【完結】お前なんていらない。と言われましたので

高瀬船

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 開けた場所に移動して来たアイーシャ達は、野営の準備をしてくれている調査隊の手伝いをしながら天幕を張る。

「ルドラン嬢。疲れたんじゃない? 水分しっかり取ってる?」
「アーキワンデ卿……。お気遣い頂きありがとうございます! しっかりと水分や食べ物は取ってますよ。アーキワンデ卿も食べてますか?」

 天幕を張り終え、各々が荷物を整理している時にアイーシャの様子を見にリドルがやって来てくれる。
 アイーシャは笑顔でリドルに言葉を返すと、リドルの体調も心配する。

 王都から比較的急ぎ足でやって来た為、しっかりと休憩を取る時間が無かったのではないか、とアイーシャは心配してリドルに言葉を掛けるが、リドルは「大丈夫だよ」とアイーシャに答える。

「俺はクォンツに付き合って魔法訓練とかを一緒にしてたから……普通の学園生よりは体力はあると思う」
「クォンツ様とアーキワンデ卿は仲が宜しいんですね?」
「意外そうに見える?」

 ふふっ、と揶揄うように瞳を細めてそう口にするリドルにアイーシャは慌てて首を横に振る。

「いえいえ……! お家も侯爵家と、公爵家ですし、昔から交流があったのかな、と思いまして」
「そうだね……。俺とマーベリック……王太子殿下は従兄弟同士なんだけど。殿下と俺が幼い頃にクォンツのお父上に魔法制御と、魔法剣士として師事を受けてたんだ。その時に、幼いクォンツとも知り合って、同年代だった俺達三人は顔見知りになってね」
「そうだったのですね……!」
「うん。俺とクォンツより二個年上のマーベリック殿下が学園を卒業する前は、良く三人で学園生活を楽しんでいたんだよ。クォンツのお父上はこの国でも優れた冒険者だからね、あの方に師事してとても勉強になったよ」

 クォンツのユルドラーク侯爵家は存外自由だろう? とリドルに言われ、アイーシャは確かに。と頷いてしまう。
 クォンツの母親であるユルドラーク侯爵がどっしりと構え、侯爵家を守り、クォンツの父親はこの国の力有る冒険者として魔物の討伐等に出る。
 そのような自由奔放な生き方は、妻である侯爵に広い心が無ければ無理だろう。

 アイーシャは、数日だけだがユルドラーク侯爵家に滞在した時の事を思い出してふふ、と笑ってしまう。

 侯爵として凛と背筋を伸ばし、アイーシャのように得体の知れない家門の子供にも手を差し伸べてくれる力強いユルドラーク侯爵の事を思い出して瞳を細める。
 いくら力有る侯爵家とは言え、貴族の家のごたごたに巻き込まれる事は忌避すべき事柄だ。

 だが、それでも息子であるクォンツの言葉にすんなりと頷き、無条件で受け入れてくれたユルドラーク侯爵の心の広さにアイーシャは感謝していたし、あのような強い女性になりたい、とも思っていた。

「今のお話を聞いて、何だかクォンツ様とアーキワンデ卿がとっても仲が良くて、何でも言い合える友人のような関係性に納得致しました。早く王太子殿下もクォンツ様とお会い出来ると良いですね」
「──うん、そうだね」

 本当に心からそう思っているのだろう。
 アイーシャの言葉に、リドルは嬉しそうに瞳を細めて微笑む。

(……普通、俺やクォンツが王太子殿下との仲が良い、と聞くと貴族令嬢は色めき立つんだけど……ルドラン嬢は本当にそう言った事には興味無いんだろうな)

 友人関係であるクォンツやリドル、マーベリック三人の事を微笑ましく、見守るようにして笑うアイーシャにリドルも肩の力が抜ける。
 幼い頃からの友人だ、と。マーベリックとも幼少期からの付き合いだ、と知られればアイーシャの態度が変わってしまうかもと言う不安は多少あった。
 けれども、アイーシャはちっとも貴族令嬢としての打算や計算などしている様には見えず、友人関係である三人が早く会えると良いですね、とほわほわとした笑顔で告げてくれる。

(貴族令嬢としては……もうちょっと計算高くても良いと思うんだけど……。あぁ、だからかな)

 リドルは、アイーシャのその態度に「だからか」と納得する。

(だから、クォンツやマーベリックは自然体で自分を見てくれるルドラン嬢と居るのが落ち着くんだ)

 何の思惑も無い、打算的な、計算的な気配も無いアイーシャと共に居るのが心地良いのだろう、とリドルは納得する。

(あー、これ、俺に婚約者が居なければ良かったのになぁ)

 リドルは自然とそんな事を考えてしまった自分自身に苦笑した。
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