神の壜(カミのフラスコ)

ぼっち・ちぇりー

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最終決戦

神器エクスカリバー

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 気がつくと俺は、暗い洞窟の中で倒れていた。
 身体に激痛が走る。
 苦しい。
 息が吸えない。
 俺は右手で胸を鷲掴みしようとする。
「心臓が…… 」
 ここは月だろうか?
 ソレにしても暑い。
 極東の夏のような蒸し暑さではなく、バーナーで炙られたかのような。
---慎二、ここは水星、もうすぐ表面温度が上昇する、すぐにここから離れて---
「身体が動かねえ。」
 呪いの再生では追いつかない。
 よく見ると、身体の一部が灰化ていた。
---さっきから身体を治癒させているんだけど---
 クラウソラスにも焦りの色が見えてきた。
---ねえ下僕---
---私たちを元の姿に戻しなさい---
 どういう意味かは俺にも理解できた。
「断るッ。」
---アンタ死ぬわよ---
「お前らを束ねたら、お前らじゃ無くなってしまうかもしれないぞ。」
---私たちは元々一つ---
---慎二!!大丈夫!! 私は私だから---
 アルテマもアウラも同調してきた。
---立つんじゃ慎二、まだ終わっておらんぞ---
---相棒!! 俺の力、貸してやる---
 影が俺の身体に入り込んでくる。
 俺の胸にポッカリ空いた穴が塞がる。
 そして俺は念じた。
---全てを一つにALL・IN・ONE---
 二振の聖剣はマグワリ、回転し、旋回した後、俺の手に戻ってくる。
---エクスカリバーC.C契約完了---
 パワーがみなぎってくるのが分かる。
 身体が輝いている。
 俺は自分の身体をマジマジと見た。
 そして、金色に輝く始まりの剣を。
---慎二!! 早くそこから出て---
 俺は熱源へと剣を振り翳す。
 日、水、地、風、これらの根源となるソレを、根源の剣ならどうにか出来る。
 自然とそう思えた。
 母なる陽の恵みを全て吸収する。
 身体が熱い。
 身体の奥深くから湧き上がるようなエネルギー。
 俺はなんとかソレを飲み込んだ。
 そして、月面で腕を組む彼女を見つけると、一瞬で距離を詰める。
 薙ぎ払う。
 手応えは無かった。
 草薙剣で受け止められた。
---トマホーク---
 円錐状の爆発物。
 もはや避ける必要性もなかった。
 身体が爆風を食う。
 砂煙の中から割田がフォトンソードで斬り込んでくる。
 エクスカリバーをシドに与えたのは彼女だ。
 なら彼女がこの能力を知らないはずもないだろう。
 最初から目眩しが目的だった。
 そこまででも読めていた。
 いや、剣が演算していた。
 エクスカリバーで、フォトンソードの構成物質を読み取る。
"プラズマ? "
 それがなんでもバターのように斬っちまう物質の正体であった。
 エクスカリバーでソレをかき消す。
---ニュークリア---
 彼女の左手から鉄の塊が落とされる。
 俺はソレをエクスカリバーで素早く斬った。
 今となれば心地よい衝撃、遅れていた音がやって来る。
 眩い光。
 彼女は素早く俺から離れ、火星の影に隠れている。
 俺は爆風を収縮させると、ソレを今度は発散させて、彼女の前まで疾走する。
 俺の大上段斬り下ろしが彼女の左腕を斬る。
 逃げる彼女の背中に十字を刻んでやる。
 一方的な殺戮を行うのはあまり良い気分ではなかった。
 といえば嘘だったかもしれない。
---ネオジウム---
 草薙剣から巨大な鉄の塊が現れる。
 そうだ。
 アレは磁力爆弾。
 核兵器をも超える次世代兵器。
 俺はその巨大な鉄の塊の周りを旋回すると、エクスカリバーでソレを斬った。
「認めないぞ。僕は。僕が負けるなんて。」
「いや、問題はそこじゃない。蝠岡の予知とやらが、当たることだ。」

「ここで道連れにしてやる。」

 俺が磁力爆弾を無力化させたころ、彼女の草薙剣は、剣の状態を残したまま、巨大化していた。
---hydra: enlarge八岐大蛇---
 巨大化した剣から、ほぼ同時に八つの斬撃が繰り出させる。
 これが彼女の出せる最大限の力。
---Knights of The Roundナイツ・オブ・ザ・ラウンド---
 火の剣、水の剣、地の剣、風の剣が、彼女の草薙剣を相殺する。
 光の剣、闇の剣、時の剣、アウラが、続く四撃を退ける。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
---造化三神---
 現れた創造神が、トライドラン、アルテマ、クラウソラスの攻撃を弾き返した。
 ジゲンキリが奴の心臓へと迫る。
---イージス---
 彼女の前に純白の盾が現れる。
 俺のジゲンキリは弾き返された。
 だが俺の攻撃はまだ終わっていない。
 ナイツ・オブ・ザ・ラウンド。
 十二本の剣たちが、同時に斬撃を繰り出す。
 
      十三連撃


 最後のエスクカリバーが割田の胸を貫いた。
「ぐがぁっ。」
 彼女は口から血を吐き、そして次に不気味な笑い声をあげると、俺の腕を掴んだ。
「捕まえた…ぞ。この害虫めっ!! 」
 俺は慌てて彼女から離れようとする。
 ものすごい力だ。
 ソレに肉が剣に食い込んで抜けない。
「お前もここで終わりだッ。」
---ガハハハハハ---

---ガハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ---

 俺から影が切り離される。
 鬼影だ。
 彼が俺の身体から離れ、俺とエクスカリバーを突き飛ばした。
「鬼影っ!! 」
---お前はまだ死ぬべきじゃあ無い---
「待てよ、戻ってこい!! まだうまいもん食べさせてやってないだろうが!! 」
---お前と紡ぐ物語、さいっこうだったぜ。まるで退屈しなかったなぁ---
「お前に未練は無いかもしれないが、俺にはある。勝手に行くな鬼影。」
---いや、これは俺とお前との契約だ慎二---

    ---死ぬなnever die---

 鬼影は、割田ともに爆発し、虚空へと消えていった。
「鬼影…」
 俺は膝から崩れ落ちた。
「パチ パチ パチ パチ。」
 誰かが俺に対して称賛を送る。
「おめでとう。君は神に勝った。」
 俺は誰かも分からず、その男の胸ぐらを掴んだ。
「お前だな。こんな…こんなことをしたのは。」
「俺たちを散々苦しめて、何が楽しいんだお前は!! 」
 黒服に黒ぶちメガネの男だった。
「まず、君たちに辛い思いをさせてしまったことは謝罪しよう。」
 彼は俺の背中をポンポンと叩く。
 俺はソレで、ハッと我にかえり、彼を離した。
「私はね、能力者と無能力者が分かち合い、肩を取り合う世界が作りたかった。」
「だからこの世界を創った。そして君たちが生まれた。」
「私の世界は、無能力者が能力者を虐げる形で、ソレが為されている。」
「歪だと思わないか? 能力者を抑え込むことで、人々は平等を享受しているんだ。いや、そうしなければ、人々は平等にはなれなかった。」
 俺はソレに相槌を打つ。
「能力者を無能力者が虐げる。どこかで聞いた話だな。」
「そうだ、君たちの世界も、また。」
「シド・ブレイクは世界に調和をもたらすはずだった。その剣で、あの能力で。私の幼稚な思想を否定するために。」
「でも分かってくれ。私はただ、偏屈な社会学者たちに証明したかったんだ。思想、能力が違えど、人々は手を取ることが出来るって。だから神族とソレ以外の人間を分けた。」
「結局、虐げられていた人間も、力を持つと、その痛みを忘れて、今度は自分が同じことを始めたわけか。」
「滑稽だな人間ってのは。」
 俺がそう吐き捨てると、黒服は首を横に振った。
「いや、ソレは違うな。」
「君はカーミラの存在を認めた。カーミラも君の存在を認めた。」
「この世界で、私は間違っていなかった。異なる思想でも、異なる人種でも、異なる能力でも、君たちは互いに互いを認め合った。」
 彼が右手を翳すと、そこに草薙剣が降りてくる。
「リワードだ。受け取り給え。」
 俺は左手でソレをがっちり受け取る。
 剣は俺を否定しなかった。
「ロックは解いてある。当然だ。ソレは元々私が友人に頼んで打ってもらった最高の二振り。その剣をどうするかは私が決められるんだ。」
 彼は振り返ると、階段を降り始めた。
「おい待て!! まだ聞きたいことがある。」
「時間だ。迎えが来た。」
「君も早く自分の世界に戻ると良い。」
「なんだよ自分の世界って。お前は何者なんだ? 」

      「私は蝠岡蝙。」

「みんなは私のことをバットマンと呼んでいる。」
「知りたいことがあるなら、こっち平等社会に来ると良い。」
「どこだよこっちって? お前らの国か? 神の国か? 」
 彼はまた首を横に振った。
「この世界に神の世界なんて無いよ。魔法使いになった今なら言える。そんなものは無いんだ。」
「ミシマッシュのみんなによろしく。」
 世界が崩れていく。
 俺は地上に落とされた。
 両手に二振の剣を持って。
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