26 / 139
Ⅰ 未完のアスリート
26 自衛官志望
しおりを挟む
高3になった4月、驚いたことに義父の離婚話が消えた。
洋二兄によると、なみ江さんが義父の元に戻ってきて、心を入れかえるということで元のさやに納まったという。
当初は、なみ江さんにローン付きのマンションを渡し、義父は淳一の住む家に戻ることになっていたそうだ。ところがなみ江さんが借りた金は必ず返すと父に訴え、肝心の義父はそれをあっさり了承したということだ。
淳一には、家の光熱費と固定資産税は払ってくれることになった。
でも食費などの生活費は自分で稼がなければならない。健康保険も打ち切りの通知が来ていた。
病気や怪我には絶対なれない。
光熱費が浮いた分、バイトを減らして勉強をするか、同じように働いて大学にかかる費用の足しにするか悩んだ。考えた末、当分は今のままバイトを続けることにした。
土日は引っ越し、平日はファミレスの仕事をする。
勉強より、今は高校卒業を目指していこう。この家で後何年も住み続けられるとは到底思えない。
高3の今から施設なんかが受け入れてくれるはずはないだろうし。
学校からほど近い建物の一角に、自衛隊の地域事務所があるのは前から知っていた。
5月に思い切って訪ねてみた。
日に焼けたやや小柄な、がっしりした体の自衛官の人に防衛大について話を聞いた。
伊吹東高からは初めての訪問ということで歓迎され、出願の動機を詳しく尋ねられた。
今の生活状況を話すと少し考え込んだ。
「義理の父では駄目なんですか?」
「いやそうじゃないが、一応仕事の性質上、日本国籍があり、犯罪歴のない家庭が合格要件になるよ。まあ君は賢そうだが防衛大は難しいよ。人文系と理工系どっちを受けるの?」
「一応文系でいきたいと思っています」
「人文は採用人数が理工の五分の一しかないから、かなりハードルが高いぞ。いっそ高卒から自衛官になる手もあるよ。君なら大丈夫だろう。やってみないか?」
それから熱心に高校を卒業したら、即自衛官になる道を勧め出した。
どれだけメリットがあるかパンフレットで詳しく説明をされた。
それが嫌とは言えないし、今の偏差値や生活状況をを考えたら一番妥当かもしれない。
自衛官になってから進学する道があると聞き心も動かされた。
しかし係の人が、あまり高卒から入ることを強く勧めるので反発心も出てきた。
「ともかく後半年、防衛大受験を頑張ってみます」
そう言って事務所を後にした。運動ができたら、自衛隊体育学校という道もあるらしい。
ただ県大会で優勝したくらいで行けるだろうか。
防衛大の願書も地域事務所で手に入るらしいが、吉見先生に頼んでみよう。
今は将来の事より明日の飯を優先させないと。もうすぐファミレスのバイトが始まる時間だ。
洋二兄によると、なみ江さんが義父の元に戻ってきて、心を入れかえるということで元のさやに納まったという。
当初は、なみ江さんにローン付きのマンションを渡し、義父は淳一の住む家に戻ることになっていたそうだ。ところがなみ江さんが借りた金は必ず返すと父に訴え、肝心の義父はそれをあっさり了承したということだ。
淳一には、家の光熱費と固定資産税は払ってくれることになった。
でも食費などの生活費は自分で稼がなければならない。健康保険も打ち切りの通知が来ていた。
病気や怪我には絶対なれない。
光熱費が浮いた分、バイトを減らして勉強をするか、同じように働いて大学にかかる費用の足しにするか悩んだ。考えた末、当分は今のままバイトを続けることにした。
土日は引っ越し、平日はファミレスの仕事をする。
勉強より、今は高校卒業を目指していこう。この家で後何年も住み続けられるとは到底思えない。
高3の今から施設なんかが受け入れてくれるはずはないだろうし。
学校からほど近い建物の一角に、自衛隊の地域事務所があるのは前から知っていた。
5月に思い切って訪ねてみた。
日に焼けたやや小柄な、がっしりした体の自衛官の人に防衛大について話を聞いた。
伊吹東高からは初めての訪問ということで歓迎され、出願の動機を詳しく尋ねられた。
今の生活状況を話すと少し考え込んだ。
「義理の父では駄目なんですか?」
「いやそうじゃないが、一応仕事の性質上、日本国籍があり、犯罪歴のない家庭が合格要件になるよ。まあ君は賢そうだが防衛大は難しいよ。人文系と理工系どっちを受けるの?」
「一応文系でいきたいと思っています」
「人文は採用人数が理工の五分の一しかないから、かなりハードルが高いぞ。いっそ高卒から自衛官になる手もあるよ。君なら大丈夫だろう。やってみないか?」
それから熱心に高校を卒業したら、即自衛官になる道を勧め出した。
どれだけメリットがあるかパンフレットで詳しく説明をされた。
それが嫌とは言えないし、今の偏差値や生活状況をを考えたら一番妥当かもしれない。
自衛官になってから進学する道があると聞き心も動かされた。
しかし係の人が、あまり高卒から入ることを強く勧めるので反発心も出てきた。
「ともかく後半年、防衛大受験を頑張ってみます」
そう言って事務所を後にした。運動ができたら、自衛隊体育学校という道もあるらしい。
ただ県大会で優勝したくらいで行けるだろうか。
防衛大の願書も地域事務所で手に入るらしいが、吉見先生に頼んでみよう。
今は将来の事より明日の飯を優先させないと。もうすぐファミレスのバイトが始まる時間だ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる