その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王の友人5

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「いや、本当にごめんって」

 クリスはマイクに平謝りしていた。

「ごめんで済むか! こっちは何度も死ぬかと思ったんだぞ!」

 対するマイクは眉間に皺を寄せて怒っている。寝ぼけたクリスに何度も攻撃されたので当たり前である。
 先ほどからずっとクリスは謝っているが、マイクの機嫌は一向になおらない。

「……それはともかく、そんな危険を犯してまで僕を起こした用事ってなんだい?」

 このままだと本題に入れないと悟ったクリスは、軌道修正するために一旦謝るのを辞めた。

「あ、ああ、そうだった」

 本来の目的を思い出したマイクは、周囲に音を遮断する障壁を築く。
 つつがなく障壁ができたことを確認したマイクは、クリスをまっすぐ見つめて本題を切り出す。

「なぁ、お前、皆に国王であること黙っているのか?」

 クリスは一瞬キョトンする。
 そして大きく口を開けて一言だけ呟いた。

「…………あ」
「『あ』じゃない!」

 思わず怒鳴るマイクに、クリスは目を逸らしながら半笑いを浮かべる。

「いやぁ、ついつい説明が面倒で……」
「それだけか、それだけなのか!?」
「ええっと、えっと……」

 マイクは思わず問い詰めながら、襟を掴んで揺さぶった。クリスはされるがままカックンカックンと首を揺らす。
 何回かクリスの首を往復させた後、少し気が済んだマイクは大きくため息を吐いた。

「まぁ、いい……けどお前、あの人間の女の子には伝えろよ」

 クリスの目が大きく見開かれた。

「メイのことかい?」
「ああ」

 マイクは頷いた後、少し躊躇ってから口を開く。

「お前、あの女の子に惚れているだろ?」

 思わぬ所で図星を突かれたクリスは慌てた。

「にゃ、にゃんの、ことたぁい!?」

 とっさに誤魔化そうとするが、噛んだ上に頬は真っ赤である。

「……あー、うん、お前、相変わらず誤魔化すの下手なんだな。
 ていうか、今まで隠しているつもりだったのか? ものすごくわかりやすかったぞ」

 メイに対する表情や態度など、所々好意が表れていて、むしろ見ているマイクの方が恥ずかしかった。

「そ、そんなに……」

 クリスはショックと恥ずかしさで頭を抱えて蹲る。

「まぁ、お前に隠し事なんて向いてないってことだな」

 マイクはクリスの背中にポンッと手を置いた。

「うう……でもそれと、王であることを話すことと、なんの関係があるんだい?」

 クリスは少し顔を上げながら横目でマイクを見上げる。

「いや、お前、そんな重要なこと、話さない方がおかしいだろ」

 マイクはさすがに大いに呆れた。

「それもそうなんだけど、どう話せばいいんだろう?」

 これにはマイクも言葉が詰まる。現状、クリスが国王であることを示すのは、クリス自身やマイクの言葉以外はない。つまり証拠も何もないのだ。

「……そういえばお前、なんでそんな格好なんだ?」

 マイクはクリスの服装を見て尋ねる。クリスは若草色のカーディガン、白いシャツ、茶色のズボンを履いている。生地は良いものだが、どこからどう見ても一般市民の格好である。

「休日で街にいた時に、召喚されたからだよ」
「あー、そういうことか」

 確かにクリスは昔から、休みの日はこういった一般市民の格好で遊びに来ていた。

「で、国王が着る服は?」

 国王の格好は黒い繊細な装飾の入った仮面に光沢のある黒いマント、上質な生地の金や銀の糸で装飾された黒い服である。
 なぜ黒ばかりなのかというと、人間にとって「魔王」とは悪者らしいので、それっぽくした結果らしい。
 「いや、そこ合わせなくても……」という意見はたくさんあった。だが、いざ国王に会った勇者に「こんなの魔王じゃない!」と言われて別の者が犠牲になると困るため、結局黒ずくめになったそうだ。
 それはともかく、国王の格好なら王であることを信じてもらえるかもしれないと、クリスに聞く。

「……城に置いてきた」

 さすがに持ってきてはいなかったらしい。

「……まあ、信じてもらえるかわからないけど、伝えるだけ伝えろよ」

 しょぼくれるクリスに、半笑いしながらマイクはそれだけ言った。
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