その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

文字の大きさ
116 / 179

魔王、共闘する8

しおりを挟む
「ヨハン、ここで何をしているんだい?」

 クリスがヨハンたちに近づくと、ヨハンは目を見開く。

「クリス!? なんでここにいるんだ?」
「それ、僕が聞いているんだけど?」
「いや、なんか村っぽいところがあったから寄ってなんか買おうと思ったんだ。けど、なんか住人に警戒されているみたいで、逃げられているんだよなぁ」

 なんでだろ、と首を傾げるヨハンにクリスは苦笑した。

「ここは人間をよく思わない種族の村なんだよ」
「え、何の種族ですか!?」

 ルディアが目を輝かせ質問するが、クリスはスルーする。

「そういう訳で君たちはさっさと先に進んだら?」

 そう提案するクリスにヨハンは訝しむ。

「……お前はどうするんだ?」
「ちょっと用事ができたから、この村に残るよ」
「じゃあ、俺たちも残る!」

 拳を握り断言するヨハンに、クリスは目を瞬く。

「え、なんで?」
「お前が何の意味もなく残る方が不自然だろ? つまり、なんかこの村で起こるかもしれないってことだ! なら俺も手助けがしたい!」
「……別に普通に滞在するのかもしれないよ?」

 反論するが、ヨハンは首を横に振る。

「お前だけならともかく、オークたちやメイも一緒だろ? お前が皆を放っといて滞在するのはあり得ないからな。そんな集団を歓迎する奴はそんなにいないはずだ」

 ヨハンの言う通り、オークだけ、人間だけならともかく、それらのバラバラの種族が入り交じったクリスたちを受け入れる者はほぼいないだろう。
 だが、それを覆すような反論材料がクリスにはあった。

「僕が聖剣に選ばれたから歓迎されたのかもしれないよ?」

 そう、この「聖剣に選ばれた者」というのは、魔族とか以外に本来歓迎されやすい要素なのだ。ただ、今回はクリスのような魔族が選ばれたというイレギュラーで、あまり意味を成していないが。

「う、それは……」

 ヨハンが口ごもる。

「あー、もう、まどろっこしい!」

 エレナが髪をかきむしった。

「この村に何か起こるの、 それとも何も起こらないのどっちなわけ!? それともあんたが何か企んでいるの!?」

 いきり立つエレナにクリスはため息を吐く。まぁ、彼らなら伝えても問題はないだろう。

「この村に魔王の幹部の魔族が来るらしいんだ」

 クリスの言葉にヨハンたちは息を飲む。

「幹部ってどんな奴? 強い、のか?」

 ヨハンがクリスに聞く。

「サーニャ曰く強いらしいよ」
「でも、お前なら勝てるだろ?」
「さあ?」

 クリスは首を傾げる。
 サーニャは勝てると言っていたが、相性などもあるため、正直わからなかった。

「なら、俺も手伝う!」

 ヨハンが宣言した。
 クリスは少し考える。
 ヨハンの持つ聖剣の能力を使えば、典型的な魔法重視の魔族は簡単に倒せるだろう。
 あとの4人も人間にしては高い戦力らしいので、魔族相手でも工夫すれば役に立つかもしれない。
 断る理由はなかった。

「わかった。けど、僕やこの村の者の言うことを聞けるかい?」
「なんであんたたちの言うことを聞かないといけないのよ?」

 エレナが口を尖らせる。

「聞けないなら足手まといになる可能性が高いからね」
「まるで私たちだけじゃ勝てないみたいに言うのね!」
「うん、そう言っている」

 クリスが肯定すると、エレナは唖然とした。
 それには構わず、クリスは1番冷静に判断できそうな者に目を向ける。

「ガルム、ヨハン以外で魔族と真正面から戦って勝てる者はいると思うかい?」

 ガルムは唸ると、首を横に振る。

「無理だろうな。我々の攻撃は防がれてしまうだろうし、魔法に優れたルディアでも魔族の魔法に勝てるかは怪しいだろう」
「うん。だけど君たちは基本真正面からしか戦ってないよね? それなら勝てるものも勝てないよ」

 ガルム以外の3人は目を泳がせる。
 確かにクリスの言う通りだった。

「けど、四六時中周りに障壁を張っている魔族なんていないんだ。だからそういう隙に魔法や矢は当てられるし、魔法を過信している魔族は、攻撃中は背中ががら空きなことが多い。
 つまり、やり方を工夫すれば君たちでも魔族は倒せるんだ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

異世界転移したと思ったら、実は乙女ゲームの住人でした

冬野月子
恋愛
自分によく似た攻略対象がいるからと、親友に勧められて始めた乙女ゲームの世界に転移してしまった雫。 けれど実は、自分はそのゲームの世界の住人で攻略対象の妹「ロゼ」だったことを思い出した。 その世界でロゼは他の攻略対象、そしてヒロインと出会うが、そのヒロインは……。 ※小説家になろうにも投稿しています

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

処理中です...