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第二章 乗っ取られた国

50 どこのホラーっ!?

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 二桁は越えているであろうカラスの二つの目がコノハを凝視している。
 
 (どこのホラーだよっ!?)
 
 コノハはこの異様な光景を見てギリギリ声に出すのを抑えたが、心の中で叫ばずにはいられなかった。
 だが、そのカラスたちの目はあの時と同じ。
 
 (虚ろ――――か)
 
 それも全てである。
 この角度からは見えないが、あの時と同じように彼等にも足にあの魔道具がついているのだろう。
 これも教皇の仕業なのだろうか。
 コノハが半分呆然と、だがその半分は冷静に状況を見るという器用なことをやっているときにふと、気づいた。
 
 (あいつら、いつからいた?)
 
 コノハが教会を潰す理由はメリアローズとジークに頼まれた、というのもあるが、私情的なことではカラスを送ってきた奴――この状況では教皇の可能性が高い――に報復することでもあるのだ。
 その原因を作ったカラスの視線には敏感になっているはずなのになぜか気付くことが出来なかった。
 そもそも上空からやって来たからあんなに大量のカラスがいたら普通、気付くだろう。
 真っ暗だとしてもコノハなら気配で分かる。
 
 (――でも気配を全く感じなかった)
 
 恐らく洗脳されているであろうカラスに気配を完璧に消すことなど可能なのだろうか?
 何かかけられていれば出来るのかも知れないが――
 
 
 (――あのときのカラスは“視界”だけだった。でもここにいるカラスがそれだけじゃなく、例えば“”なんていう魔法をかけられていたら?)
 
 そう考えれば、気づかなかった理由も説明できる。
 それにさっきから見るだけで何もして来ないので攻撃はしないと思われる。
 
 「……ここの“”か」
 
 小さく呟く。
 こんなことをしているのなら、門番とか傭兵とかがいそうなものだ。
 それがないのでよっぽど洗脳を信頼しているのかと思っていたのだが、どうやらそうではなかったようだ。
 人、という裏切る可能性があるものではなく、洗脳した動物を使っている。
 思った以上に用心深い。
 
 「………!?」
 
 気付いた時にはカラス関係なく、たくさんの動物たちに囲まれていた。
 ライオン、熊、蛇……多種多様な動物たちがコノハを倒そうとしている。
 彼らは侵入者の“退”を担当しているようだ。
 その数、100は下らないだろう。
 
 「…めんどいことになったなぁ」
 
 コノハは教皇の前に例に目の虚ろな彼らを倒さなければならなくなった。
 彼女は真っ黒ローブの中でため息を吐きつつ、戦闘体制に移行した。
 
 「さぁ………どうしようかな」
 
 
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