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ファイル:EX オーバーロード
ビック・ファーザー
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更に螺旋階段を上がっていく。
「何段あるんですか? この階段は。」
私が脚を踏み出すたびに、地上との距離は離れていく。
それだけが私への救いだった。
頑張れ私。
本堂家の能力を受け継ぐモノ。
犯罪者を取り締まる。それが私たち本堂の仕事。
どこまでも終わらないスパイラルの先に、踊り場らしき場所に辿り着いた。
エレベーターは停止している。
きっと彼自身が止めたのだ。
踊り場の奥には……
「ビック・ファーザー!! 」
私は罠の可能性なんて忘れて、制御室へと飛び込んだ。
「こんにちは。本堂の小娘。」
彼は至って冷静だった。
私は舐められている。
身長が彼より低いから?
女だから?
なんだか無性に腹が立った。
「おおっと。怖い過去をしないでくれたまえ。」
彼は焦らすように、ゆっくりと腰の小太刀を引き抜いた。
「部下には立派な日本刀をと言ったんだけどね。バカにされたのかと思っていたが。思いの他、優秀な部下だったらしい。」
彼は制御室の中で、刀をブンブンと振って見せる。
「気を使う必要はない。」
「私を舐めているんですか? 」
そのオモチャのような武器で私を脅せると思われていることに腹が立った。
北条さんを倒したこの私に。
「イキがるなよ小娘。お前の能力は能力者には天敵となりゆるモノだがッ。」
私の左側に、光る刃が突きつけられる。
シュッという軽い音が左耳を逆撫でし、遅れて制御室の壁に小太刀が突き立てられたことを理解する。
「大人しく私の演説を聞いていろ。そうすれば命だけは助けてやグウッ。貴様っ!! 」
彼は右の頬を押させると、力任せに小太刀を引き抜かんとする。
「このっ!! このっ!! 」
やっとの思いで小太刀を引き抜くと、彼は再び不敵に笑って見せた。
「どうやら自分の立場を理解していないようだね。」
「自分の立場を理解していないのは貴方の方じゃないんですか? 電波法違反ならまだしも、国家転覆罪なんて。」
「国家転覆はお前たちの方だろう。私たちの世界は安定していた。」
「貴方のその安定とは、他者の人権を剥奪して出来た偽りの世界です。」
「なーにも知らない小娘め。お前は能力者たちが起こしたあの反乱を知らない。大兄弟助のことも。世界が乱れることに憎しみなんていう人の感情なんて介入し得ないさ。」
「力あるモノを拘束しない限り、再び戦乱は起こりゆる。だから私はもう一度あの場所に戻るよ。」
呆れた。
「そのために能力者の力を使い。社会に混乱を招くんですよね。」
「力を使う? 私はただ人々に問うだけだよ。今の能力者の在り方についてね。彼らが勝手に暴れるだけだ。」
「能力者の本性というモノが、本当にお前の信じるモノなのなら、なぜオーバーロードが現れた時、能力者の犯罪率が急激に上昇した? 正体見えたり。と言った感じかな? 」
この人は、自分の都合の良いように現実を歪曲しているだけだ。
もう話す気にもなれなかった。
「だったら演説、すれば良いじゃないですか。」
「君も私の意見に賛同してくれて嬉しいよ。これも私のカリスマ性の賜物というわけか。」
彼は愚かにもマイクを手に取ると、平等社会人全体に向けて演説を開始した。
「諸君。私、ビック・ファーザーは帰ってきた。オーバーロードは神の遣いだ。君たち能力者を救済するための。君たちの力を新政府に見せつけてやれ。誰が一番偉いかということをな。」
一瞬の沈黙の間……平等社会じゅうから、罵詈雑言が上がった。
能力者だけではない。
無能力者からも。
「失せろ。俺たちを虐げていたのは、俺たちに枷をつけて奴隷みたいに扱っていたのはお前らだろう。何が上位種だ。今更、虫が良すぎるんだよ。」
「リベリオンの反乱が起きた時、お前は何をしていた? 俺たちを置いて、一人で逃げただろう?全ての元凶が、自分のやって来たことに責任を持たずに。」
「俺知ってるぞ。コイツが能力者を使って国家転覆を図っていたのが。結局信念なんてどうでも良いんだよ。」
「権力の奴隷め。」
「二度とその卑しい顔を俺たちに見せるな。」
「公安は何をしている。早く奴を処刑しろ。」
「国家の奸め。もうお前のことは信用しない。」
私はポンと手を叩いた。
「凄く良いこと思いつきました。」
ビック・ファーザーが額に汗をかいて、焦っている。
今となって自分の人望の無さに驚いているのか?
「クソ、なぜ私は。こんなことに。私には何が足りない? 」
「全部ですよ。」
私は崩れ落ちる彼に手錠をはめた。
「貴方には、これからの平等社会への人柱になってもらいます。」
「私を、処刑するつもりか? 」
「処刑? 私たちはそんな野蛮なことなんてしませんよ。貴方が世界を調律するんです。願ったり叶ったりでしょ? 」
「クソォぉおぁぉ。どいつもコイツも私の思想を理解できないバカばかりだ。そうだ。こんな低脳な奴ら。クソォクソォ。本堂。奴らに何をふっかけた。権力の犬め。そうだ。あの北条という男が悪いのだ。あの時死刑にしておかなかったから。アレから全てが狂い始めた。」
「そう思うのなら、いつまでもそうやって喚いておけば良いでしょ。」
コレが、元総統、ビック・ファーザーの姿。
あまりにも惨めだった。
公安車両のサイレンの音だけが、平等社会に響いている。
「何段あるんですか? この階段は。」
私が脚を踏み出すたびに、地上との距離は離れていく。
それだけが私への救いだった。
頑張れ私。
本堂家の能力を受け継ぐモノ。
犯罪者を取り締まる。それが私たち本堂の仕事。
どこまでも終わらないスパイラルの先に、踊り場らしき場所に辿り着いた。
エレベーターは停止している。
きっと彼自身が止めたのだ。
踊り場の奥には……
「ビック・ファーザー!! 」
私は罠の可能性なんて忘れて、制御室へと飛び込んだ。
「こんにちは。本堂の小娘。」
彼は至って冷静だった。
私は舐められている。
身長が彼より低いから?
女だから?
なんだか無性に腹が立った。
「おおっと。怖い過去をしないでくれたまえ。」
彼は焦らすように、ゆっくりと腰の小太刀を引き抜いた。
「部下には立派な日本刀をと言ったんだけどね。バカにされたのかと思っていたが。思いの他、優秀な部下だったらしい。」
彼は制御室の中で、刀をブンブンと振って見せる。
「気を使う必要はない。」
「私を舐めているんですか? 」
そのオモチャのような武器で私を脅せると思われていることに腹が立った。
北条さんを倒したこの私に。
「イキがるなよ小娘。お前の能力は能力者には天敵となりゆるモノだがッ。」
私の左側に、光る刃が突きつけられる。
シュッという軽い音が左耳を逆撫でし、遅れて制御室の壁に小太刀が突き立てられたことを理解する。
「大人しく私の演説を聞いていろ。そうすれば命だけは助けてやグウッ。貴様っ!! 」
彼は右の頬を押させると、力任せに小太刀を引き抜かんとする。
「このっ!! このっ!! 」
やっとの思いで小太刀を引き抜くと、彼は再び不敵に笑って見せた。
「どうやら自分の立場を理解していないようだね。」
「自分の立場を理解していないのは貴方の方じゃないんですか? 電波法違反ならまだしも、国家転覆罪なんて。」
「国家転覆はお前たちの方だろう。私たちの世界は安定していた。」
「貴方のその安定とは、他者の人権を剥奪して出来た偽りの世界です。」
「なーにも知らない小娘め。お前は能力者たちが起こしたあの反乱を知らない。大兄弟助のことも。世界が乱れることに憎しみなんていう人の感情なんて介入し得ないさ。」
「力あるモノを拘束しない限り、再び戦乱は起こりゆる。だから私はもう一度あの場所に戻るよ。」
呆れた。
「そのために能力者の力を使い。社会に混乱を招くんですよね。」
「力を使う? 私はただ人々に問うだけだよ。今の能力者の在り方についてね。彼らが勝手に暴れるだけだ。」
「能力者の本性というモノが、本当にお前の信じるモノなのなら、なぜオーバーロードが現れた時、能力者の犯罪率が急激に上昇した? 正体見えたり。と言った感じかな? 」
この人は、自分の都合の良いように現実を歪曲しているだけだ。
もう話す気にもなれなかった。
「だったら演説、すれば良いじゃないですか。」
「君も私の意見に賛同してくれて嬉しいよ。これも私のカリスマ性の賜物というわけか。」
彼は愚かにもマイクを手に取ると、平等社会人全体に向けて演説を開始した。
「諸君。私、ビック・ファーザーは帰ってきた。オーバーロードは神の遣いだ。君たち能力者を救済するための。君たちの力を新政府に見せつけてやれ。誰が一番偉いかということをな。」
一瞬の沈黙の間……平等社会じゅうから、罵詈雑言が上がった。
能力者だけではない。
無能力者からも。
「失せろ。俺たちを虐げていたのは、俺たちに枷をつけて奴隷みたいに扱っていたのはお前らだろう。何が上位種だ。今更、虫が良すぎるんだよ。」
「リベリオンの反乱が起きた時、お前は何をしていた? 俺たちを置いて、一人で逃げただろう?全ての元凶が、自分のやって来たことに責任を持たずに。」
「俺知ってるぞ。コイツが能力者を使って国家転覆を図っていたのが。結局信念なんてどうでも良いんだよ。」
「権力の奴隷め。」
「二度とその卑しい顔を俺たちに見せるな。」
「公安は何をしている。早く奴を処刑しろ。」
「国家の奸め。もうお前のことは信用しない。」
私はポンと手を叩いた。
「凄く良いこと思いつきました。」
ビック・ファーザーが額に汗をかいて、焦っている。
今となって自分の人望の無さに驚いているのか?
「クソ、なぜ私は。こんなことに。私には何が足りない? 」
「全部ですよ。」
私は崩れ落ちる彼に手錠をはめた。
「貴方には、これからの平等社会への人柱になってもらいます。」
「私を、処刑するつもりか? 」
「処刑? 私たちはそんな野蛮なことなんてしませんよ。貴方が世界を調律するんです。願ったり叶ったりでしょ? 」
「クソォぉおぁぉ。どいつもコイツも私の思想を理解できないバカばかりだ。そうだ。こんな低脳な奴ら。クソォクソォ。本堂。奴らに何をふっかけた。権力の犬め。そうだ。あの北条という男が悪いのだ。あの時死刑にしておかなかったから。アレから全てが狂い始めた。」
「そう思うのなら、いつまでもそうやって喚いておけば良いでしょ。」
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