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しおりを挟むたたた、と駆けて行くメニアの後ろ姿をセリウスは唖然と見つめる。
シャロンは駆けて行くメニアの後ろ姿と、唖然と視線を向けるセリウス二人に交互に視線を向けてから、セリウスに「ちょっと、」と声を掛けた。
「──何で急にあの女態度が変わっているの?セリウス、貴方変なヘマしていないわよね?」
「こんな所でメニアをあの女、何て言うな。何処で誰が聞いているか分からないんだぞ?……メニアには何もバレていないさ。俺との婚約だってこのままだし」
「……その言葉信じていいのよね?」
「勿論。何なら俺に自白の魔法でも掛けるか?」
こそこそ、ひそひそと声を落として会話を続けていると、セリウスがそのような事を話して来たのでシャロンは鼻で笑い飛ばすと「結構よ」とキッパリと言い切る。
「──まあ、何事も無ければいいのよ。それより、レブナワンド侯爵家は本当にこの国の聖女にあの女を推薦するの?」
シャロンの言葉に、セリウスはちらりとシャロンに一度視線を向けてから学院の正門へと向かい歩き出す。
セリウスが歩き出した事で、シャロンも慌てて自分の足を動かすとセリウスと並び、シャロンも学院の正門へと歩いて行く。
「ああ。この国では光属性魔法の使用者が年々減少傾向にあるだろ。今は治癒魔法が使えるだけで光魔法属性の使用者は称えられるんだ。メニアは一応治癒魔法以外にも、魔法障壁を展開出来るからな」
「だけど、たかだか治癒魔法と魔法障壁でしょう?治癒魔法だって、広域に展開出来る訳でも無し。精々数人を同時に治癒する事が出来る程度じゃない?」
「──それでも、二つの魔法を行使出来るのは国と、聖寺院にとってはかなり希少な存在だからな」
「ふうん……。まあ、この国の聖女に認められれば、聖女の権限で王宮に入れる場所もあるし、希少な資料の閲覧許可も得られるものね」
シャロンの言葉に、セリウスは満足そうにこくり、と頷くと周囲に学院の生徒が増えて来た事から、それ以上その話を口にせず、表情をぱっと変えると今日の授業の事について話し始めた。
午前中の授業が終わり、メニアは小さく溜息を付くと机からのろのろと立ち上がる。
今までと同じように昼食をセリウスと、シャロンと共に取らなくてはいけない。
今日の放課後からは共に帰る事を断った。
それなのにそれに加えて、昼食も断ってしまったらシャロンに何かあったのだろう、と思われてしまう。
メニア自身はそうなってもいいと思ってはいるが、学院内で揉めると面倒だ。
セリウスとシャロン、二人の家は侯爵家だ。
侯爵家と、子爵家。
もし万が一何かしらの理由で揉めてしまった場合は爵位が下のメニアが責任を取らねばいけなくなる可能性がある。
釈然としないが、相手は侯爵家なのだからいたし方ない。
「ああ……。行きたくないけど、そろそろ向かおうかしら……」
メニアは重い溜息を吐き出すと、この後の昼食の時間が憂鬱だわ。と考えながら待ち合わせの場所へと向かった。
今日は天気もいい事からか、中庭には学院の生徒達が多く、ぱらぱらと各々自分の落ち着ける場所で昼食を広げ、食事を開始している。
メニアは、二人に合流したくない気持ちが大きすぎていつもよりも少し遅れて待ち合わせの中庭に到着した。
「──メニア!こっちよ!」
自分を呼ぶ明るい声に、メニアは声が聞こえた方向へ視線を向けて、へらりと笑みを浮かべてそちらへと足を向ける。
メニアの到着が遅かったからだろうか、セリウスとシャロンは既に中庭の芝生の上にシートを広げ昼食の準備をしている。
「遅れて申し訳ございません……っ」
「急がないで大丈夫よ、ゆっくり来て!」
メニアが二人に駆けて行こうとすると、シャロンが慌てたような表情を浮かべ、メニアを気遣う。
メニアはシャロンの言葉に有難く従うと、ゆっくりと二人に向かって行った。
「今日の授業はつまらなかったわ。もっと実用的な魔法の使用方法を教えてくれる授業が良かったのだけど……メニアは今日の授業どうだったのかしら?新しい事は学べた?」
メニアが二人に合流し、和やかに会話をしながら昼食を楽しんでいると、シャロンが突然そんな事を話し出した。
メニアは、自分の口の中に入れた昼食をもぐもぐと咀嚼し、こくりと飲み込むとシャロンの言葉に笑顔を浮かべながら言葉を返す。
「五元素魔法の授業は、そのような時もあるのですね。──私の方は、特にこれと言って新しい事を学ぶ事は無かったですね。いつも通り、光属性魔法の魔法の種類を学び、魔術を発動出来るかどうかの構築を練習してましたね」
「へえ、光属性魔法っていったいどれだけの種類があるのかしらね? 」
興味津々、と言った表情でそう話を続けるシャロンに、メニアは苦笑を浮かべ、誤魔化すように笑う。
光属性魔法の魔法の種類はまだ完全に調べられていない。
どんな種類の魔法が使えて、その魔法がいったいどんな作用を齎すのか。
それについてはメニアもしっかりと学びたいし、調べたいと思っているので放課後に図書館へ向かい、しっかりと調べようとシャロンとの会話で改めて思い直した。
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