神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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大陸遠征

脳波共有

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"なんだこれは? "
 脳がいつもの何倍も早く動く。疾風で身体強化を行なっている身体がついてこないぐらいだ。
 霧島の攻撃が手に取るように分かる。
 五感も、特に視覚はいつもやっている身体強化とは比にならなかった。
 彼女の思考、血液の流れ、そして陽電子の流れまでもを脳が正確に捉える。
 彼女は風の鷹と、炎の鳳を同時に発動させようとしているのが分かる。
 俺はその魔力の根源を掴みに行った。
 電撃が走り、術が中断させる。
---どうだ……すげえだろ---
 馬田の声が聞こえる。
 咄嗟に眼球の裏側で、鼻血を出して、苦しそうにしている彼を捉えた。
---つうか、お前もすげえよ。こんな脳みそ。お前にはもったいねえぜ---
「隊長たちはどうなっていますか? 」
---もう…配置に…付いている。早く斥を止めろ。頭が割れそうだ---
 俺は地面を蹴った。
 同時に霧島が、神聖魔術を発動する。
---punishment for the blame咎人に罰を---
 詠唱が早すぎて、壊す前に神聖魔術が完成する。
 地面から、銀色の細身のダブルエッジが引き抜かれる。
 彼女はその剣を振るうと、俺の左腕を切り裂いた。
「グッ。」
 左腕が切り落とされているのが分かる。
 自分の体を過信していた訳では無いが、こうも金属で安易と切り落とされるなんて!!
 よく見ると、切り口が灰化していた。
「銀か!! 」
 俺は強化されたオツムで素早く理解すると、チャクラムを口で咥え、右手に銃鬼を持つ。
 俺の目に、二つ目の魔法陣が浮かび上がる。
---love for sinners罪人に愛を---
 六つの短剣が俺に投げつけられることを事前に予測した俺は、凛月の鎖を振るい、それを全て弾き飛ばす。
 弾き飛ばされた、短剣たちは地面に突き刺さると、俺の周りに魔法陣を発現させた。
"しまった!! "
 身体が重く、思うように動かない。重力のせいでは無かった。
---rampage暴れ狂う師匠---
 短剣を憤怒のライオンが、踏み荒らす。
 馬田が震える右手で放った渾身の一撃。
 身体が軽くなった俺は、走り出し、煉瓦造りの壁を蹴って宙に舞う。
 彼女は俺を浄化すべく、最後の大技を放とうとしていた。
 俺は、口からチャクラムに電流を流す。
「行くぞ凛月!! 」
--慎二に合わせる!! ---
 
---神龍・雷シンリュウ・イカズチ---
   ---Hate & Love我は悪魔を憎み悪魔を愛す---
 彼女の両手から溢れ出す極光を、凛月が食い破る。
---昇龍斬ショウリュウザン---
 昇る龍の顎が、霧島を優しく包み込んだ。
 鎖でガッチリホールドすると、彼女の頭に触れて、精神魔術を解除する。
 治りかけた左手で彼女を抱きかかえる。
「ん? 慎二? 」
 彼女の瞼が閉じられる。
 未知術が終わり、重力によって、自由落下が始まる。
 大股で地面に着地した。
 そして、暴走した斥の元へと急ぐ。
「安心しろ慎二。」
 鏡子がこちらに歩いてくる。
「斥の暴走は私が止めた。」
 安心からか、力が抜ける。
 視界が反転する。
 とても、とても青い空だ。

「気がつくと、俺はペンションのベットで寝かされていた。」
 左腕は完全に治っている。
「コレまでは、怪我をしたら、美奈が治してくれていたからなぁ。」
 自分でも驚きだった。
 試しに、腕を動かしてみるが、正真正銘俺の腕だ。
「アレ? 電極が……」
「隊長が入れ直してくれたんだ。」
 琵琶だ。彼はいつもの軽い表情とは正反対の面構えをしていた。
「ありがとな、馬田を助けてくれて。」
「霧島上官のことは良かったんですか? 」
「その調子じゃもう大丈夫そうだな。」
 彼は立ち上がり、部屋から出ようとする。
「みんなは…どうしていますか? 」
 琵琶は振り返った。
「地下室で、聖の拷問をしているよ。斥の能力で、轢かれたカエルみたいになってたらしい。隊長が言ってたよ。」
「今は目隠しをされて、両手両足、指一本一本まで拘束されている。拷問は新潟がやっている。誰もやりたがらないからな。」
(起き上がる。)
「なら、出航は拷問が終わってからになりますね。」
 琵琶は頭を抱えた。
「そうだな、この行動が吉と出るか、凶と出るか。」
「向こうも当然、こちらの動きに気づいている。いや、最初はただの偵察行動だったかもしれないが。不意打ちが成功する可能性はほぼなくなったと言う訳だ。」
「どうしたんですか? らしく無いですね。」
 俺がそう言うと、琵琶は急に笑顔になって、俺の背中をポンポンと叩いた。
「心配すんなよ。俺たちがいれば、死にやしねえ。」
 琵琶はドアのノブに手をかけると、廊下に出て、見送る俺に片手をヒラヒラ振りながら、階段を降りていってしまった。
「土色の剣士……」
 俺は仇の情報を少しでも得ようと、地下室へ歩き出す。
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