気付くのが遅すぎた

高瀬船

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46 / 82

46 *暴力表現あり


人から暴力を受けた、と言う描写があります
(痛々しい表現・他人からの暴力表現)
**********************




「──フィミリア、私は少し前方の様子を確認してくるから絶対に馬車から出ないように。ミア、頼んだぞ」
「かしこまりました、旦那様」

フレディの言葉に、ミアが力強く頷く。
フィミリアは慌ててフレディに視線を移す。

「何があるか分かりませんっ、お父様も気を付けて下さいっ!」
「ああ。大丈夫だよ」

フレディはフィミリアに優しく笑い掛けてから、馬車の扉を開けて外へと降り立つと、サーシャの案内の元前方へと向かった。






フレディがその場に辿り着くと、前方ではサーシャ以外の女性騎士達が剣を抜いた状態で戸惑い立ちすくんでいる様子が伺える。

「──何が起きているんだ……?」

女性騎士達は何かを取り囲んでいるようだが、その何かは騎士達の足元にあるらしく、どう対応すればいいのか分からないようで騎士達の空気感が揺らいでいる。

フレディが目を凝らして見詰めると、その何かは真っ黒の物体らしく、その場をぴくりとも動かない。

フレディは自分の隣を歩き、案内してくれていたサーシャに顔を向けると説明を求める。

「あの物体は、何だ……?無機物であれば、私を呼ばないだろう?そうするとあれは、獣か?」

獣なのであれば、瀕死の状態なのだろうか。
それとも、既に息絶えてしまっているのだろうか。
それすらも分からず、フレディが訝しげに眉を寄せるとサーシャ自身も歯切れ悪く説明を始めた。

「──それが……我々も初めは獣だと思ったのです。進む方向、前方を視界に入れて進んでいたのですが、視界の隅──森の方向から黒い影が動くのを感じて、即座に剣を抜き襲撃に備えたのです」

前方に進んで行くにつれて、段々とフレディの視界にもその地面にある真っ黒い物体の全容が見えて来る。

「それで、攻撃に備えたのですがその黒い影は我々を確認するなり、逃げるように進路を変更して、物凄い素早さで我々の目の前を横切ろうとしたのですが……」

視界に入っていた地面の真っ黒い物体が、微かに呼吸をしているのか、上下に動いているのが分かる。

「横切る寸前、突然その影が力尽きたかのようにカクン、と"膝"を折り、地面に崩れ落ちました」

真っ黒い物体だ、と思っていたのはどうやら衣服だったらしく、その衣服がボロボロに破れ、泥や汚れで黒く変色していたのが分かる。

破れた衣服から覗く、恐らく肌であろう部位は斬り傷や打撲の後だろうか。
斬られた部分は痛々しく変色し、打撲の後も骨が折れているのだろう。どす黒く、紫色のような何とも言えない色に変色している。

フレディはその様子を確認すると、瞳を見開き息を吸い込む。

「──恐らく、性別は男性のようでしたので、我々では判断出来ず、ハーツウィル子爵の判断を伺いたくこちらに来て頂きました」
「……っ、勿論助ける!あの大怪我では、何も出来ないだろうし、自身で身動き出来ないだろう!馬に乗せ、先に邸に運んでくれ!」

サーシャの言う通り、ボロボロの見た目から性別を確認する事は出来ないが、体付きから男性だろう、と言う事が分かる。

何故、こんな田舎をそんな出で立ちで彷徨っていたのかは分からないが、サーシャの話からは目の前を横切ろうとした所で力尽きた、と言うのであれば元々危害を加えるつもりでは無かったのだろう。
寧ろ、逃げようとしていたのでは無いだろうか、と考えフレディは即座にその男性を助ける事にした。
事情は分からないが、放っておけば確実に命を落としてしまう程の傷だ。

フレディは数人の騎士と共に、先に邸に向かう為サーシャにフィミリアへ伝言を言付けると、今にも息絶えてしまいそうな男性を馬に乗せて邸へと向かった。

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