142 / 179
魔王と買い物4
しおりを挟む
クリスたちがまず向かったのは、サーニャの希望で服屋だった。
色とりどりの服が壁などにかけられ、店内を鮮やかに彩っていた。
「これ、サーニャさんに似合いそうですね」
「この服に合う上着はどれだと思う?」
楽しそうに服を取って合わせたりしている女性陣に対し、クリスたち男性陣は邪魔にならないように壁際に突っ立っている。
店内の服のほとんどが女物というのもあるが、実はクリスは服に興味が薄かった。
あまりに華美だったり高価じゃなければなんでもいいという考えであるため、普段着は周りの者たちに任せっぱなしなのだ。
他の勇者一行の3人も似たような感じらしく、所在なさげにしている。
だが、そんなクリスに試練が迫って来た。
「クリス様、どっちが似合うと思いますか?」
無邪気に目をキラキラさせて、メイが2着のワンピースを持って来たのだ。1着は黒に白いフリルがあしらわれたシックなワンピースで、もう1着はピンク色の花の刺繍がかわいらしいワンピースである。
(ど、どっちが正解なんだ……?)
クリスは内心冷や汗をかく。
「好きな方を着ればいいんじゃないか」というのが本音だが、そう答えるのはなんか違う気がする。
横目で勇者一行の3人を見るが、3人共顔を背けていた。頼りになりそうにない。
「……どっちも似合うと思うよ」
考えた末にクリスはにっこりと笑って誤魔化すように言った。
「では、どっちがクリス様は好きですか?」
ニコニコしながらメイは更なる追い討ちをかけて来た。
「……黒の方、かな」
クリスはなんとか答える。ちなみにピンクより黒の方が好きな色という理由である。
メイはパアッと顔を輝かせる。
「それでは、こちらを買いますね!」
そう言ってウキウキしながら会計に向かった。メイはクリスたちに同行する際にいくらかお金を持ち出していたため、自分で自由に使える資金があるのだ。
メイの背中を見送っていたクリスにふと、とある一角が目に止まる。
クリスはそこにふらふらと吸い寄せられるように近づいた。
メイが会計を終えて戻ると、クリスの姿がなかった。
「あら?」
キョロキョロと周りを見渡すと、少し離れたところでクリスが商品を手に取っている。
「クリス様、何を見ているのですか?」
メイが覗き込むと、クリスはメイの方に顔を向けた。
「うん、買うつもりはないけど、ちょっと気になってね」
そう言って見せたのは大きめの白い帽子である。
「帽子、ですか?」
「うん。ざっと見たところ入りそうなのがこれだけみたいだったけどね」
そう言われてメイはクリスの頭を見たが、そんなに大きいようには見えない。
「これがちょっと問題でね」
クリスは苦笑して帽子の側面を叩いた。コツコツと硬質な音がする。
メイはそこに角があることを思い出した。クリスはほとんど帽子を取らないから、角の存在を忘れていたのだ。
「……隠すのなら、サーニャさんと同じ方法でもいいのではないですか?」
角という言葉を隠してメイが言うと、クリスはキョトンとする。
「……僕は隠すために帽子を被っているんじゃないよ」
意外な言葉にメイは目を丸くした。
「では、なぜ帽子を被っているのですか?」
クリスは首を少し傾げて唸る。
「うーん、なんとなく、好きだからだね」
「帽子が好きなのですか?」
「うん。もしかしたら、服より帽子の方がたくさん持っているかもしれないな」
苦笑しながら言うクリスの帽子をメイはしげしげ見る。
「てっきり隠すためだと思ってました」
「安定させて被ると隠れるからね。それに、僕のいた国では隠す必要はないよ」
そう言われて、メイはクリスのいた国が人間以外の異種族から成っていることを思い出した。
「……確かに、隠す意味はありませんよね」
むしろ隠すと人間に見えるから、隠す方が悪い意味で目立ちそうである。
メイはクリスが手に取った帽子をみる。赤い帽子も似合うが、白い帽子も悪くないかもしれない。
メイはクリスの手から帽子を取った。
「まだお金に余裕があるので、買ってきますね!」
「え、いや、大丈夫だよ!」
慌てるクリスにメイは笑みを返す。
「私がクリス様にこの帽子を被って欲しいのです!」
そう言われてはクリスも断りづらい。
上機嫌で会計に向かうメイの背中をクリスは苦笑して眺めた。
色とりどりの服が壁などにかけられ、店内を鮮やかに彩っていた。
「これ、サーニャさんに似合いそうですね」
「この服に合う上着はどれだと思う?」
楽しそうに服を取って合わせたりしている女性陣に対し、クリスたち男性陣は邪魔にならないように壁際に突っ立っている。
店内の服のほとんどが女物というのもあるが、実はクリスは服に興味が薄かった。
あまりに華美だったり高価じゃなければなんでもいいという考えであるため、普段着は周りの者たちに任せっぱなしなのだ。
他の勇者一行の3人も似たような感じらしく、所在なさげにしている。
だが、そんなクリスに試練が迫って来た。
「クリス様、どっちが似合うと思いますか?」
無邪気に目をキラキラさせて、メイが2着のワンピースを持って来たのだ。1着は黒に白いフリルがあしらわれたシックなワンピースで、もう1着はピンク色の花の刺繍がかわいらしいワンピースである。
(ど、どっちが正解なんだ……?)
クリスは内心冷や汗をかく。
「好きな方を着ればいいんじゃないか」というのが本音だが、そう答えるのはなんか違う気がする。
横目で勇者一行の3人を見るが、3人共顔を背けていた。頼りになりそうにない。
「……どっちも似合うと思うよ」
考えた末にクリスはにっこりと笑って誤魔化すように言った。
「では、どっちがクリス様は好きですか?」
ニコニコしながらメイは更なる追い討ちをかけて来た。
「……黒の方、かな」
クリスはなんとか答える。ちなみにピンクより黒の方が好きな色という理由である。
メイはパアッと顔を輝かせる。
「それでは、こちらを買いますね!」
そう言ってウキウキしながら会計に向かった。メイはクリスたちに同行する際にいくらかお金を持ち出していたため、自分で自由に使える資金があるのだ。
メイの背中を見送っていたクリスにふと、とある一角が目に止まる。
クリスはそこにふらふらと吸い寄せられるように近づいた。
メイが会計を終えて戻ると、クリスの姿がなかった。
「あら?」
キョロキョロと周りを見渡すと、少し離れたところでクリスが商品を手に取っている。
「クリス様、何を見ているのですか?」
メイが覗き込むと、クリスはメイの方に顔を向けた。
「うん、買うつもりはないけど、ちょっと気になってね」
そう言って見せたのは大きめの白い帽子である。
「帽子、ですか?」
「うん。ざっと見たところ入りそうなのがこれだけみたいだったけどね」
そう言われてメイはクリスの頭を見たが、そんなに大きいようには見えない。
「これがちょっと問題でね」
クリスは苦笑して帽子の側面を叩いた。コツコツと硬質な音がする。
メイはそこに角があることを思い出した。クリスはほとんど帽子を取らないから、角の存在を忘れていたのだ。
「……隠すのなら、サーニャさんと同じ方法でもいいのではないですか?」
角という言葉を隠してメイが言うと、クリスはキョトンとする。
「……僕は隠すために帽子を被っているんじゃないよ」
意外な言葉にメイは目を丸くした。
「では、なぜ帽子を被っているのですか?」
クリスは首を少し傾げて唸る。
「うーん、なんとなく、好きだからだね」
「帽子が好きなのですか?」
「うん。もしかしたら、服より帽子の方がたくさん持っているかもしれないな」
苦笑しながら言うクリスの帽子をメイはしげしげ見る。
「てっきり隠すためだと思ってました」
「安定させて被ると隠れるからね。それに、僕のいた国では隠す必要はないよ」
そう言われて、メイはクリスのいた国が人間以外の異種族から成っていることを思い出した。
「……確かに、隠す意味はありませんよね」
むしろ隠すと人間に見えるから、隠す方が悪い意味で目立ちそうである。
メイはクリスが手に取った帽子をみる。赤い帽子も似合うが、白い帽子も悪くないかもしれない。
メイはクリスの手から帽子を取った。
「まだお金に余裕があるので、買ってきますね!」
「え、いや、大丈夫だよ!」
慌てるクリスにメイは笑みを返す。
「私がクリス様にこの帽子を被って欲しいのです!」
そう言われてはクリスも断りづらい。
上機嫌で会計に向かうメイの背中をクリスは苦笑して眺めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜
ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」
「街の井戸も空っぽです!」
無能な王太子による身勝手な婚約破棄。
そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを!
ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。
追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!?
優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。
一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。
「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——!
今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける!
※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる