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第二章 乗っ取られた国

48 分かりやすっ!!

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 二人を振り切りコノハはとりあえず街に向かって歩き出す。
 人の気配が何となく多い方に進めば何とかなるだろうという考えだ。

 コノハは現在、自作のローブを纏っているため、ばれる心配は無いだろう。
 そもそも今は真夜中なので“日向の森”といえど真っ暗だし。

 しばらく歩いてふと、気付いた。
 
 「……そういえば、教会結局どこ?」
 
 結局、ジークから教会の場所を聞き出してない事実にやっと気付いたコノハだった。
 
 
 
 
 
 




 (くそぅ……、ジーク結局教えてくれなかったなぁ)
 
 苦々しく思いながら、街に向かって歩く足は止めない。
 
 (んー…、上から見たら分かるかな?)
 
 少し考えて上から探すことを思い付く。
 余り風は強くないし、これなら『空中浮遊』もやり易い。
 
 『飛行』魔法とは違い、自分ではなく空気に干渉するため天候も重要なポイントになる。
 浮遊、とは言っているが実際は空気の層を部分的に一時的な圧縮を施し、一瞬だけ固め、その上に乗る。
 それを繰り返す。
 それに圧縮し過ぎると時間が短くなり自分が乗る前に消える、ということも起こり得ない。
 だからといって圧縮を弱めると強度が持たない。
 圧縮の効果が切れる前に別のところに移動する。
 結構なスピード勝負な魔法なのだ。
 
 空を浮く、というよりかは走る、という方が近い。
 しかもその場にとどまることは出来ず、ずっと動いていなければならない。
 また、天候、風の向き、圧縮する範囲、力、バランス……いろいろなことを一瞬で考えることも。
 それ故に『飛行』より扱いづらい。
 
 ……コノハは普通に使うが。
 ……魔法の才能はピカ一なのだ。
 
 コノハは早速『空中浮遊』を使い、トントンと空気の層を足場に上り、街―王都―を見渡す。
 街灯で照らされている王都は空の星々のように綺麗だ。
 まるで地上に輝く星のように――。
 そのなかで一際目立つ二つの建物があった。
 一つはとても大きく、高さを誇る城。
 あれは王城だろう。
 流石に真夜中なので街灯の明るさだけではそれ以外はよくわからないが。
 
 そしてもうひとつ。
 王城よりは大きくない。
 王都の東側に建てられている。
 上に十字架が掲げられている。
 
 (あ、あれか)
 
 後者が教会というのはすぐに分かった。
 十字架とか教会の証である。
 
 「………割りと分かりやすい……これなら聞かなくても分かったじゃん」
 
 すぐ行けば良かった、思いながらコノハはそこに向かい始めた―――。
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