女神同棲 〜転生に失敗しましたが、美人で清楚な”女神様を拾った”ので、甘々な新築生活を目指します!〜

杜田夕都

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第13話 女神様の宝物

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 俺たちは池のほとりに腰掛けて、缶ジュース開け方講座を開催している。

「では次は、そのままつまみを優しく上に引っ張ってください」
「えいっ」

 カチッ

「できました! セラフィーラやりました!」

 セラフィーラさんの成長が眩しい。
 親バカのような心境になる俺。
 てか、一人称どうした。

「では、いただきます」

 セラフィーラさんが生まれて初めて、水以外を飲む姿を固唾を飲んで見守る。
 
「まぁ! まろやかです! 甘い粒も入っています! これはなんですか?」

 セラフィーラさんの表情がぱーっと明るくなった。

「それがコーンですね」
「飲み物に固形物を入れてしまうとは驚きました。この缶のつまみの仕組みもそうですが、人間の発想力は計り知れません」
「実は缶との相性はそんなに良くなくて、よく底に残っちゃいますけどね。でも、缶の真ん中を凹ませると、流体力学の関係で粒が引っかからずに飲め……」

 セラフィーラさんは眉を顰め、たからものを包む手を強張らせた。

「るらしいですけど、セラフィーラさんにとって初めての記念すべき缶なので、凹ませずにそのまま飲んだ方がいいですねぇ~~」

 にこやかな表情に戻った。わかりやすいぞこの人。

「はやとさんもいかがですか?」
「いやっ俺はいいですよ」
「おいしいですよ?」

 唐突な間接キスチャンスの到来に動揺を隠せない。本人に自覚はないだろうが、恐ろしいカウンター攻撃だ。

「そこまで言うなら。で、では、いだだきます」

 セラフィーラさんと別の飲み口を、と思ったが缶の仕組み上それは不可能だったので、勇気を振り絞ってそのまま口をつけた。

「どうですか?」
「……熱いです」
「そうですね。あたたか~いコーンポタージュなので、ポカポカしますね」

 味を感じる余裕があるわけもなく、ズレた返答をしてしまったが、都合よく解釈してもらえたらしい。
 体が沸騰しそうだった。

「ところで、図書館はどうでした?」

 わざとらしく話を逸らす。

「近くの中央図書館へ行ってまいりました。初めて見る下界の書物が沢山ありました!」

 うん、聞き方が悪かった。

「戸籍の取得方法は見つかりましたか?」
「申し訳ございません。下界の仕組みを理解するため、憲法、民法、刑法と呼ばれる物について調べましたが、残念ながら見つかりませんでした。戸籍の取得には母子関係を証明する必要があるのですが、転生後のはやとさんにはご両親がいらっしゃらないので……」

 さすがに1日では見つからなかったか。
 現状、新たに誰かから生まれたわけではない俺の出生を保証することはできない。
 一度死亡した水谷颯人の戸籍を使えるわけもないだろうし、八方塞がりだ。

「法の抜け道はなさそうですよね……」

 我ながら偉い人に怒られそうなことを言っていると思った。

「分析スキルがあればあわよくば。あいにく、私は分析スキルを持ち合わせておりません」

 俺も持っていない。
 生物専用の鑑定スキルの【賢者の目】ではなく、分析スキルを選んでいればこんなことには……。

「セラフィーラさんはどんなスキルを所持しているんですか?」
「私、女神ですので祝福系を複数所持しております。一つずつ説明してもよいのですが、せっかくですから練習として【賢者の目】を使ってみてはいかがでしょう?」
「いいですね! ちょうど使い方をマスターしたかったところです」

 山田さんに一回使ったきりでろくに使い方を理解していない。使いすぎは負担がかかるとのことで忌避していた。

「では、知りたい情報を少しずつ思い浮かべて、私を凝視してください」

 セラフィーラさんとじっと見つめ合う。ちょっと照れる。

 しばらくすると前のように視界に文字が浮かび上がってきた。

========================
 名前:セラフィーラ
 レベル:94
 武器:なし
 所持物:χιτών、聖遺物、箱
 職業:女神
========================

「出てきました! Lvが94ですけど、セラフィーラさんって190歳ですよね?」
「なるほどです。レベルがある者は年齢ではなく、異世界準拠で正しくレベルが表示されるようですね」

 文字化けしていたり、缶を箱と言ったりと、精度は相変わらずのようだ。

「次は基礎ステータスを見てみてください」

================
【基礎ステータス】
 生命力 A
 攻撃力 A
 防御力 S
 魔力量 S
 魔力放出 S
 状態異常耐性 A
 幸運度 S
================

「ステータスも見れました! それぞれランクがあるんですね」
「はい、S、A、B、C、 D、Eの6段階評価となります。基礎ステータスは水晶等でも鑑定可能です」

 SとAしかないから相当な高ステータスと窺える。
 やっぱり、幸運値はおかしかった。もうジャンケンを挑むのはやめにしよう。

 次は、いよいよスキルを見てみる。

================
【スキル】

 【神性 Lv5】 【拾う神 Lv5】

 なるほど、神性スキルというものがあるのか。
 あぁ、セラフィーラさんは、捨てる神じゃなくて拾う方の神なんですね。
 この調子で……。

 【祈り Lv5】 【神の恩寵 Lv5】 【魔力操作 Lv5】 【神の奇跡 Lv5】 【耐熱 Lv2】  

   【耐寒 Lv2】 【テレパシー Lv5】  【美白 Lv5】


 スキルの全鑑定を試みた瞬間、決壊したダムの水のように情報が流れ込んできた。


 【眼光紙背 Lv5】 【天命】  【日進月歩 Lv5】 【集中 Lv4】 

【瞬発 Lv5】 【たまご肌 Lv5】 【回避 Lv5】

 【勤倹力行 Lv5】   【潜伏 Lv1】 【言語習得 Lv5】 【学習 Lv5】  【魅了 Lv1】


 ———やばい。


 【水滴りて石を穿つLv5】 【救世済民Lv5】 【マッピングLv5】 【コンセントレーションLv5】 【鋼の意志Lv1】


 いつまでも情報が完結しない。


 【操水Lv5】 【水面歩行Lv5】  【体型維持Lv5】 【生体感知 Lv3】

  【祝福Lv5】 【無辜之民】  【人身御供】  

 【引き継ぎ特典】  【和衷協同Lv5】 【遊泳Lv5】  【温和勤勉Lv5】 

【飛翔 Lv4】 【芳香 Lv5】


 頭がくらつき、めのまえが まっくらに なった。

 セラフィーラさんが必死に俺に呼びかける声が、だんだんと遠ざかっていく。
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