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しおりを挟むバルハルムドはゆるり、と瞳を細めるとリスティアナから視線を外し後方へと振り返った。
バルハルムドの言葉に、ヴィルジールは納得が行かなかったのだろう。自分に背を向けたバルハルムドに向かって不服そうな表情で唇を開いた。
「王家の愚行など……っ! たった一度の過ちで何故そこまで……! 人間、だれしも間違える事はある筈です! それに、これは私とリスティアナの問題……! 陛下がご対応されるような事ではございません!」
ヴィルジールの言葉に、バルハルムドは呆れ果てたような表情を浮かべると幼子に言い聞かせるような口調でヴィルジールに向かって言葉を紡ぐ。
「お前に任せておく事は出来ないのだ。先程も言った通り、時間は充分に与えただろう。その時間内に今回の事柄を解決出来なかったのはお前では無いか? 子の過ちを正すのは親の務めでもあろう?」
「──っ、ですが陛下……!」
「話は終わりだ。来賓を迎えよ、と言ったのが聞こえなかったか? わざわざ海を挟んだ国からお越しだ」
「ら、来賓……ですか……?」
ヴィルジールは自分の前を歩いて行ってしまうバルハルムドを慌てて追うと、バルハルムドのその向こう──。
このパーティー会場の出入口に仰々しい武装をした他国の賓客、ウルム国の軍勢を見付けてヴィルジールはぎょっと瞳を見開いた。
「な、何ですか! あれは──……!」
「我が国と縁を結ぶ為にわざわざウルム国、第三王女殿下が参られた」
「え、縁──……っ!?」
一体バルハルムドは何を言っているのだろう、とヴィルジールはバルハルムドに視線を向けるが、バルハルムドから視線が戻ってくる事は無い。
スタスタと入口に近付いて行く自分の父親を慌てて追いながら、ヴィルジールは物々しい軍勢の中に煌びやかなドレスを着て、微笑む長身の女性の姿を見付ける。
美しいが、何処か性格が強そうな……ナタリアとは真逆で、何処かリスティアナに雰囲気の似た女性が立っており、その女性の隣には良く身知った男の姿があった。
「──あれは……、リスティアナの兄君のオルファ卿……? 帰国したのか……!?」
ヴィルジールが呆気にとられたように口をポカン、と開けて呟くとバルハルムドはヴィルジールへ振り向く事無くヴィルジールに答えた。
「オルファ卿には、我が国の使節団の代表としてウルム国王女、ティシア殿下を迎えて貰った」
「へ、陛下……っ、何故ウルム国の王女殿下が居られるのか……っ、縁を結ぶ、など……っ」
先程から縁を結ぶ、と言う言葉に嫌な予感を抱いていたヴィルジールは、顔色を悪くしながら小さく呟く。
国同士が縁を結ぶ、と言う事はすなわち王族同士が婚姻関係等を持って国同士の繋がりを強固にすると言う事だ。
「わ、私には……っリスティアナが……! それに、ナタリアは私の子を身篭っております……! リスティアナは兎も角、他国の王族を迎える場合子はどうなさるおつもりですか……っ」
周囲に聞こえないようにヴィルジールは声を顰めると、ウルム国のティシアとは婚姻など出来る筈が無い、と必死に訴える。
だが、バルハルムドはなんて事の無いようにヴィルジールに向かって唇を開いた。
「お前の子など居なかった。……王家の諜報部隊に探らせた為、確実だ。愚かにもあの子爵令嬢は我々王族を謀り、王族と高位貴族の婚約を破綻させた。……リスティアナ・メイブルム嬢との婚約を破綻させた責は無論お前にもある」
「──えっ、」
バルハルムドが発した言葉に、ヴィルジールは瞳を見開くと口を開けてその場に停止してしまう。
ヴィルジールの目の前で、バルハルムドはウルム国の王女であるティシアに挨拶を行うと、親しげに言葉を交わしている。
バルハルムドに向いていたティシアの視線がふ、とヴィルジールに向き、瞳を細めて真っ直ぐに見詰めて来るティシアの冷たい視線に、ヴィルジールは背筋に嫌な汗が伝う感覚がした。
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