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第22話 くっ!殺せ......!
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池のほとりに巨大な龍が召喚された。
セラフィーラさんは池の中心で藍色の槍を構える。
相変わらず、俺の体は言うことを聞かない。
「焼き払え!!」
咆哮が公園全体へ響き渡る。
龍はエリスの合図で、セラフィーラさんへ向けて炎球を飛ばした。
「避けてください!」
大きな水しぶきが上がった。
なぜなら、セラフィーラさんが槍を巧みに使って炎球を弾き落としたからだ。
「貴様っ。薙ぎ払え!!」
次々と炎球が繰り出される。
セラフィーラさんはそれらを華麗に捌き続けた。
結果として全ての火球が水に沈んだ。木々を守り、二次災害を抑えたのだ。
セラフィーラさんがいなければ、佐々木公園は腐海になっていただろう。
エリスは、憤懣の表情を浮かべた。
「これでお分かりいただけましたか? 戦う意思がないのなら、耐えてみせよと」
「まだだ! 龍よ、行け!」
龍がセラフィーラさんを目指して猛進する。まずい。
「はやとさーーん! 目立ってもよろしいでしょうか?」
はい? 急にどうした?
「えっとなんでもいいですから! そんなことより、危ない!」
「承知しましたっ!」
セラフィーラさんは龍をギリギリまで引き寄せ、純白の翼を広げて、飛翔した!?
龍は急旋回し、その後を追う。
上へ、さらに上へ。
速い、両者の間はどんどん離れていく。
このまま引き離すのだろうか?
俺の予想は完全に外れた。
なんと、セラフィーラさんは上空で急停止し、槍を構えて逆行したのだ。
しかし、龍は急には止まれない。
セラフィーラさんは、龍の逆鱗を槍で串刺しにして急降下。
これまでのスピードが上乗せされた分、相当なダメージに違いない。
龍は悲痛な叫び声を上げ、そのまま池へ突き落とされた。
水しぶきが雨のように降り注ぐ。
俺もずぶ濡れ。
そういえば、空を飛ぶのは目立つからダメだって言ってたんだっけ。
「そんな……私の龍が……」
戦意を喪失した? エリスを無力化するなら今が好機だ。
賢者の目、基礎ステータス。
================
【基礎ステータス】
生命力 S
攻撃力 S
防御 A
魔力量 B
魔力放出 B
状態異常耐性 D
幸運度 A
状態異常
呪いLv2
================
「セラフィーラさん! エリスの状態異常耐性がDです! もしかしたら俺に夜使ってるアレが効くかもしれません!」
「さっきから耳障りだな。鑑定士か、先に殺すべきだな」
しまった、喋りすぎたか。
エリスがこちらへ剣を向けた。
「我が加護を受け取りたまえ、ブライア ローズ。私から意識を逸らしましたね?」
いつの間にか、エリスの背後にセラフィーラさんの姿が。
「きさ、ま……」
睡眠魔法をかけたれたエリスは、そのまま意識を失った。
か、勝てた......。セラフィーラさん強すぎます。
俺へのバインドが解除される。
俺たちはエリスを運び、ロープを使って大木に縛り付けた。
「さて、これからどうしましょうね」
血気盛んな相手をするのは初めてで勝手が分からない。ましてや異世界人だ。
「あえていつもどおりに過ごす、というのはいかがでしょうか? 下界ではペットを飼い始めた際に、慣れるまでそっとしておくそうです。押してダメなら引いてみましょう」
「異世界から転移してきた女騎士をペット扱いってのはいただけませんが、一理ありますね。まぁ、それで行きましょうか」
◇
「くっ……! 殺せ!」
目覚めたエリスの第一声はTHE・テンプレ文だった。
「魔王の軍勢に情報は渡さん! 私は死を選ぶ!」
「だから魔王とは関係ないって言ってるでしょ」
「嘘をつくな! 殺せ!」
ダメだ。やっぱり話が通じない。
「まぁまぁ、はやとさん。ゆっくりでいいのです。さぁ、焼きおにぎりができましたよ~」
「あっ! いただきまーす!」
もういいや。
「二日連続とはいえ、おいしいですね。じゃあ次は俺が仰ぎます」
交代で七輪の面倒を見る。これぞ共同作業。
「ん! おにぎりの具材が伸びました! とても柔らかいです」
「お、当たりですよそれ! 俺が昨日買ってきたチーズです」
「初めて食べました! これが乳製品と呼ばれるものですね!」
「だと思いました! 乳製品には他にもクリームやバター、ヨーグルトなどがあります。食べ物以外だと脂が石鹸の原料にもなっているとか」
「汎用性が高いのですね!」
いつもの調子で盛り上がって、エリスのことを忘れかけていたその時。
「おい、お前たち。いつまで盛り上がっている」
「エリス様もぜひ! とっても美味しいですよ、焼きおにぎり」
「いや、断る」
「そうですか……。残念です」
と言いながら、セラフィーラさんはうちわで七輪を仰ぐ。
「おいお前! こっちに香ばしい匂いを送って煽っているのか!?」
「いえ! そんなつもりは全く……(パタパタ」
「わ、わかった! 食べたい! 食べさせてくれ!」
崇高な騎士様も空腹には逆らえなかった。
セラフィーラさんは拘束されたエリスの口元へおにぎりを運ぶ。
エリスはまるで焼き印でも押されるかのように怯えた表情で、
「くっ! 私は、絶対に屈しない!」
などと抵抗していたが、
「くっっっ! うまい! しかし、私の胃袋を自由にできても、心まではお前たちの好きにはさせない! おかわりだっ!」
あっけなく、焼きおにぎりに敗北したのであった。
おかわりぐらい普通に言えよ。この人はいちいち、くっころ女騎士感を出さねば死んでしまうのか?
◇
「申し訳ない。セラフィーラ殿、水谷殿。この命と引き換えに償いたいところだが、魔王討伐まで待っていただきたい。どうか、この通りだ!」
ロープを解いたエリスは鎧を脱ぎ捨て剣を置き、とても端正な土下座をしていた。
俺たちは、呆気にとられて言葉が出せなかった。
「すまない。誠意が足りなかった。今この場で服も脱ごう」
エリスは上着を脱ぎ出した。
「いや待て待て待て! ストップ! そもそも鎧を脱ぐ必要があったか?」
「私の国では、謝罪をする際に全裸で土下座をするのだ」
「まじかよ、土下座は海外で理解されない節があるってのに、そっちの世界では、さらに全裸になるのかよ!」
「おっと、すまない。正確には全裸ではない。靴下は履いたままだ」
「もっとダメな気がする! なぜかは分からないけど、背徳的な感じがする!」
「私たちは、あなたを許します。様々な苦労があったことでしょう。まずは落ち着いて私たちの話をお聞きください」
あれだけのことをされてもなお、女神様は寛容だった。セラフィーラ様。
「ここは恐らく、いえ、確実にあなたが元いた世界ではありません」
「そんなバカな。セラフィーラ殿の魔法だって、私は知っていたぞ」
「いえ、私はこの世界の住民ではありません。訳あって追放された身です。ここは、魔法もモンスターも存在しない世界なのです」
「空をご覧ください」
俺たちは空を見上げる。
「はやとさん、あれは何でしょうか?」
「え、俺? あーあれは飛行機ですね。翼のついた鉄の塊(アルミニウム合金)に燃料を入れて人を乗せ、空を飛ばしています」
「だ、そうです」
「うそだ、うそだ……」
エリスはそのまま白目を向いて倒れてしまった。
さすがにショックが大きかったみたい。
「どうしましょう…………。あら? はやとさん、今日はお仕事では?」
「しまっっっっった!!! 仕事二日目から遅刻なんてしたらクビになる! でも……」
「エリス様のことは私にお任せください! そうですね。落ち着きましたら、エリス様を図書館へご案内いたします」
そうか、無知な者でも図書館へ行けば正しい情報を得ることができる。名案だ。
「わ、分かりました! 二人きりにするのはめちゃめちゃ心配ですけど、頼みます! 行ってきます!」
「いってらっしゃいませ!」
セラフィーラさんは自信満々のご様子。心配だなぁ。
===========================
次話はエリス視点で続きをお送りします。
セラフィーラさんは池の中心で藍色の槍を構える。
相変わらず、俺の体は言うことを聞かない。
「焼き払え!!」
咆哮が公園全体へ響き渡る。
龍はエリスの合図で、セラフィーラさんへ向けて炎球を飛ばした。
「避けてください!」
大きな水しぶきが上がった。
なぜなら、セラフィーラさんが槍を巧みに使って炎球を弾き落としたからだ。
「貴様っ。薙ぎ払え!!」
次々と炎球が繰り出される。
セラフィーラさんはそれらを華麗に捌き続けた。
結果として全ての火球が水に沈んだ。木々を守り、二次災害を抑えたのだ。
セラフィーラさんがいなければ、佐々木公園は腐海になっていただろう。
エリスは、憤懣の表情を浮かべた。
「これでお分かりいただけましたか? 戦う意思がないのなら、耐えてみせよと」
「まだだ! 龍よ、行け!」
龍がセラフィーラさんを目指して猛進する。まずい。
「はやとさーーん! 目立ってもよろしいでしょうか?」
はい? 急にどうした?
「えっとなんでもいいですから! そんなことより、危ない!」
「承知しましたっ!」
セラフィーラさんは龍をギリギリまで引き寄せ、純白の翼を広げて、飛翔した!?
龍は急旋回し、その後を追う。
上へ、さらに上へ。
速い、両者の間はどんどん離れていく。
このまま引き離すのだろうか?
俺の予想は完全に外れた。
なんと、セラフィーラさんは上空で急停止し、槍を構えて逆行したのだ。
しかし、龍は急には止まれない。
セラフィーラさんは、龍の逆鱗を槍で串刺しにして急降下。
これまでのスピードが上乗せされた分、相当なダメージに違いない。
龍は悲痛な叫び声を上げ、そのまま池へ突き落とされた。
水しぶきが雨のように降り注ぐ。
俺もずぶ濡れ。
そういえば、空を飛ぶのは目立つからダメだって言ってたんだっけ。
「そんな……私の龍が……」
戦意を喪失した? エリスを無力化するなら今が好機だ。
賢者の目、基礎ステータス。
================
【基礎ステータス】
生命力 S
攻撃力 S
防御 A
魔力量 B
魔力放出 B
状態異常耐性 D
幸運度 A
状態異常
呪いLv2
================
「セラフィーラさん! エリスの状態異常耐性がDです! もしかしたら俺に夜使ってるアレが効くかもしれません!」
「さっきから耳障りだな。鑑定士か、先に殺すべきだな」
しまった、喋りすぎたか。
エリスがこちらへ剣を向けた。
「我が加護を受け取りたまえ、ブライア ローズ。私から意識を逸らしましたね?」
いつの間にか、エリスの背後にセラフィーラさんの姿が。
「きさ、ま……」
睡眠魔法をかけたれたエリスは、そのまま意識を失った。
か、勝てた......。セラフィーラさん強すぎます。
俺へのバインドが解除される。
俺たちはエリスを運び、ロープを使って大木に縛り付けた。
「さて、これからどうしましょうね」
血気盛んな相手をするのは初めてで勝手が分からない。ましてや異世界人だ。
「あえていつもどおりに過ごす、というのはいかがでしょうか? 下界ではペットを飼い始めた際に、慣れるまでそっとしておくそうです。押してダメなら引いてみましょう」
「異世界から転移してきた女騎士をペット扱いってのはいただけませんが、一理ありますね。まぁ、それで行きましょうか」
◇
「くっ……! 殺せ!」
目覚めたエリスの第一声はTHE・テンプレ文だった。
「魔王の軍勢に情報は渡さん! 私は死を選ぶ!」
「だから魔王とは関係ないって言ってるでしょ」
「嘘をつくな! 殺せ!」
ダメだ。やっぱり話が通じない。
「まぁまぁ、はやとさん。ゆっくりでいいのです。さぁ、焼きおにぎりができましたよ~」
「あっ! いただきまーす!」
もういいや。
「二日連続とはいえ、おいしいですね。じゃあ次は俺が仰ぎます」
交代で七輪の面倒を見る。これぞ共同作業。
「ん! おにぎりの具材が伸びました! とても柔らかいです」
「お、当たりですよそれ! 俺が昨日買ってきたチーズです」
「初めて食べました! これが乳製品と呼ばれるものですね!」
「だと思いました! 乳製品には他にもクリームやバター、ヨーグルトなどがあります。食べ物以外だと脂が石鹸の原料にもなっているとか」
「汎用性が高いのですね!」
いつもの調子で盛り上がって、エリスのことを忘れかけていたその時。
「おい、お前たち。いつまで盛り上がっている」
「エリス様もぜひ! とっても美味しいですよ、焼きおにぎり」
「いや、断る」
「そうですか……。残念です」
と言いながら、セラフィーラさんはうちわで七輪を仰ぐ。
「おいお前! こっちに香ばしい匂いを送って煽っているのか!?」
「いえ! そんなつもりは全く……(パタパタ」
「わ、わかった! 食べたい! 食べさせてくれ!」
崇高な騎士様も空腹には逆らえなかった。
セラフィーラさんは拘束されたエリスの口元へおにぎりを運ぶ。
エリスはまるで焼き印でも押されるかのように怯えた表情で、
「くっ! 私は、絶対に屈しない!」
などと抵抗していたが、
「くっっっ! うまい! しかし、私の胃袋を自由にできても、心まではお前たちの好きにはさせない! おかわりだっ!」
あっけなく、焼きおにぎりに敗北したのであった。
おかわりぐらい普通に言えよ。この人はいちいち、くっころ女騎士感を出さねば死んでしまうのか?
◇
「申し訳ない。セラフィーラ殿、水谷殿。この命と引き換えに償いたいところだが、魔王討伐まで待っていただきたい。どうか、この通りだ!」
ロープを解いたエリスは鎧を脱ぎ捨て剣を置き、とても端正な土下座をしていた。
俺たちは、呆気にとられて言葉が出せなかった。
「すまない。誠意が足りなかった。今この場で服も脱ごう」
エリスは上着を脱ぎ出した。
「いや待て待て待て! ストップ! そもそも鎧を脱ぐ必要があったか?」
「私の国では、謝罪をする際に全裸で土下座をするのだ」
「まじかよ、土下座は海外で理解されない節があるってのに、そっちの世界では、さらに全裸になるのかよ!」
「おっと、すまない。正確には全裸ではない。靴下は履いたままだ」
「もっとダメな気がする! なぜかは分からないけど、背徳的な感じがする!」
「私たちは、あなたを許します。様々な苦労があったことでしょう。まずは落ち着いて私たちの話をお聞きください」
あれだけのことをされてもなお、女神様は寛容だった。セラフィーラ様。
「ここは恐らく、いえ、確実にあなたが元いた世界ではありません」
「そんなバカな。セラフィーラ殿の魔法だって、私は知っていたぞ」
「いえ、私はこの世界の住民ではありません。訳あって追放された身です。ここは、魔法もモンスターも存在しない世界なのです」
「空をご覧ください」
俺たちは空を見上げる。
「はやとさん、あれは何でしょうか?」
「え、俺? あーあれは飛行機ですね。翼のついた鉄の塊(アルミニウム合金)に燃料を入れて人を乗せ、空を飛ばしています」
「だ、そうです」
「うそだ、うそだ……」
エリスはそのまま白目を向いて倒れてしまった。
さすがにショックが大きかったみたい。
「どうしましょう…………。あら? はやとさん、今日はお仕事では?」
「しまっっっっった!!! 仕事二日目から遅刻なんてしたらクビになる! でも……」
「エリス様のことは私にお任せください! そうですね。落ち着きましたら、エリス様を図書館へご案内いたします」
そうか、無知な者でも図書館へ行けば正しい情報を得ることができる。名案だ。
「わ、分かりました! 二人きりにするのはめちゃめちゃ心配ですけど、頼みます! 行ってきます!」
「いってらっしゃいませ!」
セラフィーラさんは自信満々のご様子。心配だなぁ。
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次話はエリス視点で続きをお送りします。
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