二重NTR‐TRAP

下垣

文字の大きさ
19 / 37

第19話 運命の期末試験

 期末試験までのテスト勉強期間中。仁志は郁人の家で勉強をしていた。

「いや、悪いな。飯塚。賭けをしているのに俺の勉強を見てもらって」

 仁志と郁人は賭けをしていた。仁志が勝てば、郁人はさなえの下着を上下見せる約束をしている。そして、郁人が勝てば仁志は女装を強要されてしまう。

 そんなお互いに負けられない戦いの中で、郁人は仁志の勉強を見ていたのだ。

「まあね。ここはどうしてもフェアにやらないとね」

 郁人が仁志の勉強の面倒を見なければ郁人が余裕で勝てる勝負であった。

 しかし、郁人は性格上そういうことができない。きちんと公平な勝負をしたい。そういうフェアプレイの精神を持ち合わせているのだ。

「なあ、郁人。ここの英文なんだけどさ。どうしてここにこの単語が入るんだ?」

「ああ、それはね、この単語を入れないと意味が変わっちゃうんだ。例えば――」

 こうして、真面目に勉強をして、その日は解散をした。

 仁志としては、さなえと一緒に勉強できることを期待していたのであるが、郁人が女装をしなくてガッカリしてしまう。

「ふう……」

 仁志が帰った後、郁人はクローゼットを開ける。新しい女装用の衣装。まだ仁志にも見せていないものを見てため息をつく。

「早く風見君に見せたいな」

 郁人にとって勝負がどっちに転んでも良かった。仁志を女装させるのも楽しみだし、仁志にかわいい衣装を見てもらうのも良かった。

 この勝負は最初から郁人にとっては特しかなかったのだ。

「まあ、でも……僕の女装姿を見るためにがんばってくれる風見君。いいなあ……本当にそういうところが……」

 郁人は目を細めながらクローゼットを閉じた。そして、今日の範囲の復習をもう1度するのであった。



 そして、期末試験が始まった。仁志と郁人はお互いに緊張してピリピリとした空気を醸し出していた。

「飯塚。俺は絶対に負けないぞ」

「僕だって」

 郁人としては勝負はどっちに転んでも良いけれども、どうせやるなら勝ちたい。そういう想いで本気で臨んでいる。

 周りの生徒が必死になって勉強をしている中、勉強なんて無縁と言わんばかりに遊んでいる生徒も何人かいた。

 その中の1人希子もいる。希子はネイルを塗っていて、まるで勉強をする気がない。

 今まで飾り気がなかった希子の爪も、いまでは校則違反にならないような装飾が施されている。

 本音を言えば、希子だってもっとゴテゴテとしたネイルにしてみたい気持ちはあるが、そこはまだ校則を守るという理性が残っているのでガマンしている。

 そして、試験が始まり仁志と郁人は勉強の成果を発揮する。

 受験勉強以外で本気を出した経験がない仁志。ここまで期末試験に真剣に打ち込んだのは初めてである。

 ガリガリと解答用紙に答えを書き込んでいく。問題が解けるのが楽しい。今までの勉強の成果が目に見える形で反映されていくのは努力が報われている気がして心地よかった。

 だが、それは郁人も同じことである。仁志以上のスピードでガリガリと問題を解いていく。問題を見た瞬間に、答えが頭の中に浮かんでいく。

 仁志の影響で郁人もまた勉強を今まで以上にがんばろうと思えた。

 お互いにいい影響を及ぼしあって、そしてその成果が出る。



「よーし、それじゃあ一気に見せるぞ」

「うん」

「いっせーので!」

 仁志の合図でお互いのテストの点数を公開する。その合計点は……

「僕の勝ちだね」

「くぅ……後1歩及ばなかったか!」

 仁志は悔しそうに唇をかみしめた。ここで仁志は女装をすることが決定してしまった。

「わかった。もう俺が負けた時の条件については諦める。勝負は勝負だ!」

「うん。潔くていいね」

 仁志のその漢気に郁人は感心して惚れ直す勢いだった。しかし――

「俺が勝った時の条件。一瞬だけでいいから、それを見せてくれないか?」

「思ったより潔くないね」

 負けは受け入れるが、それはそれで勝った時の報酬は欲しい。なんとも身勝手なルール変更である。

「だ、だって。俺が勝っている教科もあるぞ。世界史は俺の方が点高いし」

「勝ってるのは世界史だけね」

「だから、世界史の分だけ。な? 世界史の分だけ見せてくれ」

「えーどうしよっかな~」

 郁人と仁志がそんなイチャイチャとしたやり取りをしている。郁人も求められてまんざらでもないが、条件をまける気は今のところはない。

 仁志と郁人がお互いに高得点を取って喜びあっているところ、希子の方では。

「ねえ、希子。その点っていくらなんでもやばくない?」

 希子の友人が希子の落ちぶれた点数を見て心配をしている。

「え? そうかな。赤点ラインは回避しているし。別に補修受けなくていいから良くない?」

 希子は自分の点数が下がったことをまるで他人事のように捉えていた。

「そんなんで親に怒られないの?」

「別に……怒られるだけで済むならそれでいいってか。まあ、補修がなければ遊ぶ時間は減らないわけだし。怒られる時間も勉強時間に比べたら短いでしょ? こっちの方がタイパが良いって」

 希子も平均くらいの学力はあった。だが、それも一瞬にして落ちぶれてしまい、平均に満たない学力になってしまう。

 希子と同程度の学力だった友人も、希子のことを心配している。

「ま、まあ。希子が良いって言うなら良いけど……なんか最近の希子おかしくない?」

「別に? なにがおかしいの? むしろ最近調子よくてね。この前もナンパされちゃってね」

 希子は自分がナンパされた時の詳細なエピソードを語っていった。

 友人はそれに対して若干引いたような感じで聞いていて、希子との今後の付き合いを考え直そうとすら思い始めていた。



 期末試験も終わり、仁志はしばらく休んでいたコンビニバイトを再開した。

「風見君。この商品の陳列お願い」

「はーい」

 店長に言われて商品の陳列を始める。その商品は衣類の陳列だった。まずは男性用の下着を棚に並べる。靴下、シャツ、パンツなど。続いて女性用のストッキング等の下着も陳列することになるのだが、それを見て仁志は物思いにふけってしまう。

 今まで意識をしてこなかったものである。自分とは無縁なもの。絶対に着ることがないと思っていたものも、これから着なければならないかもしれない。

 そう思うとなんだか不思議な気持ちになってくる。自分の中でなにか新しい扉が開くような、世界が広がっていくような感覚。

 衣類の陳列が終わったら、次は化粧品。これも仁志が今まで興味がなかったものである。最近では男性でもメイクをすることもあるが、それは男性用のメイクである。

 でも、仁志はこれから郁人に女性用のメイクをさせられるかもしれない。そう思うとなんだか自分が自分でなくなる気がした。

 自分のアイデンティティはどこにあるのだろうか。自分は間違いなく男であるが、女の恰好をしたらその男のアイデンティティは崩壊するのだろうか。

 まだ女装を経験してない仁志にとっては未知の領域であり、考えていても答えの出ないことに不安を感じてしまう。

 商品の陳列を終えた仁志はレジへと戻り、再び接客の仕事に戻る。仁志が並べた女性用の化粧品やストッキングを買っていく女性がいた。しかし、当然のことながら男性でそれを買っていくような人物は誰1人として存在しなかった。

 自分はもしかして、これからとんでもないことをさせられるんじゃないかと仁志は思ってしまう。

 次に郁人の家に行く日。そこで仁志の人生は大きく変わってしまうかもしれない。あれほど楽しみにしていた郁人の家が、今では蛇の腹の中に見えてしまうのであった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

【短編集】こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。