その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、刺される2

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 後ろにいたのは、昨日の子どもだった。
 目には涙を浮かべ、手には血のついた古いナイフを持っている。

「リン!」

 周りの子どもたちは驚いてリンに駆け寄る。

「何してんだよ!」
「この兄ちゃん、食い物くれたんだぞ!」
「うぇーん、ふぇーん!」

 怒り出したり泣き出す子どもたちで、その場は一瞬でパニックになる。

「だ、大丈夫だから……」

 幸い、怪我は致命傷ではない。
 それに、自己回復魔法ですぐに治った。
 だが、なぜ刺されたかわからず、自身も混乱しながらも、クリスは子どもたちを宥める。

(ひょっとして、魔族ってバレた?)

 クリスが刺される理由としたら、それくらいしか思い浮かばない。
 クリスがリンの方を見ると、リンはキッとクリスを睨みつける。

「お前、勇者なんだろ!?」

 あんなに騒がしかった子どもたちがしんっと静かになる。
 なおも、リンはクリスを睨む。

「お前が、ちゃんと魔王を倒さなかったせいで、父ちゃんは死んだんだ!」

 クリスは悟った。
 リンの父は魔族、もしくは魔物に殺されたことを。

「なんで、なんで魔王を倒してくれなかったんだよぅ! 父ちゃんを返せ!」

 ナイフを落として泣きながら体を叩くリンを、クリスは黙って見ている。
 これはただの八つ当たりで、クリスが罪悪感を感じる必要のないことだ。
 けど、子どもだし、あまりにもどうしようもないことだから、クリスに当たるのも仕方がない。
 他の子どもも似たような経験をした子がいるのか、リンのことを止めず、黙って見ていた。
 だが、これだけは言っておかなければと、クリスは泣いて少し落ち着いたリンの両肩を掴む。

「ひっ!?」

 何かされるのではと、リンはひきつった悲鳴を上げる。
 クリスはリンの目を真剣に見つめて、こう言った。

「君、危ないから、こういうことは次からはするな」
「え?」

 リンはポカンとする。
 クリスは真剣に怒っていた。

「たまたま僕だったからよかったけど、もし他者を刺すことにためらいのない相手だったら、君、仕返しに刺されて大怪我するよ!
 相手によっては殺されることだってあるんだから、こういうことは絶対にしちゃダメだ!」

 強い口調だが声を荒げることなく、諭すように怒るクリスに、リンだけでなく周りの子どもたちも呆気にとられる。

「……怒ってないの?」

 リンがおずおずと聞いた。

「怒ってるよ」

 クリスはカンカンに怒っている。
 子どもなのに自分が危険な目に合うかもしれないことをしたのだ。怒らずにはいられなかった。

「そうじゃなくて……」
「? なんだい?」

 リンは戸惑って口をもごもごさせる。
 リンが何を言いたいのかわからなくて、クリスは首を傾げた。

「お前、変な奴だな」

 周りにいた子どもたちの1人がポツリと言った。

「えー……」

 クリスは軽くショックを受けた。
 最近、変わった奴呼ばわりをよくされるが、子どもから変な奴呼ばわりは結構ダメージがある。
 そのクリスの様子がおかしかったのか、誰かがプッと吹き出した。

「クククク……」
「う、ふふふふ……!」
「アハハハハ……!」

 その笑い声は徐々に大きく広がり、リンまで巻き込む笑いの合唱になる。
 なぜ子どもたちが笑っているかわからないクリスは、そのまま呆気にとられて突っ立っているしかなかった。
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