二重NTR‐TRAP

下垣

文字の大きさ
25 / 37

第25話 知り合いと遭遇

しおりを挟む
「あの……! やめてください。わたしたち2人でも十分に楽しんでいるんで」

 さなえが2人のナンパ男に対して迷惑そうに眉をひそめながらきっぱりと拒絶する。

 しかし、ナンパ男たちはこれで簡単に引き下がらなかった。

「えー。いいじゃん。ね? なにか欲しいものがあったら奢るからさ」

「そうそう。最近の祭りの出店って結構値上がりして高いでしょ? 君たちのためなら、お兄さんたち全然余裕で払えるんだけどなあ」

 今度は金をチラつかせて押していく作戦である。しかし、2人共バイトをしているし、そこまでお金に困っているわけでもない。

「とにかく! わたしたちは2人でこのお祭りを楽しみに来たんですから部外者は邪魔しないでください」

 しゃべれないひとみの代わりにさなえが一生懸命に断ろうとする。ここでナンパ男たちは作戦を変えることにした。

 さなえには強く拒絶されているけれど、ひとみはまだなにも言っていない。こっちなら押せば行ける。ひとみから順番に落としてさなえをなし崩し的に誘おうという作戦に出ることにした。

「ふーん。そっか。でも、こっちのお嬢さんはどうかな? へっへっへ」

 サーファー風の男がひとみの手首をぐっと掴んだ。

「ッ!」

 ひとみは表情に不安な感情が現れる。聞こえない程の小声で悲鳴が漏れる。ひとみの手を握るサーファー風の男の力が予想外に強い。

 自分は慣れない浴衣姿だし、喧嘩に自信があるわけでもない。このままだとやられる。そう思ったひとしは手を振りほどくこともできずに固まってしまう。

「ほら。いやがってない。普通嫌なら振りほどくよね? ふひひ」

 ラッパー風の男がひとみの背後に回る。そして、尻に手を伸ばしかけたその時だった。

 ガツンとラッパー風の男の股間に激痛が走った。この場の4人全員が知っている痛みである金玉の痛み。

「お、おぉおごおお……」

 ラッパー風の男が股間を抑えてその場にうずくまってしまう。脚を上げていたさなえがゆっくりとそれを地面へと戻す。

「汚い手で触ろうとするな!」

 さなえが完全に凛々しい男声で啖呵を切る。サーファー風の男はさなえの気迫に押されて、ひとみの手首を握っている力を弱めてしまう。

「え、あ? い、今の声何!?」

 あまりにも男そのもののさなえの声にサーファー風の男は完全に脳がバグって混乱してしまっている。

 ひとみはこの隙を見逃さなかった。一瞬の隙を突いてサーファー風の男の股間を思い切り蹴り上げた。

「とりゃ!」

「がふっ……!」

 サーファー風の男はその場で情けなくぴょんぴょんとジャンプをして衆人環視の元にさらされる。

「逃げよう!」

 さなえがひとみの手を繋いでその場からそそくさと立ち去っていく。

 2人は人混みを使ってナンパ男たちを撒こうとした。それは成功して、ナンパ男たちから逃れることに成功する。

「はぁはぁ……あ、危なかったね」

「ああ。それにしてもさなえちゃん、結構大胆なことするんだね」

 ひとみはさなえの行動に驚いた。ひとみの知っているさなえはあまり暴力とかそういうのは振るわない性格だと思っていた。

「ご、ごめん。そのひいちゃったよね……あの男がひとみちゃんのお尻を触ろうとしたから反射的に蹴っちゃった」

「そうだったんだ……ありがとう」

 自分を守るために奮闘してくれたさなえのことを嫌いになれるわけがなかった。

「結構離れたところに来ちゃったね」

「逃げるのに夢中であまり人が少ないところに来ちゃったかも」

 ひとみとさなえは人通りが多いところから外れたところに来ていた。祭り会場から少しずれたところにある公園の林の中。周囲には人があまりいない。でも、どこからかひそひそとした話し声が聞こえてくる。

「ねえ。誰か来たらどうするの?」

「大丈夫だってバレやしないって」

「じゃあ良いけど……」

 どこかで聞き覚えのある男女の声が聞こえてくる。

「近くに誰かいるみたい」

 さなえがそう言うとひとみの顔が険しくなってくる。

「この声って希子の声じゃないのか?」

「え? 佐倉さんの?」

 2人の間に緊張が走る。この近くに希子がいるとしたのなら見つかるのはまずい。女装している現状では知り合いは極力見つからない方が良い。

 特に2人にとって希子は元カノである。見知った仲であるために、よりバレやすいと思ってしまう。

 2人は顔を見合わせてこの場を立ち去ろうとした。

 パキッ……

「あ」

 ひとみが小枝を踏んでしまう。その音は静寂の林の中を響いてしまう。

「……! 今の音なに!?」

「やべ、誰かいるのかもしれねえ」

 なにやら衣擦れの音が聞こえる。その音がやんだと思ったら次に聞こえてくるのは足音である。その足音がすごい勢いで近づいてくる。

 ここにいる2人はこの場から急いで立ち去ろうとしている。つまり、ひとみとさなえと出くわす確率が高い。

「ひとみちゃん。急いで逃げよう」

「で、でも……こんな歩きにくい靴じゃ……」

 慣れないサンダル。それも女物としてデザインされていて走りづらい。それにさきほど走って影響で体力も消耗していつものペースで走れない。

 そんな不幸が重なって、林のしげみから出てくる男女に見つかった。

 ひとみの予想通り、1人は希子だった。そして、もう1人は希子を狙っていた同じクラスのチャラい男子だった。

 2人の衣服は少し乱れている。まるで慌てて衣服を着たかのようである。

 まずい。ひとみとさなえの間に緊張が走る。そして、チャラ男が希子の手を掴んだ。

「行こうぜ」

「え、あ……ちょ、ちょっと待って!」

 希子はなにかに気づいたように、ひとみとさなえの方をじーっと見ていた。しかし、チャラ男に強引に引っ張られて祭り会場の方に向かって行った。

 希子の姿が見えなくなった時、さなえが口を開いた。

「あの2人。ここでなにをしようとしていんただろう」

「決まっているだろ。まあ、邪魔して少し悪かったかな」

 元カノがどこで誰と何をしてようとこの2人にはもう関係のないことであった。

 でも、希子の化粧も学校以上に濃いものであったことに、2人は少し心配な気持ちがあった。

 学校でも校則違反ギリギリの化粧で来ている希子。夏休みでそういう制約がない環境だと必然的に化粧が濃くなってしまうのは考えなくてもわかることだ。

 しかし、実際にそれを目の当たりにすると話が変わってくる。

「佐倉さん変わったね」

「ああ、なにがあいつをあんなに変えてしまったんだ」

 かつては好きだった相手が変わっていく様を見ていくのは、未練がないとはいえ居たたまれない気持ちになってくる。

 かと言って、自分たちにはもうどうすることもできない。

 恋人関係でもないのに、他人の人生に口出しできる権利というか義理もない。

 ひとみとさなえの2人はしばらく林で休んだ後、再び祭り会場へと戻っていくのであった。

 チョコバナナを手にしたさなえと、リンゴ飴を手にしたひとみ。

 それぞれが好きなものを買い、それを楽しんでいる。

 祭りの出店の料金はナンパ男たちが言っていた通りに高いけれど、それでもどうしても買いたくなってしまうのが人情というものである。

 しかし、バイトをしている2人だからそこまで抵抗なく買えるけれど、そうでない学生にとってはやはり手が出しにくい金額であることには間違いない。

 ドンドンと和太鼓の音が聞こえる。地域の小学生たちが叩いている。祭りを盛り上げる一旦となり、聞いていて心地が良いものであった。

「そろそろ花火が打ちあがる時間だね」

 さなえが時計を確認しながら言った。

「どうする? 近くで見る? それとも遠くから?」

「近くだと人が多いし、なんか知り合いにバレそうだから遠くが良いかな」

 ひとみがさなえにそっと耳打ちをした。

「うん。そうだね。それじゃあ、ちょっと会場を離れようか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

男の娘と暮らす

守 秀斗
BL
ある日、会社から帰ると男の娘がアパートの前に寝てた。そして、そのまま、一緒に暮らすことになってしまう。でも、俺はその趣味はないし、あっても関係ないんだよなあ。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

処理中です...