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第3章「夢の続きを大根と共に」

第23話「ルミエラさまの依頼」

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 ※2020/06/08 書き直し

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「元気そうね。アデラール」

「ああ、皆も元気そうで良かったよ」

「イオスは田舎に帰るって手紙がきたわ。もしかしてあんた何か知ってるんじゃないの?」

「いや、イオスとはリトで会ったけど何処へ行ったかは知らないな」


 嘘はついていない。
 勢いと思い付きで”外科手術”してしまったな。
 あれから、イオスを戻す手段を考えてみたんだが
 あの『異物質合体』魔法は、結合ではなく”融合”だから一度くっついたら戻すのは無理だ。
 たぶん、ヘリアさまに頼んでも無理だと思うな。

 まあ、戻すつもりはないけどな! 考えただけだ。
 あれは意外と楽しかった。

 だが、あの魔法は禁呪指定しておこう。


「そうなのですか? まあ仕方ないですね。カルロさんはどこへ行かれました?」

「さっきまで、その辺でお酒飲んでたわよ! アデラールが来るって話しをしたら急に出かけるって」

「カルロさんに何かしたのです? アデラールさん。でも、あなたのほうが色々されてるから気にしないです」

「とりあえず、この件だけは一緒にやってもいい」

「そうですか。私とリタさんは問題ないです。とりあえず、よろしくお願いしますね」

「ああ、わかった。じゃあ依頼主のところへいこう」


 今のところ、エリスもリタも普通にしている。
 以前のように高慢な態度は取ってこないが、噂だけでこんなにも態度が変わるのもおかしい気がする。用心はしておこう。

 ルミエラさまに会うのも久しぶりだな。
 ベルナルドさんのあの約束も果たしておきたいな。
 まだ覚えてくれているといいんだが。


古代遺跡都市カイユテ、領主の屋敷――


「アデラールさん、お久しぶりです」

「ベルナルドさん! お元気そうで何よりです。依頼の件でお伺いしたのですが、ルミエラさまはどちらに?」
「それが、お嬢さまは今朝からお姿が見えないのです。依頼の件については、私が伯爵さまから承ってますので内容はこの場でお伝えします」


 ルミエラさまが居ない? 

 それに伯爵が代わりに伝えるってのは引っかかるな。
 ただ、今までのルミエラさまが気安い存在すぎたっていうのもある。
 本来の貴族の態度としてなら、この対応はおかしくない。
 むしろ、丁寧な対応だろう。
 あの方ルミエラさまにしても父親などの目もあるからな。
 街の外に居たときみたいにはならないのかもしれない。
 
 とにかく今は依頼のことを考えよう。


「依頼主には会えましたか?」

「いや、代わりに従者から内容を聞いた。その人も俺の知人だから、情報自体は問題ないはずだ」

「そうですか。ならいいです。それで内容は? 私たちもあなたと再結成しろって話しを聞いた時に少しだけ教えてもらいましたけど」 

「東の森の洞窟にゴブリンの集団が住み着いたらしい、数が尋常じゃないらしく、街のそばまでやってきては畑を荒らして家畜を襲うらしいな」

「ゴブリンなら楽勝ね!」

「リタさん、今は前衛はあなたしかいないのですよ? 大丈夫なのですか?」

「大丈夫だって! 久しぶりの討伐依頼だし? 頑張ろう!」


―――


「伯爵様、獲物がエサに食いついたようです」

「ほう? あの者は高位の魔導師なのだろう?」

「ええ、なので抜かりなく手は打ってございます」

「一緒に居た2人の女は何者だ? そなたの手の者か?」

「いいえ、あの女共はアデラールの仲間ですが、過去に何やらあったらしく、誘えばこちら側に引き込めはします。
ですが、今回は一緒に死んでもらいます」

「そうか。ゴロツキどもが減って、この街もキレイになるな」

「ええ。その通りでございます。伯爵さま」


―――


 視線の先に目的地が見えてくる。あの洞窟だ。
 ぽっかり開いた口のような、その入り口で間の抜けた顔のゴブリンが数匹、辺りを見回している。
 奥には『ぽつん、ぽつん』と松明の灯りがつづく。

 アデラールたちは、まだ日の高いうちにこの場所へ着いた。


「あの洞窟のようですね。私の使い魔にちょっと様子を探らせてみます」

「ああ、頼むエリス」

「ねね、アデラール。あんた、精霊出せるんでしょ?」

「ああ、出せるが?」

「ゴブリンだから大丈夫だろうけど、危ないときは精霊だしてさ、ぱぱっと片付けちゃってよ!」

「いちおう今も精霊出てるんだけどな」

「え、見えないよ! まあいいけどさ」


 パンナ、聞こえるか?


『はい、マスター。聞こえております』


 こいつらが信用できるとは思えないが、ある程度の様子が分かるまでは念話にするぞ。


『畏まりました。それでマスター。依頼はゴブリンだと仰いましたが……』


 なんだ? やっぱり、そんなものではなかったか?


『ええ。違いますね。魔力が強すぎます。マスターでしたら問題はないと思いますが』


 先に言っておくが大根奥義はここでは使うなよ?


『え、、ええ。畏まりました。そのように致します』

 あと、聞いてると思いますが、ヘリアさまも余計な事はしないで下さいよ。
 こんなところで、山ごと吹き飛ばしてもらっては、損害賠償でティリアの解放どころじゃなくなるからな……

 パンナに何か控えめな魔法を覚えさせるか。。うーん。

 大根を用いた攻撃魔法でも作ってやるか。


「お二人とも、敵の様子がわかりました」

「で、どうだった?」

「依頼はゴブリンですよね? あれはゴブリンではないですね、アンデッドです」

「うへー。臭いやつかー」

「ゴブリンもいますけど。他に重装備のスケルトンと、これは予想ですが、魔力の強い魔導師タイプの個体も居ると思います。数は全部で10体ほどですね」

「その魔導師は俺が相手にしよう。他は2人で平気だな?」

「アタシは神官だからね! 骨は得意な相手よ~」

「用意はいいですか? 見張りを倒したら行きますよ」


 パンナ、エリスが見張りを倒したら他のを止めてくれ


『畏まりました。マスター』


 そのスキに魔導師をやる。

 エリスが森の藪から、すっと立ち上がり魔法を詠唱する。


『12柱の雷の精霊に命ず! 集い来りて敵に降り注げ! エネルギーボルト!!』


 エリスの手から雷が迸りまっすぐに見張りに命中する。
 見張りは鈍い叫びを挙げ地面に『どう』と倒れる。
 その叫びを聞いて、魔物たちが一斉にこちらに気づく。


『ニンゲン! ニンゲンイル! オヤカタ! シラセロ!!』


「リタさん! ゴブリンは私に!」

「はいよー。さあ、不浄なる闇の信徒よ! 光の洗礼を受けて土に還りなさいなー!」

 リタのメイスが淡い光を纏って輝く。

 神官の神聖魔法”ホーリーウェポン”だ。
 リタの膂力であれば、そのメイスの一撃でスケルトンなど防具の上からでも粉砕できるだろう。
 魔法が掛かっているのなら、尚更だ。そう。こいつらは真面目にやってればかなり強い連中だ。

 イオスにしても、地道にやってれば騎士くらいはなれたかもしれないほどの使い手だ。
 少なくとも、あのファイルよりは上のはずだ。


『マスター。わらわの出番はありませぬ。このものたちに任せて、わらわは奥へ様子を見に参っても宜しいですか?』


 ああ、そうだな。ここは大丈夫だ。任せる。


『では、先に参ります』


「やー! このほね! アタシに勝とうなんて10年早いよー!」


『グガガ』『グオオ』


 雑魚を置き去りにし、洞窟の奥を見やる。
 紅い目を光らせた何かがいる。魔導師タイプか? 暗がりから外を狙うか。そうはさせないさ。


『66柱の炎の精霊に命ず! 彼方より此方に収束せよ、炎よりも紅き刃となりて、仇なす者をその身で包め!!
 プロミネンス!!』


『シュウウウウ』『ゴバッ』


 真っ赤な業火の細い筋が一点に収束したかとおもうと、”それ”は一気に広がり、かざした手の少し先のほうで炸裂する。炎は周辺の全ての魔物を巻き込み激しく燃えている


『ゴオオオオオ』



「すごい、、、こんなにすごいとは、、、」

「エリス! 見とれていると死ぬわよ~。えーい!この骨!」


 時間にして僅か、数分。
 中堅の冒険者ランクを持つ3人のパーティにしては上等だ。まだ『ぶすぶす』と燃え跡の音を残す現場を後にして
アデラールたちは洞窟の奥へ歩を進める。

 松明の灯りが風に吹かれたかのように、あやしく揺らめく。





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文章下手すぎて萎えます。2年前の私に言ってやりたいですw

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