神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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聖の国

強敵登場

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 俺の凛月と奴のアルテマが広間の中心で重なり、火花を散らす。
 互いにバックステップで距離を取った。
「へっ今回は手加減せずとも戦えそうだな!! 」

   「アルテマ!! 最大奮起!! 」

 奴の目が赤く染まる。

 地面から引き上げられた鋭いレンガの破片が、俺へと向けられる。
 俺は左脚を思いっきり蹴飛ばすと、反時計回りに走り出した。
 俺の後ろを殺意のこもった鋭い泥細工が襲う。
「ハハハハ、まだまだこんなもんじゃねえぞ!! 」
 俺の目の前にドミニクが現れる。
「遅えでェェんだよ!! 」
---death spiralデス・スパイラル---
 手首を回転させながら、抉るような突き攻撃。
「ツッ。」
 俺は回転しがら、左側に避ける。
 その勢いを利用しながら、次に大技を放った。
---紅電レッド・スプライト---
 俺の凛月が、真紅の弧を描き、ドミニクの頬を掠った。
「ヒヒィ。」
 彼は俺の反撃を読んでいたようにニヤリと笑うと、バックステップで後退し、すれ違いざまに、自分の後ろに隠していた鋭利な鉱物を飛ばしてくる。
「グッ!! 」
 鋭いクリスタルの刃が俺の左腕を貫き、神経をえぐった。
 俺はチャクラムを右腕に持ち替えると、クリスタルに鎖を巻き付けて引っこ抜く。
 それから凛月を鞭のように振るい、奴と応戦する。
「左腕が逝ったみたいだな。」
「痛くも痒くもない。」
 そうだ。美奈を助けられるなら、これぐらいの傷はどうってこと無い。
「なんだ? その目は!! 」
「ちゃんと俺を見ろ!! 」
 神経が繋がったことを確認すると、左手に小太刀を引きつけ、再びドミニクへと突っ込んだ。
「邪魔だ!! どケェ。オメエの王様ごっこに付き合ってる暇なんかねえんだよ。口先だけのガキがぁ。」
---雷刃ライジン---
 迫り来る礫も、砂も、岩も、不思議と痛く無かった。
 俺は回避することも忘れ、捨て身でドミニクに襲いかかる。
「この化け物がっ!! お前ら見てえなイモリ野郎を見てると反吐が出るんだよぉ!! 」
---gravity regionグラビティ・レギオン---
 ドミニクはアルテマを地面に突き刺して、こう叫んだ。
 足が急に重くなり、思わず足を止めてしまう。
 対照的にドミニクは、摩擦定数の操作で、音速にも迫るスピードで俺に迫っていた。
---sonic bladeソニック・ブレード---
 加速され、ほぼ同時に繰り出された七連撃が、俺を八つ裂きにする。
 成形肉のようにバラバラになった俺であったが、意識を失うことは無く、ゼリーのように溶けると、すぐに元の姿へと戻ってしまった。
「ハハハ!! 兄に勝る弟など存在しない!! 」
 彼に憎しみが無いと言うのなら、それは嘘かもしれない。
 だが……
 今俺を支配しているのは、彼に対する憐みの感情だ。
「ドミニク、お前は王になりたいんじゃ無いな。」
 ドミニクの感情が嘲笑から憎悪に変わったのが分かった。
「お前に……お前に何が分かる? 」
「俺はカーミラ・ブレイクでは無い。桐生慎二だ。」
「ハハ…クックック…クハハハハ!! 」
「グランディル第一王子は俺だ!!カーミラじゃ無い。なのに、なぜ俺は父から愛されない? なぜ父はカーミラばかりを見る? 父の代償による老化は止まった。ならカーミラが代行者を継ぐ理由も無くなる。なら!! 父は考えるまでも無く俺を次期代行者にするべきだろ。」
「昔からそうだ。父はいつもカーミラばかり。そうだアイツはなんでもホイホイ言うことを聞くから。アイツは子供を道具としてしか見ていない。カーミラは道具として一番使いやすいから。だからアイツはカーミラのことが好きなんだ。」

 「人としてじゃ無く、道具としてな。」

 なぜか目が濡れている。戦闘中だと言うのに、視界を悪くするのは自殺行為だと言うのに。
「そこまで分かっていて、なぜお前は気づかない? 」
 ドミニクは、地面を震え上がらせ、激情した。
「お前もだな、お前も俺を憐れんでいる!! ただの人間の俺を!! 斬られれば死ぬ俺のことを!! 」
 俺は息を大きく吹き返した。

「そうだ……お前なんて、恨む価値すら無かったんだ。」


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す!! テメェだけは絶対に。」
 俺は静かにつぶやく。
---万華鏡ー影マンゲキョウ・カゲ---
 俺を構成する三つの力は、元ある通りの姿へと戻っていく。
 三者は、それぞれ契約者、呪術使い、鬼へと姿を変えて、ドミニクに迫る。
「止まれぇ!! 」
 再び重力に異変が起こる。
---反転イン・リバース---
 契約者が未知術を発動させ、発生させた磁場で、重力を無効化する。
---時空壊クロック・アウト---
 音速を超えた呪術使いが、ドミニクの懐に、渾身の右ストレートをぶち込む。
---貪食ー影ドンショク・カゲ---
 鬼発動した呪術は、鋭い大きな牙を生やした怪物となり、ドミニクを飲み込もうとする。
 ドミニクは世界に号した。世界に向けて、自分の存在をぶつけた。森羅万象を憎んだ。

---LAND REVERSE世界反転---
 
 ドミニクの中で拮抗していた重力エネルギーの均衡が崩れ、レーザーとなり、放出される。
 それが呪術使いと、鬼を跡形もなく消し去った。
 雷核にて唯一攻撃を防いだ契約者がドミニクの喉笛へと刃を向ける。
「キンッ。」
 が、それはドミニクのアルテマによって弾き返された。
「ハハハハッ!!俺の勝ちだぁ!! 」
 ---輪廻界雷リンネカイライ---
 弾き飛ばされた右手のチャクラムと、左手の小太刀は、フレミングの左手の法則により、元ある場所へ引き戻されると、そのまま彼の喉笛を斬り裂く。
「やったよ父さん、母さん。お休み。そしてさようなら。」
 俺は勝利の余韻に浸ることなく、美奈のいる場所へ急いだ。
「急がなきゃ待っている人がいる。」


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