その勇者、実は魔王(改訂版)

そこら辺の人🏳️

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魔王、襲撃する7

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 ――しばらくして。

「ちょ、ちょっと、あいつ、なんなのよ!」

 ハナンは目を丸くしながら小声で作業をしているマイクに声をかける。

「まぁ、確かに種族や見た目からしたら意外かもな」

 ハナンの驚きようにマイクは苦笑する。
 目の前にはクゥが襲いかかる兵士たちを次々蹴散らしていた。
 1対1では難なく勝ち、多数に囲まれても素早く動いてあっさりと抜け出す。
 始めは怖々見ていた人間たちも、クゥが勝ち進むにつれ歓声を上げたり、拍手を送ったりしている。

「嘘でしょ……!? あいつ魔族のはずよね!?」

 見たところ、クゥが魔法を使っている様子はない。
 兵士の中には魔法を使う者もいるが、それら全てをクゥは魔法を使わず、あえて聖剣を使って切って防いでいる。
 魔族の強さというのは通常、魔法の強さである。
 溢れるほどの魔力とそれをコントロールする能力こそが、魔族が強い種族と言われている所以だ。決して肉体が強固とか、戦いの技術が優れているからではない。
 だが、クゥの戦い方は、その常識を覆している。

「うーん、あいつが立ち向かわなければならない相手に、魔法がほとんど効かない奴がいるんだよ」
「は!? 何なのよ、その化け物!?」

 にべもない言い方にマイクは苦笑いする。

「俺たちの世界の勇者はな、聖剣の力なのか、魔法が効かないんだ」

 勇者、という言葉にハナンは戸惑う。

「えっと、それって魔法は全部切られるってこと?」
「それもあるけど、大抵の魔法は当たっても霧散してしまうんだ。障壁もどんなに固く厚くしても通り抜けるらしい」
「何よそれ……ほとんど無敵じゃない!」

 特に魔法に頼り切っている魔族にとっては天敵だろう。

「だから、あいつは普通ならやらなくていい、剣やら体術やら鍛えまくっているんだ。あいつより強い奴なんて、俺はあいつの父親や騎士団長くらいしか知らない」

 ハナンは目を見開いてクゥを凝視した。
 あっさりと兵士を下すその姿からは、そんな努力など欠片も見えない。
 そしてふと、気になったことを呟く。

「勇者と戦うなんて、魔王みたいね」
「…………」

 ハナンが何気なく口にした言葉にマイクは押し黙る。
 怪訝に思ったハナンがマイクを見ると、ものすごく複雑な表情をしていた。

「どうしたの? 何かまずいことでも言った?」

 暫し考えた末、マイクは軽く息を吐いてから衝撃的なことを言った。

「……まぁ、あたらかずといえども遠からずってところかな」
「え…………えええええええ!?」

 ハナンの絶叫は、幸い、人間たちの歓声と拍手にかき消され、誰にも気づかれなかったのだった。



 その頃、ショタレーン王国国王カズトは顔を青くしていた。

「な、なんということだ……」

 カズトの目の前で次々に兵士が倒れていく。それもたった1人を相手にして。
 兵士たちのほとんどは精鋭の近衛兵である。厳しい選抜を勝ち抜いた優秀な者たちだ。
 他にも宮廷に仕える魔法使いも参加している。彼らは国内では突出した才能を持っている魔法使いだ。
 それなのに、あっという間にやられてしまった。
 しかも相手は魔法を使っていない。手加減すらされているのだ。
 カズトは悔しさで奥歯を噛み締める。
 それとは対照的に、勇者と名乗る者は歓声や拍手に応えて笑顔でお辞儀をしたり手を振ったりしている。
 それがますますカズトを苛立たせる。

 ふと、気がつく。

 ほとんどの者が呑気に拍手などをしているのは、あの者が魔族であることを知らないからではないかと。
 逆に魔族だと知ればこの場は恐慌状態に陥るだろう。
 しかも「聖剣を奪い、城で暴れた魔族」ということで、始末するもっともな理由ができる。
 カズトは口元に笑みを浮かべると、近くにいた魔法使いに指示を出す。

「あの男の帽子を落とせ」
「は!」

 魔法使いは短く答えると、持っていた杖から小さな魔力の球を作る。それを勇者の帽子に向けて放った。
 勇者は己自身を狙った攻撃でないためか、攻撃に気づく様子はない。
 カズトは自身の思惑の成功にほそく笑む。
 魔法の球が帽子に当たり、勇者の帽子を落とした。
 顕になった勇者の頭を見た時、カズトは驚愕で目を見開く。
 なぜなら、そこには魔族ならあるはずの角が存在しなかったからだ。
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