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魔王、再会する5
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「くそ! なんだよ、あいつ!」
クリスたちと離れたあと、勇者ことヨハンは悪態をつく。
「まあまあ、落ち着きなって」
グレイがなだめると、ヨハンはキッと睨んだ。
「グレイ! なんで俺たちが撤退しなきゃいけないんだよ!」
「じゃあ、お前、あいつに勝てるのか?」
ヨハンの怒りを、軽く受け流しながら、グレイは冷たく言いはなつ。
「……そんなのやってみなきゃわからないだろ……」
「いいや、少なくとも、今のお前では無理だ」
「勝てない」という事実に抵抗したくてボソボソ言うヨハンをグレイは切り捨てた。
そして甲冑を着た男に顔を向ける。
「ガルム、お前ならあいつに勝てたと思うか?」
甲冑の男、ガルムは眉をひそめた。
「難しいだろうな」
「やっぱりか……」
グレイは回復専門の聖職者であるため、戦いには詳しくない。だが、それでもヨハンと戦った魔族が並大抵ならぬ力量であることがわかった。
そしてガルムはこのパーティーのなかでは、今のところ一番強い。
「そんなに強いの?」
矢筒を背負った女、エレナが聞く。
ガルムが息を吐いた。
「そもそも奴は殺気は全くないし、それどころか戦う気すら低かった。
だが、奴の剣の腕は一流だった。これで魔法を使われたら勝ち目はないだろう」
「そう……」
エレナは悔しそうにこぶしを固く握る。
「そういうことだから、ヨハン、負けて悔しいのはわかるけど、むしろ、見逃されてラッキーくらいに思っとけ」
グレイの言葉にヨハンは唇を噛み締めた。
グレイは苦笑する。
「まぁ、こんなことが続いて悔しいのはわかるがな」
数日前、戦った魔王にも同じようなことをされたのだ。
その時も、悔しそうな顔をしていた。
「次会った時までに、鍛えればいい。
お前は聖剣に選ばれた勇者なんだから、必ず強くなるさ」
グレイの言葉に頷くと、ヨハンはハッとしたようにキョロキョロした。
「……ルディアは?」
他の者もハッとして周りを見渡す。
茶色いローブの魔法使いの少女がいなくなっていた。
その頃、クリスたちはサーニャの焼いた肉を食べていた。
それなりに大きな魔獣だったのだが、14 等分すると、さすがにひとつ当たりが小さくなった。
その中でもなるべく小さな肉をクリスは選らんで食べていた。
オークたちから自分のと交換しようかという申し出もあったが、クリスは断る。
半ば脅して付いて来てもらっているのに、衣食住のうち、衣も住も保証できてないのだ。だからせめて、食くらいはなんとかしたかった。
その小さな肉をネズミの姿のジョセフと分けあって食べる。
肉は焼きすぎたのか固く、なにも付けていないので、少し味気なかった。
(ガーラの肉ってすごかったんだな)
ただ、肉を焼くだけなのにこんなに違うとは思いもしなかった。
クリスが焼くと確実に灰になるので文句は言わなかったが。
そして食べ終わる頃、誰かが近づく気配がした。
「そこにいるのは誰だい?」
残りの肉を口に放りこんで咀嚼したあと、クリスはその相手に問う。
木々の隙間からビクビクしながら現れたのは、先ほど勇者たちといた茶色いローブの人間だった。
風が吹き、ローブのフードがとれ、顔が露にになる。
そこにいたのは、焦げ茶色の癖のある髪をひとつにまとめた、緑色の目が大きく、小柄な少女だった。
少女は赤い大きな石の付いた杖をギュッと握り、落ち着きなく目をキョトキョト動かしているのがリスっぽい。
「君、なんの用だい?」
問いながらクリスは身構える。
正直、勇者以外の人間はたいして注目していなかったが、勇者の仲間ならそれなりに強いだろう。
それに、あの勇者の仲間ならろくな用事ではないと思う。
ただ、ここに1人で来る意味がわからなかった。
少女はしばらく目をさまよわせたあと、何回か大きく呼吸をした。
そしてクリスをキッと見据える。
「あの」
少女は勇気を振り絞って、クリスに問いかける。
「魔族って何を食べるんですか!?」
「……へ?」
思わぬ方向からの質問に、クリスは脱力した声が出た。
クリスたちと離れたあと、勇者ことヨハンは悪態をつく。
「まあまあ、落ち着きなって」
グレイがなだめると、ヨハンはキッと睨んだ。
「グレイ! なんで俺たちが撤退しなきゃいけないんだよ!」
「じゃあ、お前、あいつに勝てるのか?」
ヨハンの怒りを、軽く受け流しながら、グレイは冷たく言いはなつ。
「……そんなのやってみなきゃわからないだろ……」
「いいや、少なくとも、今のお前では無理だ」
「勝てない」という事実に抵抗したくてボソボソ言うヨハンをグレイは切り捨てた。
そして甲冑を着た男に顔を向ける。
「ガルム、お前ならあいつに勝てたと思うか?」
甲冑の男、ガルムは眉をひそめた。
「難しいだろうな」
「やっぱりか……」
グレイは回復専門の聖職者であるため、戦いには詳しくない。だが、それでもヨハンと戦った魔族が並大抵ならぬ力量であることがわかった。
そしてガルムはこのパーティーのなかでは、今のところ一番強い。
「そんなに強いの?」
矢筒を背負った女、エレナが聞く。
ガルムが息を吐いた。
「そもそも奴は殺気は全くないし、それどころか戦う気すら低かった。
だが、奴の剣の腕は一流だった。これで魔法を使われたら勝ち目はないだろう」
「そう……」
エレナは悔しそうにこぶしを固く握る。
「そういうことだから、ヨハン、負けて悔しいのはわかるけど、むしろ、見逃されてラッキーくらいに思っとけ」
グレイの言葉にヨハンは唇を噛み締めた。
グレイは苦笑する。
「まぁ、こんなことが続いて悔しいのはわかるがな」
数日前、戦った魔王にも同じようなことをされたのだ。
その時も、悔しそうな顔をしていた。
「次会った時までに、鍛えればいい。
お前は聖剣に選ばれた勇者なんだから、必ず強くなるさ」
グレイの言葉に頷くと、ヨハンはハッとしたようにキョロキョロした。
「……ルディアは?」
他の者もハッとして周りを見渡す。
茶色いローブの魔法使いの少女がいなくなっていた。
その頃、クリスたちはサーニャの焼いた肉を食べていた。
それなりに大きな魔獣だったのだが、14 等分すると、さすがにひとつ当たりが小さくなった。
その中でもなるべく小さな肉をクリスは選らんで食べていた。
オークたちから自分のと交換しようかという申し出もあったが、クリスは断る。
半ば脅して付いて来てもらっているのに、衣食住のうち、衣も住も保証できてないのだ。だからせめて、食くらいはなんとかしたかった。
その小さな肉をネズミの姿のジョセフと分けあって食べる。
肉は焼きすぎたのか固く、なにも付けていないので、少し味気なかった。
(ガーラの肉ってすごかったんだな)
ただ、肉を焼くだけなのにこんなに違うとは思いもしなかった。
クリスが焼くと確実に灰になるので文句は言わなかったが。
そして食べ終わる頃、誰かが近づく気配がした。
「そこにいるのは誰だい?」
残りの肉を口に放りこんで咀嚼したあと、クリスはその相手に問う。
木々の隙間からビクビクしながら現れたのは、先ほど勇者たちといた茶色いローブの人間だった。
風が吹き、ローブのフードがとれ、顔が露にになる。
そこにいたのは、焦げ茶色の癖のある髪をひとつにまとめた、緑色の目が大きく、小柄な少女だった。
少女は赤い大きな石の付いた杖をギュッと握り、落ち着きなく目をキョトキョト動かしているのがリスっぽい。
「君、なんの用だい?」
問いながらクリスは身構える。
正直、勇者以外の人間はたいして注目していなかったが、勇者の仲間ならそれなりに強いだろう。
それに、あの勇者の仲間ならろくな用事ではないと思う。
ただ、ここに1人で来る意味がわからなかった。
少女はしばらく目をさまよわせたあと、何回か大きく呼吸をした。
そしてクリスをキッと見据える。
「あの」
少女は勇気を振り絞って、クリスに問いかける。
「魔族って何を食べるんですか!?」
「……へ?」
思わぬ方向からの質問に、クリスは脱力した声が出た。
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