上 下
32 / 35

31話 【臆病な私】

しおりを挟む
『少しは参考になったかな?』


『R.N "恋するウサギちゃん♡"』


『そして世界中で叶わぬ恋に』


『お悩みの方』


校門をくぐって

駐輪場に自転車を止める。

おっきな汗の粒が額から流れて

つーっと顎まで伸びた。


『たぶん心は迷っていて』


『壊れかけたピンボールみたいで』


『ルールがいつまでも曖昧なまま』


私は校舎に入って階段を駆け上がる。

すれ違う友達や先生は

何かを言ってるんだけど

その全部が耳に入ってこなかった。

だって

今の私にはキミしか見えてないから。


『キミが夢を願うから』


『今も夢は夢のまま』


『大好きだから踏み出せない』

ずっと踏み出せなかった。

『大好きだから臆病になる』

キミのこと大好きだから

臆病になってたんだ。


『淡い恋の真ん中を』


『泳ぎきってみせてよ』


『可愛すぎるハートを』


『見守ってるミュージック・アワー』


息を切らしながらも


私は屋上のプールに続くドアに


手を掛けた。
しおりを挟む

処理中です...