眺めるほうが好きなんだ

39.俺の獲物だ

副会長の竜崎が会長の涼牙を引きずりながら、生徒会室を目指し廊下を歩いていると、引きずらている涼牙が大声で喚き出した。


「おい、紫信！一体どういう事だ！！」

「何がですが？」

「さっきの事だ！お前、あいつの事が好きなのか！？」

「えぇ。私もあの日以来、彼に心惹かれてしまいましてねぇ…」


クスリと笑う紫信とは違い、涼牙はムスッとした顔で明らかに不機嫌になった。

「面白くねー…」

「どうしてです？と言うか、その顔やめた方がいいですよ」

「アイツは俺様の獲物だ。俺様のものにする」

「おやおや…。つまり私には手を出すなと？」

「その通りだ」

「相変わらず横暴でワガママですねー」


ニヤリと紫信が笑うと、涼牙を引きずっていた手を突然離した。
そのせいで涼牙はバランスを崩し、尻もちを着いてしまう。
  

「なにすんだ、テメ…！！」

涼牙が紫信を思い切り睨みつけるが、紫信は意地悪な笑顔を浮かべながら、涼牙を見下ろしていた。

「手を出すな？まだ君の物じゃないでしょう？それに誰の獲物だとか関係ないですよ。私も彼が欲しいんです」

そう言いながら、未だ地べたに座り込む涼牙と目線を合わせるように紫信はしゃがんだ。
すると涼牙の鼻をギュッと摘むと、更に意地の悪そうな笑みを浮かべて言った。


「欲しいものは、例えどんな手段を使っても手に入れる。当たり前のことでしょう？貴方からでも容赦なく奪い取りますよ♪」

「こ、の野郎………！！」

「フフっ、変な声ですね～」

「ッ…………！！ぶっ飛ばす！」




その少し後、生徒会であるにも関わらず大声を上げながら廊下を全速力で走り回る生徒会長 獅子涼牙と、副会長 竜崎紫信の姿が目撃された。