104 / 179
魔王、選択する21
しおりを挟む
――その日、村を訪ねて来たのは奇妙な2人組だった。
村長であるマキノはその2人を見た時、とっさに回れ右して帰りたくなった。
1人は見目麗しい少女だったが、もう1人が角の生えた魔族の男だったからだ。
その男はうつむき、なぜか鎖に繋がれた首輪をしている。
「あなたがこの村の代表ですか?」
少女が笑顔でマキノに聞いた。片手は鎖を握りしめたままで。
「はい、村長のマキノといいます」
名乗りながらも、ついつい魔族の男に目が行ってしまう。
「この男は私が捕まえた魔族で、今は服従の魔法をかけているので安全ですよ」
マキノの視線に気づいたのか、少女は説明した。
マキノは驚く。どう見ても10代半ばくらいの少女が魔族を捕まえたというのだ。驚かずにはいられない。
何かの虚偽かとも思ったが、魔族がそんなことに協力するとは思えなかったし、角は髪の根元からきちんと生えているようだった。
「申し遅れました。私はレイといいます。
実はこの村にお願いがあって参りました」
「お願い、とは?」
「この魔族が捕らえていた子供たちを預かって欲しいのです」
マキノは目を見開く。
「なぜ、この村に?」
「この村が近かったからです。もちろん、お礼はします」
そして袋から出したのは、見たこともないほどの金貨と銀貨だった。
思わずマキノは生唾を飲む。
普通に暮らしていたら、一生手にすることのない大金だった。
「引き受けてくださるのでしたら、このうちの3割を差し上げます」
少女は蠱惑的に微笑む。
たった3割でも、とんでもない大金だ。
「引き受けましょう」
そう答えると、パアッと少女の顔に満面の笑みが広がる。
「では、こちらに名前をお願いします」
そう言って出された2枚の紙には、流麗な字で「子どもたちが大人になるための資金として6割は使うこと」「子どもたちは大切に育てること」などいくつか決まりが書いてある。2枚とも同じ文面のようだ。
マキノは特に深く考えずにサインをした。
「ありがとうございます」
少女はそのうち1枚をバッグにいれる。
「子どもたちはここから東にある洋館にいます。皆さんで迎えに行ってもらえますか?」
「まぁ、それくらいはいいですよ」
大金をもらっているのだ。多少のことは引き受けよう。
「あと、あの洋館で違法な実験が行われていたようなのです。
国の方へ調査を依頼してもらってもいいでしょうか?」
「……いいですけど」
それくらい自分たちでやればと思ったが、口には出さなかった。
だが、顔には出ていたらしく、少女は苦笑する。
「実はちょっと先を急いでいるので、いろいろ任せてしまい、申し訳ございません」
「あ、いや……大丈夫ですよ」
少女は深々頭を下げたので、マキノは慌てて否定した。
すると、パッと少女は顔を上げる。
「それではよろしくお願いしますね!」
「あ、ああ、うん」
なんだか誤魔化されたような気がしたが、特に追及はしなかった。
少女が去る時、ふと思い出したように口を開く。
「そういえば、その紙には書いてあることを破ると、不幸になる呪いをこの魔族にかけてもらったんですよ」
衝撃の事実に、マキノの体が硬直する。
「あ、書いてあることを破らなければ何も起きないそうなので安心してください!」
満面の笑みで言われたが、全く安心できなかった。
少女たちはそのまま去っていった。
マキノは頭を抱えてため息をつく。
ここにある紙を破くなり燃やしても、まだ少女が持つ紙がある。
魔族を服従させる少女に村の者が勝てるとは到底思えない。
マキノは少女のお願いを聞いたことを後悔しながらも、子どもたちを迎えに行く準備を始めた。
村長であるマキノはその2人を見た時、とっさに回れ右して帰りたくなった。
1人は見目麗しい少女だったが、もう1人が角の生えた魔族の男だったからだ。
その男はうつむき、なぜか鎖に繋がれた首輪をしている。
「あなたがこの村の代表ですか?」
少女が笑顔でマキノに聞いた。片手は鎖を握りしめたままで。
「はい、村長のマキノといいます」
名乗りながらも、ついつい魔族の男に目が行ってしまう。
「この男は私が捕まえた魔族で、今は服従の魔法をかけているので安全ですよ」
マキノの視線に気づいたのか、少女は説明した。
マキノは驚く。どう見ても10代半ばくらいの少女が魔族を捕まえたというのだ。驚かずにはいられない。
何かの虚偽かとも思ったが、魔族がそんなことに協力するとは思えなかったし、角は髪の根元からきちんと生えているようだった。
「申し遅れました。私はレイといいます。
実はこの村にお願いがあって参りました」
「お願い、とは?」
「この魔族が捕らえていた子供たちを預かって欲しいのです」
マキノは目を見開く。
「なぜ、この村に?」
「この村が近かったからです。もちろん、お礼はします」
そして袋から出したのは、見たこともないほどの金貨と銀貨だった。
思わずマキノは生唾を飲む。
普通に暮らしていたら、一生手にすることのない大金だった。
「引き受けてくださるのでしたら、このうちの3割を差し上げます」
少女は蠱惑的に微笑む。
たった3割でも、とんでもない大金だ。
「引き受けましょう」
そう答えると、パアッと少女の顔に満面の笑みが広がる。
「では、こちらに名前をお願いします」
そう言って出された2枚の紙には、流麗な字で「子どもたちが大人になるための資金として6割は使うこと」「子どもたちは大切に育てること」などいくつか決まりが書いてある。2枚とも同じ文面のようだ。
マキノは特に深く考えずにサインをした。
「ありがとうございます」
少女はそのうち1枚をバッグにいれる。
「子どもたちはここから東にある洋館にいます。皆さんで迎えに行ってもらえますか?」
「まぁ、それくらいはいいですよ」
大金をもらっているのだ。多少のことは引き受けよう。
「あと、あの洋館で違法な実験が行われていたようなのです。
国の方へ調査を依頼してもらってもいいでしょうか?」
「……いいですけど」
それくらい自分たちでやればと思ったが、口には出さなかった。
だが、顔には出ていたらしく、少女は苦笑する。
「実はちょっと先を急いでいるので、いろいろ任せてしまい、申し訳ございません」
「あ、いや……大丈夫ですよ」
少女は深々頭を下げたので、マキノは慌てて否定した。
すると、パッと少女は顔を上げる。
「それではよろしくお願いしますね!」
「あ、ああ、うん」
なんだか誤魔化されたような気がしたが、特に追及はしなかった。
少女が去る時、ふと思い出したように口を開く。
「そういえば、その紙には書いてあることを破ると、不幸になる呪いをこの魔族にかけてもらったんですよ」
衝撃の事実に、マキノの体が硬直する。
「あ、書いてあることを破らなければ何も起きないそうなので安心してください!」
満面の笑みで言われたが、全く安心できなかった。
少女たちはそのまま去っていった。
マキノは頭を抱えてため息をつく。
ここにある紙を破くなり燃やしても、まだ少女が持つ紙がある。
魔族を服従させる少女に村の者が勝てるとは到底思えない。
マキノは少女のお願いを聞いたことを後悔しながらも、子どもたちを迎えに行く準備を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
攻略. 解析. 分離. 制作. が出来る鑑定って何ですか?
mabu
ファンタジー
平民レベルの鑑定持ちと婚約破棄されたらスキルがチート化しました。
乙ゲー攻略?製産チートの成り上がり?いくらチートでもソレは無理なんじゃないでしょうか?
前世の記憶とかまで分かるって神スキルですか?
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
※AI学習禁止・無断転載禁止・無断翻訳禁止・無断朗読禁止
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
溺愛少女、実はチートでした〜愛されすぎて大忙しです?〜
あいみ
ファンタジー
亡き祖父母との約束を守るため、月影優里は誰にでも平等で優しかった。
困っている人がいればすぐに駆け付ける。
人が良すぎると周りからはよく怒られていた。
「人に優しくすれば自分も相手も、優しい気持ちになるでしょ?」
それは口癖。
最初こそ約束を守るためだったが、いつしか誰かのために何かをすることが大好きになっていく。
偽善でいい。他人にどう思われようと、ひ弱で非力な自分が手を差し出すことで一人でも多くの人が救われるのなら。
両親を亡くして邪魔者扱いされながらも親戚中をタライ回しに合っていた自分を、住みなれた田舎から出てきて引き取り育ててくれた祖父祖母のように。
優しく手を差し伸べられる存在になりたい。
変わらない生き方をして二十六歳を迎えた誕生日。
目の前で車に撥ねられそうな子供を庇い優はこの世を去った。
そのはずだった。
不思議なことに目が覚めると、埃まみれの床に倒れる幼女に転生していて……?
人や魔物。みんなに愛される幼女ライフが今、幕を開ける。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる