ。」
彼女は、杖を振りながら、衝撃を地面に受け流し、地面を滑るように後退する。
「待ちきれなくてよ。お前をいつ殺そうかと、ウズウズしてたわけよ。」
「エスカリーナに、『島から出るな』って言われてるから、直接お前んところに行けなかったのが残念だぜ。」
彼は右手の裏斬(僕はこの魔術剣の名前を知っている。)をオモチャのように振り回してながら、獲物を見定めるように、僕たち四人に鋒を向ける。
「ほう、裏斬が気になるか? こりゃ前のお前に戻る予兆かもしれねえな。ますます楽しみだぜ。」
_____刹那の風圧。
そして僕の喉笛には裏斬が突き立てられている。
「この武器はなぁ。」
「お前が、俺を殺すために使った血濡れた刀なんだぜぇ。」
咄嗟に乙姫で弾き返す。
「おっと、外野の皆さんは、手を出さないで頂きたいねぇ。コレは、俺とコイツの戦いだ。」
そして、エシールは、天に向けて怒鳴った。
「お前も邪魔すんじゃねえぞエスカリーナ。ソレがお前との契約だ。お前の計画に乗ってやる。その代わり、俺の私怨には手ェ出すなってなぁ!! 」
「殺してやる。殺してやる。殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス______」
「殺すぅぅぅ。」
---時空壊---
---[神威]---
中段からの水平斬り、だけど、ただの水平斬りじゃない。
疾走した時の運動エネルギーを上乗せした、ド級の水平斬りだ。
アレを受け切ることは正直、難しい。
背筋を使い、限界まで身体を逸らす。
僕の目の前を、裏斬りが、左から右へと大きく弧を描く。
「甘いぞ、弟弟子!! 」
--- 妄劔ー紅---
彼の左手から、もう一振りの刃が。
赤黒く、禍々しいデザインの魔術剣が、緋色の雷と共にこの世界へと顕現する。
[すまない、アスィール。間に合わない。]
上を向いていたことで、エシールの口元が見えていなかった。
僕の右胸に、彼の獲物が突き刺さる。
すぐに引き抜かれて、僕は咄嗟に、乙姫を振るった。
彼女は、妄劔に触れるや否や、僕の血を触媒に爆発する。
が、
エシールは後退することも、裏斬で防ぐこともせず、ただ、妄劔で、僕の肺を抉って、不気味な笑い声を上げるばかりだ。
「引き抜いて、多量出血で苦しめるのもいいけどよぉ。」
「こうやって、苦痛で、憎き相手を苦しめるのも悪くねえよなぁ。」
「思い出すぜぇ。昔、王宮魔導師の宿舎で出た、でっけえゴキブリの胸を刺して抉ったのをよぉ~。」
「アスィール!! 」
「来るな!! 」
ここはヤツの独壇場。
こちらの仲間が動けば、エスカリーナも、エシールとの契りを破りかねない。
ただでさえ高速で動くゴキブリが、時空間魔術まで使い始めることは考えたくも無い。
僕は胸に突き刺さった赤黒い 尾棘を引き抜くと、肺を聖炎で焼いた。
燃えるような痛み共に、どくどくと流れる熱いものが固まる。
---全快---
肺に溜まった血を勢いよく吐き出す。
酸欠と失血で視界がぐらりと揺れる。
その隙を、目の前の狂人が見逃すはずが無かった。
[気をつけろよアスィール。]
「うん。」
バロア城で戦った時とはまるで戦闘スタイルが違う。
この前は、いくら人間離れした戦い方をしていようと、魔族の手に堕ちようと、人間の形を保っていた。
だが今は……
「へへへへへ。跡形もなく綺麗に再生しやがった。そうか、お前もそっち側に。」
コレではまるで……
「アスィール、お前は勇者だ。魔王などではない。」
フォースの言葉で、何かに引き戻される。
再び、乙姫を握り直し、背中からドゥルガを手に取った。
僕が戦闘で盾をあまり構えない理由。
左手が使えないということもあるが、視野が狭まるという点で、僕はドゥルガを持たなかった。
相手が、エシールや、セブンスのような素早い相手なら尚更だ。
僕は盾を構えた。
見たくないものを見ないために。
[見なくていいものは、見なくていい。僕もそうだった。]
[だから、見なきゃ行けないモノだけ視ようぜ。]
僕の慧眼が、ハッと見開く。
そうだ。生前勇者は、ドゥルガを構えながら、エシールような厄介な相手とも戦っていたはずだ。
盾のデメリットを克服する方法。
「慧眼か。なるほど。クソ野郎の見込みは正しかった訳だ。」
「なぁアスィール。なんでお前の師匠は俺と戦ったか分かるか? 」
「キミが暴走したからだろ? リワン姉さんから聞いた。 次元の腕は使えば使うほど、人格が混濁していくって。そして、運悪く、気が触れた自分と同化した時…… 」
「そうだ。俺は、あの日、魔族のチカラを手に入れた。ここではない、どこかの世界の自分。」
「あのクソ野郎は俺に言った。『お前のような失敗作は生かしてはおけない。』とな。」
「後々、奴の研究レポートを見て分かったことだが…… 俺に、勇者の素質が無いことは明確だったらしい。」
「それでも奴は俺にこの術を使わせ続けた。」
「俺はずっと自分のことを、マスターキーだと思っていた。」
「だが実際は違った。お前がマスターキーで、スペアは俺の方だったんだ。お前が失敗した時にやり直せるようにな。」
「俺は、この代償のことよりも、自分が、お前のスペアだということを知って腹が立った。」
「そのような資料は、王宮のどこにも…… 」
「燃やしたよ。俺がな。神父さんよ。」
「元々、国家機密の研究だ。こんな危険な実験、国民に知れ渡れば、バッシングじゃ済まない、最悪革命が起きる。なんだって、いつ爆発するか分からない時限爆弾に、火薬を詰め続けている訳だ。ソレは、アンタなら身に染みて分かってるんじゃないか? 」
僕が暴走した時に止めてくれたのがフォースだったらしい。
そうだ、そうだった気がする。
「ちっちえ男やなオノレ。」
ドレイクが茶々を入れる。
「女には分からん。男の苦悩はな。」
「兄より優秀な弟など、この世に存在してはいけない。」
「もし、そんなモノが存在するのなら。」
「俺がこの手でぶっ潰す。」
---燠見---
エシールの目が怪しく光る。
僕はこの目を知っている。
全てを見通すような赫く光る目。
魔王が、人間にチカラを貸した証。
フォースを襲った厄災。
フォースの大切なモノを全て奪った存在。
魔眼!!
僕は咄嗟に魔術を放った。
その瞳には際限が無く、吸い込まれるように、瞳孔へと落ちていく。
その感覚がとてつもなく不気味だったからだ。
---雷神砲---
彼は、風のように舞い、雷の一つ一つを、軽快に避けた。
「見えるぜ。全てが。やっと追いついたぞ。お前の極地へと。」
ドゥルガの裏側に仕込んでおいた短剣を引き抜くと、左手の縦でソレを隠しながら、エシールに投げる。
教会で貰った、フォースと同じ短剣。
フォースみたいに術式は発動できないが、対魔族としては十二分に効果がある。
彼は、瞬時に姿を消すと、僕の前に現れた。
「遊びは終わりだ。」
「ここからは、ずっと俺のターン❤️ 」
水平斬りを、背中を逸らして避ける。
かろうじて見えた、エシールの手元。
「何度同じことしてんだよぉぉぉぉ。」
だが、今度は違う。
オキュペティーの靴。
勇者は自分の敏捷性を補完するために使っていた武具らしい。
僕には必要ないと思っていた。
けど。
「オキュペティー!! 頼む!! 」
[任せて!! アーちゃん。]
アーちゃん?
空中で僕の右足が加速し、エシールの顎へと直撃する。
意識外からの攻撃。
流石にコレは、奴も耐えられまい。
白目を向いている。
両手の二対の剣は、効力を無くして消滅し、彼はヨダレを撒き散らしながら、ふらついている。
コレは決まったな。
いくら魔眼と言えども、脳とのアクセスを遮断してしまえば、無いのも同然。
勇者に魔眼持ちの対策を聞いておいて良かった。
「~んてな!! 」
彼のアッパーを左に避ける。
脳との接続を切られて困るのはこちらも同じ。
--- लुमा---
エシールの魔術剣が、空を斬る。
「後ろぉ!! 見通しなんだよぉ!! 」
僕は彼の後ろ側に、自分の魔力を流した人形を投げ捨てると、再び彼の前へと姿を現す。
斬った!!
「ガシッ!! 」
「しょーだよなやっぱぁ。」
「ぺっ!! 」
エシールは乙姫に噛み付くと、そのまま 咬合力で剣を押し返す。
「バカ正直なところは、リセットされても変わんねえみたいだなぁあー!! 」
弾き返された、威力を殺さずに、そのまま一回転。
エシールへ向けて水平斬りをぶちこむ。
【虚気平心】
--- 黒龍斬---
彼の虚無が、僕の乙姫と衝突する。
剣と剣がぶつかり合い、火花を散らす。
衝撃で僕たちは同時に吹き飛ばされた。
再び地に足を付けると、同時に地面を蹴る。
【紫電一閃】
---黒一角---
再びエシールと衝突し、二度目の衝撃で、辺りの木々が吹き飛ぶ。
鼓膜が潰れ、意識が飛びそうだ。
だけど、僕は負けられない。
エシール兄さんを必ず連れて帰ると。
そうリワン姉ちゃんと約束したから。
--- 大蛇滅殺斬---
--- Knights of The Round---
Knights of The Round、僕はこの武術を知っている。
剣を十二の残像に分けて、敵を切り刻む御伽話のようなワザ。
対して僕の大蛇滅殺斬は、別世界の豪傑が、八又の大蛇を倒す時に使ったとされている剣技。
彼と対峙するには、後四手……いや、五手足りない。
一撃目を鍔迫り合いで相殺し、二撃を水平斬りで押し返す。
三撃目は、斬り上げと斬り下ろし。
上に大きく弾き返された反動を使い、一回転し、脇下から斬りあげる。
右、左、飛び上がって乙姫を振り回して回転する。
いよいよ後が無くなった。
最後の一突きで決める。
大蛇の主頭の脳天向けて、剣の鋒が突きつけられる。
「いっけぇぇぇぇぇ。」
「しねぇぇぇぇぇぇ。」
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