その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王と買い物4

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 クリスたちがまず向かったのは、サーニャの希望で服屋だった。
 色とりどりの服が壁などにかけられ、店内を鮮やかに彩っていた。

「これ、サーニャさんに似合いそうですね」
「この服に合う上着はどれだと思う?」

 楽しそうに服を取って合わせたりしている女性陣に対し、クリスたち男性陣は邪魔にならないように壁際に突っ立っている。
 店内の服のほとんどが女物というのもあるが、実はクリスは服に興味が薄かった。
 あまりに華美だったり高価じゃなければなんでもいいという考えであるため、普段着は周りの者たちに任せっぱなしなのだ。
 他の勇者一行の3人も似たような感じらしく、所在なさげにしている。
 だが、そんなクリスに試練が迫って来た。

「クリス様、どっちが似合うと思いますか?」

 無邪気に目をキラキラさせて、メイが2着のワンピースを持って来たのだ。1着は黒に白いフリルがあしらわれたシックなワンピースで、もう1着はピンク色の花の刺繍がかわいらしいワンピースである。

(ど、どっちが正解なんだ……?)

 クリスは内心冷や汗をかく。

 「好きな方を着ればいいんじゃないか」というのが本音だが、そう答えるのはなんか違う気がする。
 横目で勇者一行の3人を見るが、3人共顔を背けていた。頼りになりそうにない。

「……どっちも似合うと思うよ」

 考えた末にクリスはにっこりと笑って誤魔化すように言った。

「では、どっちがクリス様は好きですか?」

 ニコニコしながらメイは更なる追い討ちをかけて来た。

「……黒の方、かな」

 クリスはなんとか答える。ちなみにピンクより黒の方が好きな色という理由である。
 メイはパアッと顔を輝かせる。

「それでは、こちらを買いますね!」

 そう言ってウキウキしながら会計に向かった。メイはクリスたちに同行する際にいくらかお金を持ち出していたため、自分で自由に使える資金があるのだ。
 メイの背中を見送っていたクリスにふと、とある一角が目に止まる。
 クリスはそこにふらふらと吸い寄せられるように近づいた。

 メイが会計を終えて戻ると、クリスの姿がなかった。

「あら?」

 キョロキョロと周りを見渡すと、少し離れたところでクリスが商品を手に取っている。

「クリス様、何を見ているのですか?」

 メイが覗き込むと、クリスはメイの方に顔を向けた。

「うん、買うつもりはないけど、ちょっと気になってね」

 そう言って見せたのは大きめの白い帽子である。

「帽子、ですか?」
「うん。ざっと見たところ入りそうなのがこれだけみたいだったけどね」

 そう言われてメイはクリスの頭を見たが、そんなに大きいようには見えない。

「これがちょっと問題でね」

 クリスは苦笑して帽子の側面を叩いた。コツコツと硬質な音がする。
 メイはそこに角があることを思い出した。クリスはほとんど帽子を取らないから、角の存在を忘れていたのだ。

「……隠すのなら、サーニャさんと同じ方法でもいいのではないですか?」

 角という言葉を隠してメイが言うと、クリスはキョトンとする。

「……僕は隠すために帽子を被っているんじゃないよ」

 意外な言葉にメイは目を丸くした。

「では、なぜ帽子を被っているのですか?」

 クリスは首を少し傾げて唸る。

「うーん、なんとなく、好きだからだね」
「帽子が好きなのですか?」 
「うん。もしかしたら、服より帽子の方がたくさん持っているかもしれないな」

 苦笑しながら言うクリスの帽子をメイはしげしげ見る。

「てっきり隠すためだと思ってました」
「安定させて被ると隠れるからね。それに、僕のいた国では隠す必要はないよ」

 そう言われて、メイはクリスのいた国が人間以外の異種族から成っていることを思い出した。

「……確かに、隠す意味はありませんよね」

 むしろ隠すと人間に見えるから、隠す方が悪い意味で目立ちそうである。
 メイはクリスが手に取った帽子をみる。赤い帽子も似合うが、白い帽子も悪くないかもしれない。
 メイはクリスの手から帽子を取った。

「まだお金に余裕があるので、買ってきますね!」
「え、いや、大丈夫だよ!」

 慌てるクリスにメイは笑みを返す。

「私がクリス様にこの帽子を被って欲しいのです!」

 そう言われてはクリスも断りづらい。
 上機嫌で会計に向かうメイの背中をクリスは苦笑して眺めた。
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