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しおりを挟むアイーシャを呼ぶ、と言うマーベリックの言葉にベルトルトは更に焦り出す。
この場にアイーシャを呼び、確認されてしまえば先程の言葉が真っ赤な嘘だと言う事に気付かれてしまう。
そして、それに。とベルトルトはマーベリックの斜め後ろにいるリドルにちらり、と視線を向ける。
先程からリドルが口を開かないお陰でベルトルトの言葉が直ぐに嘘だ、と言う事がバレていないが、先日アイーシャから婚約を破棄しようと話された際にはリドルも同じ室内にいたのである。
あの時の自分達のやり取りをこの場で話されてしまえば、アイーシャを呼ぶ前に全てが嘘だと露呈してしまう。
ベルトルトはちらちらとリドルを気にしながらも、尚も言い訳のような言葉を口にする。
「き、きっとアイーシャは殿下に問われても私の事を愛していない、と言うでしょう……っ。アイーシャは自分の気持ちを中々見せてくれない、ので……っ、二人きりの時はそれはもう……っ、酷い嫉妬心を見せるのですが……っ」
「それならば心配無い。真偽を問う魔道具がある。ルドラン嬢が入室した時にはこの魔道具を使用して話しを始めよう。王家で昔から伝わる魔道具だ。効果は保証するぞ」
マーベリックがにっこりと笑顔を浮かべ、ベルトルトにそう言葉を紡ぎ、アイーシャを呼ぶように警備隊の者に声を掛けた。
が、ベルトルトはアイーシャを呼ばれる前にマーベリックの声を遮るように声を出した。
「でっ、殿下……! 申し訳ございませんっ!」
ベルトルトはこのままでは自分が王族に対して虚偽の発言をし、情報を撹乱し真実を隠蔽しようとした、とバレる事を恐れて観念したように全てを認めた──。
「──ふん。ルドラン嬢と合わせる事などある訳が無いだろう」
「……騙し討ちのような事をして……」
「始めに私を謀ったのはあちらだろう」
「まあ、いいけど……。しっかり自分の仕出かした事を認めたしね」
「──ああ。か弱い女性に対して、薬を用いて襲いかかろうとするなど外道の所業。惨たらしい罰を与えねばならんな」
「……私情が絡んでない?」
リドルは何処か緊張した面持ちで前を歩くマーベリックに声を掛ける。
だが、リドルに掛けられた言葉の意味が分からなかったのだろうか。マーベリックはきょとん、とした瞳でリドルに振り向いた。
「私情……? 私は自分の国に住まう国民を守る義務がある。……その為に行動したまでだ」
マーベリックはそう告げると、すたすたとアイーシャが待つ部屋へと足を進めて行く。
マーベリックの後ろ姿を見詰めながら、リドルは「無自覚かぁ」と小さく呟いた。
マーベリックとリドルが、アイーシャの待つ部屋へと戻り、ベルトルトと話した事。
そして、ベルトルトが自分の罪を認めた事を簡単にアイーシャに説明すると、アイーシャは予想外だと言うように驚いた表情を浮かべた。
「──まさ、か……ケティング卿が素直に認めるなんて……。認めない、と思っていましたので……」
「まあ、最初はな……。だが、最後にはしっかりと自分がアイーシャ・ルドラン嬢に対して行った事柄を全て話し、自分の犯した罪を認めた」
「……っ、ありがとうございます殿下……! 何とお礼を言ったらいいのか……。先日から助けて頂いてばかりで、申し訳ございません……っ」
「気にしないでくれ。ケティング卿は王城の牢へと移送してしっかりと裁きを受けるから安心して欲しい」
マーベリックの言葉に、アイーシャはほっと表情を和らげると「そうだ」と小さく言葉を零し、マーベリックとリドルが不思議そうな表情を浮かべている間に居住まいを正した。
「王太子殿下……それに、アーキワンデ卿。ご相談がございます」
「……先程、私が部屋を出る時に話した事柄かな?」
マーベリックの言葉に、アイーシャははっ、と顔を上げるとしっかりとマーベリックの顔を見詰め、こくりと小さく頷いた。
「クォンツ・ユルドラーク卿が滞在している場所は恐らく我がルドラン子爵領の近くと存じます。……つきましては、殿下とアーキワンデ卿がルドラン子爵領の山中を調査する際に、クォンツ卿を捜索させて頂きたく……私も調査に同行させて下さい」
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