その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、選択する21

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 ――その日、村を訪ねて来たのは奇妙な2人組だった。
 村長であるマキノはその2人を見た時、とっさに回れ右して帰りたくなった。
 1人は見目麗しい少女だったが、もう1人が角の生えた魔族の男だったからだ。
 その男はうつむき、なぜか鎖に繋がれた首輪をしている。

「あなたがこの村の代表ですか?」

 少女が笑顔でマキノに聞いた。片手は鎖を握りしめたままで。

「はい、村長のマキノといいます」

 名乗りながらも、ついつい魔族の男に目が行ってしまう。

「この男は私が捕まえた魔族で、今は服従の魔法をかけているので安全ですよ」

 マキノの視線に気づいたのか、少女は説明した。
 マキノは驚く。どう見ても10代半ばくらいの少女が魔族を捕まえたというのだ。驚かずにはいられない。
 何かの虚偽かとも思ったが、魔族がそんなことに協力するとは思えなかったし、角は髪の根元からきちんと生えているようだった。

「申し遅れました。私はレイといいます。
 実はこの村にお願いがあって参りました」
「お願い、とは?」
「この魔族が捕らえていた子供たちを預かって欲しいのです」

 マキノは目を見開く。

「なぜ、この村に?」
「この村が近かったからです。もちろん、お礼はします」

 そして袋から出したのは、見たこともないほどの金貨と銀貨だった。
 思わずマキノは生唾を飲む。
 普通に暮らしていたら、一生手にすることのない大金だった。

「引き受けてくださるのでしたら、このうちの3割を差し上げます」

 少女は蠱惑的に微笑む。
 たった3割でも、とんでもない大金だ。

「引き受けましょう」

 そう答えると、パアッと少女の顔に満面の笑みが広がる。

「では、こちらに名前をお願いします」

 そう言って出された2枚の紙には、流麗な字で「子どもたちが大人になるための資金として6割は使うこと」「子どもたちは大切に育てること」などいくつか決まりが書いてある。2枚とも同じ文面のようだ。
 マキノは特に深く考えずにサインをした。

「ありがとうございます」

 少女はそのうち1枚をバッグにいれる。

「子どもたちはここから東にある洋館にいます。皆さんで迎えに行ってもらえますか?」
「まぁ、それくらいはいいですよ」

 大金をもらっているのだ。多少のことは引き受けよう。

「あと、あの洋館で違法な実験が行われていたようなのです。
 国の方へ調査を依頼してもらってもいいでしょうか?」
「……いいですけど」

 それくらい自分たちでやればと思ったが、口には出さなかった。
 だが、顔には出ていたらしく、少女は苦笑する。

「実はちょっと先を急いでいるので、いろいろ任せてしまい、申し訳ございません」
「あ、いや……大丈夫ですよ」

 少女は深々頭を下げたので、マキノは慌てて否定した。
 すると、パッと少女は顔を上げる。

「それではよろしくお願いしますね!」
「あ、ああ、うん」

 なんだか誤魔化されたような気がしたが、特に追及はしなかった。
 少女が去る時、ふと思い出したように口を開く。

「そういえば、その紙には書いてあることを破ると、不幸になる呪いをこの魔族にかけてもらったんですよ」

 衝撃の事実に、マキノの体が硬直する。

「あ、書いてあることを破らなければ何も起きないそうなので安心してください!」

 満面の笑みで言われたが、全く安心できなかった。
 少女たちはそのまま去っていった。

 マキノは頭を抱えてため息をつく。
 ここにある紙を破くなり燃やしても、まだ少女が持つ紙がある。
 魔族を服従させる少女に村の者が勝てるとは到底思えない。
 マキノは少女のお願いを聞いたことを後悔しながらも、子どもたちを迎えに行く準備を始めた。
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